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こころを、いろどる。 (ありきたりなうたをそえて)

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ひとはただ リズムを刻むそのために くちずさむのだ つまらぬうたを
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記事一覧

【詩】ふらりん

【詩】ふらりん

これはあなたのものじゃないわ
わたしのものでもないけれど。
これはわたしのものじゃないわ
あなたのものでもないけれど。

ふたりいつもそうやって
宙ぶらりんにしているの
何から何まで嫌なことは
みんな宙ぶらりんにしているの

だいじなことは何もかも
ふらりふらふらふらふらりんと
宙に浮かんでゆれてるの
困ったように地面を見つめ
何も言わずにゆれてるの

【詩】オヤスミ、オヤスミ。

【詩】オヤスミ、オヤスミ。

オヤスミ オヤスミ

僕のことなんか
何よりも先に
忘れてしまえよ

オヤスミ オヤスミ

君はひとり
夢の中で
僕を置き去りにするんだろう?

オヤスミ オヤスミ

今日のことなんて
何よりも早く
忘れてしまえよ

オヤスミ オヤスミ

君のことだって
何よりも先に
忘れてやるから

オヤスミ オヤスミ

オヤスミ オヤスミ

オヤスミ オヤスミ

よい夢を。 

【詩】そこには なにも

【詩】そこには なにも

はじめから そこには何もなかった

昼下がりの日差しを浴びてたたずむ椅子も

畑の土で汚れたサンダルも

新聞の文字を拡大し続けたルーペも

そして それらの主である孤独な老王も

はじめから そこには何もなかった

湿り気を帯びた布団のほかには

何も

【詩】なみ、だ

【詩】なみ、だ

僕の目を曇らせていたのは
間違いなく あの日々だったワケで
僕は今 やっと自由なワケで
もう あんな想いなんか
海にでも捨ててしまえ

なのに 海に来てみたら
寄せては返す塩辛い水ばかりが
青く光っていて

こんなの 涙と同じじゃないか
地球の七割を覆い尽くす涙
それは 僕も覆い尽くして

ぶり返した なみだ
ぶり返した 波だ

なんだよ

やっと

捨てられるって思ってたのに

【詩】伝えるべきだった

【詩】伝えるべきだった

私たちは伝えるべきだった

親兄弟に
友達に
テレビの中のあの人たちに

袖は擦り逢ったものの縁はない人たちに
礼儀ばかりを気にしていた親しい人たちに

私たちは伝えるべきだった

理屈を抜きにした愛を
打算だらけの関心を
まったく見当違いの怒りを

あなたが私を見ているように
私もあなたを見ているのだと

私があなたを見たくなくても
あなたが私を見たくなくても
世界はそうさせてなんかくれないのだ

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【詩】夏に灼かれろ

【詩】夏に灼かれろ

唐突で強烈な日差しに誰も彼もが灼かれている
アスファルトの陽炎が見せる水着や花火やビール
そんな幻に夢中になって額の汗を拭うのも忘れて手を伸ばせる
そう君みたいな奴にだけ夏はやって来る
火傷するとわかっていても手を伸ばして
その痕を勲章みたいに思える奴にだけ

いつからか火傷が怖くて手を伸ばせなくなった僕は
いつだって遠いところから夏を眺めて終わる
熱く湿った空気のせいで詰まった呼吸が溜息になる

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【詩】記憶は壁

【詩】記憶は壁

記憶は壁だ
僕の頭の中に蓄えられている言葉や音や匂いや景色は
僕と世界とを隔てる壁だ

あなたの実は4ヶ月半ぶり3回目の話を聞いてるフリをして
僕は今日の空の色を見てそっと心を痛めている
理由は3年前に初めての彼女にフラれた日と同じ色だから
あのときあの子が言ったことも全部覚えている
ラジオから流れていたアイドルソングのやたら陽気なBメロも

あなたにその話が3回目だということを教えたとして
そん

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【詩】ペトリコール

【詩】ペトリコール

「雨には匂いがある」
そう教えてくれたのは君だった
その匂いには素敵な名前がついていて
それを聞いたとたんに僕も雨の匂いがわかるようになったんだ

けれどいつの間にか僕は雨の匂いがわからなくなった
あの素敵な名前も忘れてしまった
覚えているのは雨の匂いを認識できたときの感動だけで
正直なところ実は今となっては君の顔や声も忘れかけてる

あれほど忘れないと忘れたくないと思っていたのに
本当に大事な思

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【詩】だからお願いそこにいて

【詩】だからお願いそこにいて

寄り添うっていうのはね
寄って添うだけであって
そこから先は超えられないし
超えてはいけないものなんだ

誰かの喜びや悲しみや怒りに
寄り添えるのは素敵なことだけど
そこから先は超えられないし
超えてはいけないものなんだよ

だからお願いそこにいて
それ以上は近づかないで
この喜びも悲しみも怒りも
お前のものなんかじゃない

この喜びや悲しみや怒りは
全部私のものだから
今この瞬間にきらめいて燃え

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【今日の短歌まとめ】価値があり意味もある日を過ごしたい 心ふるわすうたになるよな

【今日の短歌まとめ】価値があり意味もある日を過ごしたい 心ふるわすうたになるよな

はいどうもー。
ツイッターで軽はずみに『創作クラスタで繋がりたい』系のタグをつけたら本当にフォローしてくれる人がいて、逆に怖くなっちゃって何もツイートできずにいるあまたすでございます。

さて、4月27日に #今日の短歌  という公式様プレゼンツのお題が始まりました。
私事ではありますが、そのあたりでちょうどライフスタイルに若干の変化がありまして。
折しも世間はゴールデンなんちゃらに突入するタイミン

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【詩】around you

【詩】around you

ナツメグの香り
飛び散る光
あなたが笑って
時がうつろう

泡だらけのバスタブ
渦を巻く温度
あなたが淹れた
コーヒーが冷める

アラウンド・ザ・ワールド
流れ出す緑
あなたを想って
時は止まる

色も匂いも実に鮮やか
あなたの周りにあったものは
全てが実に鮮やかよ

その中心で笑っていたはずのあなただけが
どうしても思い出せないけど。

【詩】失敗したくないんです

【詩】失敗したくないんです

失敗なんかいらないんです
失敗したくないんです

あの子みたいな成功を
最短で

だって失敗したくないじゃないですか
だって失敗とか無駄じゃないですか

なんにだって限りがあって
いつかはなんだって終わっちゃうのに

だからとにかく無駄は省いて
スマートで
クレバーで
エフォートレスな
成功を
最短で

成功したらちゃんと考えますから
成功した後のこととか
成功した私が終わったときのこととか

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【詩】雨が見えるかい

【詩】雨が見えるかい

近頃はよく雨が降る
赤かったり青かったり

それはもう いろいろなものが混ざっていたり

近頃はよく雨が降る
多かったり少なかったり

それはもう 二度と止むことがなかったり

そうやって雨ばかり降るから
世界は薄くなっているのかも

今じゃだいぶ薄くなった
携帯電話もそうだけど

繋がっているべきものだとか
揺らいではいけないものだとか

そうやって雨ばかり降るから
世界は小さくなっていくのかも

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【詩】わたしのせかいは

【詩】わたしのせかいは

わたしの中のどんなことも
ひるがえされたくはないけれど

わたしの外のあらゆることは
ひるがえしたくてしかたがないの

わたしの世界は、
いつもベタ凪でクリーンでチルい場所
それを誰だってどんなことだって
乱してはいけないのよ

ああ、すてきな世界!

(ねえ他の人は?)

ああ、すてきなわたし!

(他の人の世界のことは考えたことある?)

すてきなわたしのすてきな世界に合わないものは、
なんだ

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