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『詩は罫線を待たない』
*注意!ページへは、気まぐれに加筆します。
天候や心象、昼食や性欲によって、内容は変わります。
作品には至らない、実験的なものや未完成なもの、雑感も書きます。メモ帳のようなものです。
説明文ここまで。
「キミの日常を壊してあげる」
口づけのモーション
目を閉じる
首筋に疼痛
目を開けると
彼女が噛み付いている
胸に温かい何かが伝ってくる
暗闇にドット欠けのように青空が見える
ボクは射精した
2分小説『泣きながらフライパンを振り回す女』
奇妙な卵だ。
鶏の卵より二回り程大きい。色は不自然な白。綿毛のような光を放っている。
私は泣いている。玉ねぎをみじん切りにしている。私は泣いている。玉ねぎに包丁を入れるよりずいぶん前から泣いている。
フライパンに油をぐるり、火を点ける。熱気が涙を温めるが、そんな小さな上昇気流では落下を阻止する事は出来ない。
フライパンでじゅうと鳴る、余りにも脆い調味料だ。
玉ねぎを入れる。冷蔵庫の
2分30秒小説『主題歌』
「おいお前!ルフランを見なかったか?」
「ルフラン?何の?」
「魂のに決まってるだろ!こっちに来なかったか?」
「ああ、魂のルフランならその角を曲がって行ったよ」
礼も言わずに男が駆け出す。角を曲がり消える。暫くして。
「もういいぞ」
ビルの隙間に話しかける。女が出て来た。辺りを伺い。
「有難う。助けてくれて」
「礼には及ばないその代わり、な、分かるだろ?」
男の口元が歪む。
「俺の魂を震わ
20秒小説『喰う女』
小さなフォーク、最後のひとかけらに刺さる。男は見守っている、スポンジとクリームの小さな三角形が彼女のルージュを掠め消え咀嚼微笑。フォークが皿の縁に置かれ、時が動き出す。
「ケーキ、どうだった?」
「とっても美味しかったわ」
「そのぉ、何か変わったところはなかった?」
「変わったところ?」
「えーとつまり、何か入ってなかった?」
「クリーム?苺のスライス?」
「違う。白状するよ。僕は今日、君にプ
20秒小説『アプリを終了せよ、街に出よう』
「一生のうち1/3は眠っている」
「まぁ、そうだね」
「起きている時間のうち1/3は移動と食事だ」
「それも、あながち間違ってはいない」
「起きている時間のうち、残りの2/3は検索とザッピングだ」
「……」
「違うか?」
「残念ながら、そうかもしれない」
「つまりこうだ。我々の人生には、誰かを愛する時間なんて存在し得無い」
「……」
「反論は?」
「反論はない。でも間違っている」
「何が?」
「何
2分30秒小説『ポニーテールに恋したインコ』
私は棚の上から見ている。
インコが彼女の肩に止まり、ポニーテールに求愛しているのを。
彼女はそれを楽しんでいる。彼氏も笑っている。私は一抹の怒りを覚える。インコの気持ちを軽視している二人に対して。
インコは真剣だ。必死に歌っている。恋の歌を歌っている。自分の想いを歌っている。でもその歌にはごくごく僅かな歪がある。それはインコの持つ負の感情からくる歪で、焦燥であったり、絶望であったり、いや
1分30秒小説『故障』
課長がデスクににじり寄って来て、頭を指で差し一言。
「高木君、どう?AIの調子は?」
戸惑いつつ、こう返す。
「冗談は止めてくださいよ課長、僕はAIじゃないです」
課長は満足げに頷き。
「正常に機能しているね。頑張ってくれよ」
振り返り野田のデスクに向かっていく。
「野田君、AIの調子、どう?」
野田は苦笑いして。
「AI?ああ、えっと頭の調子ってことですか?特に問題ないと思いますが」
詩『今すぐダウンロードして人生にログインしよう』
カウントダウンアプリでスマホに表示している
60歳までの日数をね
今見たらあと4100日だってさ
4100回眠って起床して
だいたい12300回くらい食事をする
もし60で死ぬなら
あと4100日か
ふーん
叶えたい夢
実現させるための原資
残4100point也
ま頑張るか
2分40秒小説『しょうゆ、めんとこ、おとめ、がっし、っぽ、うご、びーに、めーちゃー』
出張、ホテルでチェックインを済ませて街へ――さて何を食おうか。当てもなく歩き一巡「さっきの雰囲気のある中華料理店にするか」と回れ右をする視界にラーメン屋の暖簾。路地をちょっと入った先、夕景の薄闇が小溜まりになっているところに「ラーメン」という赤い文字だけぼうっと浮かんでいる。考える前に足が向かっている。
「らっしゃーませぇー、何名様でしょうか?」
「一人」
「ではこちらのカウンター席へどうぞ」
1分30秒小説『組織におけるリソース管理の重要性~蕎麦湯という共同資産に学ぶ』
新人を連れて社屋の斜向かいの蕎麦屋へ。ザル蕎麦を二つ頼む。
「今日は俺のおごりだ」
食後、急須のような容器を店員さんがテーブルの中央にとんと一つ。
「先輩、これ何すか?」
「蕎麦湯だよ。知らないのか?」
「香川にはないっす」
「いや、ないってことはないと思うけど……要は蕎麦のゆで汁なんだが、栄養素がたっぷり含まれてて体にいいんだ。結構いけるぞ」
「へー」
「実は俺はこれが好きでね。これ目当て
詩『唇と金魚の座標』
誰かを好きになるなんて
ごく当たり前の感情だ
そう思っていた
君を好きになるまでは
たまに不安になる
僕は本当に君のことが"好き"なんだろうか?
これはもっと別のなにか
深刻で致命的な感情なのでは?
君の唇がその答えをしっている はず
玄関で飼っている金魚に相談したんだ
そしたら口をパクパクしてこう言った
『彼女の唇に聞いてごらん』って
信じてない?
僕は読唇術が使えるし
そもそも魚はウソを