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INVISIBLE WORLD〜感情の海と波乗りサーファー〜

二人が落ちた先は海岸だった。目の前には広大な海が広がっていた。

ピスフールはあたりを見回してつぶやいた。

とても荒れている海ね。

空はどんより雲がかかり波は飛沫をあげて岩に打ち付けている。

そこに1人の男が現れた。男は黒くまんまるな目をして、白い歯を覗かせて二人に笑いかけ静かに言った。



君たちが来たから、海が荒れ始めたようだ。

この海は訪れた人の感情を反映する。

何か心が乱れているようだね。



男の声は落ち着いていたが、目を輝かせて好奇心いっぱいといった様子でこちらを見ていた。

男の名は、エモと言った。

エモはこの感情の海でサーファーをしていた。
そしてこの海の波は人の感情からくる衝動を反映していて、心が乱れている人が訪れると波は激しく大きくなり、訪れた人の感情が安定していると穏やかな波になると言った。

アブソリュートが言った。

つまりここは感情の海で、あんたが感情の波乗りサーファーってことだな。
俺たちは愛のカケラを探している。人を愛するためには心を安定させる必要があると聞いた。そしてここでそれが学べるとも聞いた。
お願いだ!友達を助けなければならない!感情を安定させるにはどうすればいいんだ?

エモをそれを聞いてニカッと笑って、話をした。


いいだろう!感情を安定させる方法を教えてやるよ。

エモは岩の上に立ちあぐらをかいて二人を見下ろして話した。


感情というものは誰にでもあるもんだ。それは心地のいい感情と不快の感情に分けることができる。人は心地のいい感情は好きだ。
でも不快な感情からは逃げようとする。

不快な感情は、怒りや悲しみ、苦しみ、不安、羞恥心、たくさんあるな。
そしてその不快な感情が起こったとき、人には衝動が起こる。


怒りを感じた時、私たちは叫んだり何かを破壊したり、自分を正当化したい衝動に駆られる。
悲しい時は泣いたり、体を丸めて縮こまったり、誰かに抱きしめられたい衝動が起こる。恐怖に襲われた時は、逃げ隠れしたり、ウロウロしたり早口で喋りたくなる衝動が沸き起こるかもしれよな。

感情に刺激されて行動が起こる。この刺激のことを衝動という。

この海では訪れた人の衝動が波として現れる。

だから厳密には僕は感情の波乗りサーファーじゃなくて、衝動の波乗りサーファーなんだよ。

君たちがきて海が荒れたのは、君たちの感情が乱れ衝動が起こっているからだ。


ピスフールが言った。

あら、でもさっきより海が穏やかじゃない?


波はゆったりと行ったり来たりしていた。


エモは言った。

そうだね。衝動は僕らの中を行ったり来たりするものだ。拒むことはできない。
それは波のようにね。


波は満ちれば引いていく。衝動も同じなんだよ。

特に怒りの衝動は時間が経てば落ち着きやすく、悲しみや不安も誰かに話せば軽減される。

君たちの衝動は時間がたち話をしたことで少し落ち着いてきたんじゃないのかな。

感情を観察するんだ。そして感情からおこる衝動がどんなふうに変化しているか知ることが大切だ。

ピスフールは胸に手を当て言った。

確かに少し落ち着いたかもしれないわ。

エモは続けた。

サーファーがどんな波でも乗りこなせるのは、観察し落ち着いていて対応できるからだよ。混乱して観察せず抵抗すれば溺れてしまう。

それは大きな波であればあるほど自分を溺れさせ破滅させてしまうかもかもしれない。

その時のエモは、悲しそうに一点を見つめていた。

そして続けた。

僕らは波に抵抗することはできない。波に乗る唯一の方法はそれを観察し居場所を作ってあげることだ。

そしてもう一つ覚えておいて欲しいことがある。

それは天気と海の状態は必ずしもリンクしないということだ。


海は衝動を反映し、天気は感情を反映している。

感情は天気のようなものだ。

常に存在し常に変わり続ける。

止まることなく満ち欠けを繰り返し穏やかと思えば激しく、心地よいかと思えば不快に、予期できるかと思えば予想しない行動をする。

感情が乱れても、衝動を抑える力があれば波はある程度は穏やかにさせることができる。
まぁ、それは僕レベルにならないといけないけどね!

エマはニカっと笑った。

そして黙りこみ、悲しそうな表情になって話を続けた。

そして晴れ晴れとした感情はいいもののようだけど、それは心の干魃をうむ。
雨が降らなければ、いつか広大な海自体が消えてしまうんだ。

それが一番怖い。心を満たすにはいつも晴々とした気持ちではいれないということだね。

ピスフールとアブソリュートは、まだよくわからないといった様子だったが、一生懸命エモのいっていることを理解しようとした。

シコウはその2人の様子を見て、羽をばたつかせ首を傾げた。

エモは白い歯を見せてニカッと笑った。

さあ、挑戦してみるかい?

するとさっきまで穏やかだった海の波は、荒れ始めた。

二人は後ろに一歩下がった。


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