或虎

某ペットショップのバイヤー。趣味で詩とショートショート書いてます。休みの日はウクレレと…

或虎

某ペットショップのバイヤー。趣味で詩とショートショート書いてます。休みの日はウクレレと筋トレ。好きな作家は、梶井基次郎、フィリップ・K・ディック。好きなミュージシャンは、エイフェックス・ツイン、岡村靖幸。好きなモビルアーマーはビグロ。

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  • 『ペル・パラベラム・アド・アストラ』

    長編どころか中編すらまともに完成させたことがないので、恐々書いてます。

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『詩は罫線を待たない』

*注意!ページへは、気まぐれに加筆します。  天候や心象、昼食や性欲によって、内容は変わります。  作品には至らない、実験的なものや未完成なもの、雑感も書きます。…

或虎
9か月前
93

2分小説『泣きながらフライパンを振り回す女』

 奇妙な卵だ。  鶏の卵より二回り程大きい。色は不自然な白。綿毛のような光を放っている。  私は泣いている。玉ねぎをみじん切りにしている。私は泣いている。玉ねぎ…

或虎
4日前
20

2分30秒小説『主題歌』

「おいお前!ルフランを見なかったか?」 「ルフラン?何の?」 「魂のに決まってるだろ!こっちに来なかったか?」 「ああ、魂のルフランならその角を曲がって行ったよ」 …

或虎
9日前
15

20秒小説『喰う女』

 小さなフォーク、最後のひとかけらに刺さる。男は見守っている、スポンジとクリームの小さな三角形が彼女のルージュを掠め消え咀嚼微笑。フォークが皿の縁に置かれ、時が…

或虎
9日前
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20秒小説『アプリを終了せよ、街に出よう』

「一生のうち1/3は眠っている」 「まぁ、そうだね」 「起きている時間のうち1/3は移動と食事だ」 「それも、あながち間違ってはいない」 「起きている時間のうち、残りの2…

或虎
2週間前
20

2分30秒小説『ポニーテールに恋したインコ』

 私は棚の上から見ている。  インコが彼女の肩に止まり、ポニーテールに求愛しているのを。  彼女はそれを楽しんでいる。彼氏も笑っている。私は一抹の怒りを覚える。イ…

或虎
2週間前
17

1分30秒小説『故障』

 課長がデスクににじり寄って来て、頭を指で差し一言。 「高木君、どう?AIの調子は?」  戸惑いつつ、こう返す。 「冗談は止めてくださいよ課長、僕はAIじゃないです」 …

或虎
2週間前
13

詩『今すぐダウンロードして人生にログインしよう』

カウントダウンアプリでスマホに表示している 60歳までの日数をね 今見たらあと4100日だってさ 4100回眠って起床して だいたい12300回くらい食事をする もし60で死ぬなら …

或虎
2週間前
20

2分40秒小説『しょうゆ、めんとこ、おとめ、がっし、っぽ、うご、びーに、めーちゃー』

 出張、ホテルでチェックインを済ませて街へ――さて何を食おうか。当てもなく歩き一巡「さっきの雰囲気のある中華料理店にするか」と回れ右をする視界にラーメン屋の暖簾…

或虎
1か月前
29

桜の詩いくつか

忘れられないことも 忘れてしまうことも苦しい花びら 生きるこつ死ぬこつ 桜に問いし春 青葉をば見届けむとす殿(しんがり)桜 次の春をば思い散り笑む 爆発のように空を…

或虎
1か月前
24

3分40秒小説『柏木さんそれは中古です』

 待ちに待った新作、推しのグラビアDVD、グループを卒業して初めてリリースしたイメージビデオだ。アパートの階段を駆け上がり、紙袋から取り出しパッケージを眺める。…

或虎
1か月前
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1分30秒小説『組織におけるリソース管理の重要性~蕎麦湯という共同資産に学ぶ』

 新人を連れて社屋の斜向かいの蕎麦屋へ。ザル蕎麦を二つ頼む。 「今日は俺のおごりだ」  食後、急須のような容器を店員さんがテーブルの中央にとんと一つ。 「先輩、こ…

或虎
1か月前
15

詩『唇と金魚の座標』

誰かを好きになるなんて ごく当たり前の感情だ そう思っていた 君を好きになるまでは たまに不安になる 僕は本当に君のことが"好き"なんだろうか? これはもっと別のなに…

或虎
1か月前
19

詩『桜和音』

空に耳伸ばしめ 桜の咲音を探る 微かな調べ既にしてもう 散音と和している 思い出も鳴る えくぼが窪む音 肌が紅潮する音 瞳が濡れる音 鼻啜れ口端上げろ 横断歩道の鍵盤…

或虎
1か月前
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2分50秒小説『母乳カフェ☆ミ』

 繁華街を歩いている。息切れがして立ち止まる。前屈み両膝に掌を当て、肩を上下させながら首を曲げると寂れた横丁がある。いや寂れているとかそんなレベルではない。いわ…

或虎
1か月前
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『誰も持っていないキーホルダーの作り方』

 まず油揚げを買ってきます。がんもどきでもいいです  机の上に置きます。椅子の上でも構いません。  後は認識するだけです。 「これはキーホルダーなんだ」と    …

或虎
1か月前
15
『詩は罫線を待たない』

『詩は罫線を待たない』

*注意!ページへは、気まぐれに加筆します。
 天候や心象、昼食や性欲によって、内容は変わります。
 作品には至らない、実験的なものや未完成なもの、雑感も書きます。メモ帳のようなものです。
 説明文ここまで。

「キミの日常を壊してあげる」
口づけのモーション
目を閉じる
首筋に疼痛
目を開けると
彼女が噛み付いている
胸に温かい何かが伝ってくる
暗闇にドット欠けのように青空が見える
ボクは射精した

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2分小説『泣きながらフライパンを振り回す女』

 奇妙な卵だ。
 鶏の卵より二回り程大きい。色は不自然な白。綿毛のような光を放っている。

 私は泣いている。玉ねぎをみじん切りにしている。私は泣いている。玉ねぎに包丁を入れるよりずいぶん前から泣いている。

 フライパンに油をぐるり、火を点ける。熱気が涙を温めるが、そんな小さな上昇気流では落下を阻止する事は出来ない。
 フライパンでじゅうと鳴る、余りにも脆い調味料だ。
 玉ねぎを入れる。冷蔵庫の

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2分30秒小説『主題歌』

「おいお前!ルフランを見なかったか?」
「ルフラン?何の?」
「魂のに決まってるだろ!こっちに来なかったか?」
「ああ、魂のルフランならその角を曲がって行ったよ」
 礼も言わずに男が駆け出す。角を曲がり消える。暫くして。
「もういいぞ」
 ビルの隙間に話しかける。女が出て来た。辺りを伺い。
「有難う。助けてくれて」
「礼には及ばないその代わり、な、分かるだろ?」
 男の口元が歪む。
「俺の魂を震わ

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20秒小説『喰う女』

 小さなフォーク、最後のひとかけらに刺さる。男は見守っている、スポンジとクリームの小さな三角形が彼女のルージュを掠め消え咀嚼微笑。フォークが皿の縁に置かれ、時が動き出す。

「ケーキ、どうだった?」
「とっても美味しかったわ」
「そのぉ、何か変わったところはなかった?」
「変わったところ?」
「えーとつまり、何か入ってなかった?」
「クリーム?苺のスライス?」
「違う。白状するよ。僕は今日、君にプ

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20秒小説『アプリを終了せよ、街に出よう』

「一生のうち1/3は眠っている」
「まぁ、そうだね」
「起きている時間のうち1/3は移動と食事だ」
「それも、あながち間違ってはいない」
「起きている時間のうち、残りの2/3は検索とザッピングだ」
「……」
「違うか?」
「残念ながら、そうかもしれない」
「つまりこうだ。我々の人生には、誰かを愛する時間なんて存在し得無い」
「……」
「反論は?」
「反論はない。でも間違っている」
「何が?」
「何

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2分30秒小説『ポニーテールに恋したインコ』

2分30秒小説『ポニーテールに恋したインコ』

 私は棚の上から見ている。
 インコが彼女の肩に止まり、ポニーテールに求愛しているのを。
 彼女はそれを楽しんでいる。彼氏も笑っている。私は一抹の怒りを覚える。インコの気持ちを軽視している二人に対して。

 インコは真剣だ。必死に歌っている。恋の歌を歌っている。自分の想いを歌っている。でもその歌にはごくごく僅かな歪がある。それはインコの持つ負の感情からくる歪で、焦燥であったり、絶望であったり、いや

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1分30秒小説『故障』

1分30秒小説『故障』

 課長がデスクににじり寄って来て、頭を指で差し一言。
「高木君、どう?AIの調子は?」
 戸惑いつつ、こう返す。
「冗談は止めてくださいよ課長、僕はAIじゃないです」
 課長は満足げに頷き。
「正常に機能しているね。頑張ってくれよ」
 振り返り野田のデスクに向かっていく。
「野田君、AIの調子、どう?」
 野田は苦笑いして。
「AI?ああ、えっと頭の調子ってことですか?特に問題ないと思いますが」

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詩『今すぐダウンロードして人生にログインしよう』

詩『今すぐダウンロードして人生にログインしよう』

カウントダウンアプリでスマホに表示している
60歳までの日数をね
今見たらあと4100日だってさ
4100回眠って起床して
だいたい12300回くらい食事をする
もし60で死ぬなら
あと4100日か
ふーん
叶えたい夢
実現させるための原資
残4100point也
ま頑張るか

2分40秒小説『しょうゆ、めんとこ、おとめ、がっし、っぽ、うご、びーに、めーちゃー』

2分40秒小説『しょうゆ、めんとこ、おとめ、がっし、っぽ、うご、びーに、めーちゃー』

 出張、ホテルでチェックインを済ませて街へ――さて何を食おうか。当てもなく歩き一巡「さっきの雰囲気のある中華料理店にするか」と回れ右をする視界にラーメン屋の暖簾。路地をちょっと入った先、夕景の薄闇が小溜まりになっているところに「ラーメン」という赤い文字だけぼうっと浮かんでいる。考える前に足が向かっている。

「らっしゃーませぇー、何名様でしょうか?」
「一人」
「ではこちらのカウンター席へどうぞ」

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桜の詩いくつか

忘れられないことも
忘れてしまうことも苦しい花びら

生きるこつ死ぬこつ
桜に問いし春

青葉をば見届けむとす殿(しんがり)桜
次の春をば思い散り笑む

爆発のように空を脅かしておった花びら
既にして青葉に収束し寂々
されども我が頭蓋まさに
今が盛りぞ残響桜
脳髄の闇を淡く染め抜き
閏う景色に人を浮かべて

『全力桜』
後悔を知らず散りゆく桜の貴さ
五十にして花びらの重さを知る

年々遅くなる

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3分40秒小説『柏木さんそれは中古です』

3分40秒小説『柏木さんそれは中古です』

 待ちに待った新作、推しのグラビアDVD、グループを卒業して初めてリリースしたイメージビデオだ。アパートの階段を駆け上がり、紙袋から取り出しパッケージを眺める。白いワンピースを着て浜辺で燥いでる笑顔――可愛い!嗚呼、早く見たい!逸る気持ちを押さえ丁寧にビニールを破る。ケースを開ける。
 DVDが2枚、1枚は特典映像、これは後で見よう。まずはメインの方を――ん?固い。取り出せない。くそっ!悪戦苦闘す

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1分30秒小説『組織におけるリソース管理の重要性~蕎麦湯という共同資産に学ぶ』

1分30秒小説『組織におけるリソース管理の重要性~蕎麦湯という共同資産に学ぶ』

 新人を連れて社屋の斜向かいの蕎麦屋へ。ザル蕎麦を二つ頼む。
「今日は俺のおごりだ」

 食後、急須のような容器を店員さんがテーブルの中央にとんと一つ。
「先輩、これ何すか?」
「蕎麦湯だよ。知らないのか?」
「香川にはないっす」
「いや、ないってことはないと思うけど……要は蕎麦のゆで汁なんだが、栄養素がたっぷり含まれてて体にいいんだ。結構いけるぞ」
「へー」
「実は俺はこれが好きでね。これ目当て

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詩『唇と金魚の座標』

誰かを好きになるなんて
ごく当たり前の感情だ
そう思っていた
君を好きになるまでは

たまに不安になる
僕は本当に君のことが"好き"なんだろうか?
これはもっと別のなにか
深刻で致命的な感情なのでは?

君の唇がその答えをしっている はず

玄関で飼っている金魚に相談したんだ
そしたら口をパクパクしてこう言った
『彼女の唇に聞いてごらん』って
信じてない?
僕は読唇術が使えるし
そもそも魚はウソを

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詩『桜和音』

空に耳伸ばしめ
桜の咲音を探る
微かな調べ既にしてもう
散音と和している
思い出も鳴る

えくぼが窪む音
肌が紅潮する音
瞳が濡れる音

鼻啜れ口端上げろ
横断歩道の鍵盤を踏め
渡りきりゃ次の空だ

かつて和音だった鼓動
重なり求めつスニーカー打って

2分50秒小説『母乳カフェ☆ミ』

2分50秒小説『母乳カフェ☆ミ』

 繁華街を歩いている。息切れがして立ち止まる。前屈み両膝に掌を当て、肩を上下させながら首を曲げると寂れた横丁がある。いや寂れているとかそんなレベルではない。いわゆる横町としては明らかに機能していない。かつて飲食店が軒を連ねていたが今はただの通路、といったところか。如何にも猫が好みそうな空間だ。建物の裏側と裏側が向かい合わせになっているだけ。ふと目に飛び込んだ文字。

 母乳カフェ☆ミ

 見間違え

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『誰も持っていないキーホルダーの作り方』

 まず油揚げを買ってきます。がんもどきでもいいです
 机の上に置きます。椅子の上でも構いません。
 後は認識するだけです。

「これはキーホルダーなんだ」と

 
 自由の女神?エッフェル塔?ちっぽけな作り物なんて要りません。実物そのものをキーホルダーにしましょう。なんならヨーロッパやアメリカ大陸をキーホルダーにする事だって可能です。
 この制作方法の素晴らしいところは、質量を持たない物もキーホル

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