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出口のない恋愛中の女友達への推薦図書

高校で出会って(15歳だった!…)早23年。"あの"90年後半を一緒に過ごして、ミレニアム(うわ…)を迎え。一緒に上京して、違う大学に通い就職してからも絶えず連絡を取って遊んで。どの思い出のシーンにも彼女がいて。気に入らないことが一緒で好きより嫌いが多くて、人に厳しくてそのくせ一旦心を開くといいようにしか物事を捉えなくて、そんな矛盾が起こす疲弊を世界で一人でもシェア出来る人がいると安心できて。誰にも言えないことを言えて、お互いが男にされたなんやかんやを笑いに変えて、その度に惨めさを肯定して欲しいあの歌(哀しいやつね)を輪唱しあい、「忙しいと連絡取るのも億劫になるよね」「仕事頑張ってるとこは尊敬してる」「あんまり急かしても…こういのってタイミングだし」「付き合い方はひとそれぞれだからねー」*{繰り返し

いつの間にか2人とも30代を迎え、余裕もなくなって、喉も掠れてもうそんな歌も歌いたくなくなって。どうして数ヶ月に一回、数時間しか会わない人が大事なのか、気まぐれな言葉を数年間も温めるのか、何度約束を破られてもチャンスを惜しみなく与えるのか。世界に対してあれほどシビアなのにどうしてそこは甘いのか。ピンチの時に思い浮かべるのはろくに連絡もよこさない男の助けでその瞬間を心待ちにしている彼女が憎らしくて。いつかの二人旅の帰りの電車で大喧嘩をして、もう十分だし別れたほうがいいとか現実問題もう終わってるんだしとか言ってしまった私へ、弱気な抗議をしてきた彼女の半笑いで泣きそうな顔が嫌で、もう二度と言うまいと今の今まで核心に触れることは避けてきたのだけれど。

そんな彼女が遂に状況を認め(恐らくもう付き合っていない)、万に一つの可能性に賭けてきちんと話してみるという。恋愛巧者にとってはビットするに値もしないゲームでも、だけれど彼女にとっては世界と引き換えにしても勝ちたい一世一代の賭けなのだ。

突如決めたその理由は、令和になったからというシンプルなもの。新しい年を使い古した悩みで過ごしたくない言う。そう、自分を奮い立たせるにはその手の区切りが大事だったりする。

長くなりましたが…とにかく彼女を愛し大事にしている友達から、そして同じことで躓いた同志から贈りたい推薦図書です。

1.蜉蝣日記

呆れるほど人はこの手のことでは進化せず同じことを繰り返しているんだ何千年も前から。その大きな括りにいるんだと思うと不思議な安心感を与えてくれる古典。道綱母のプライドの高さや夫とのすれ違い、夫の他の女へのマウンティングなど普遍性だらけ。出家した後は映像を切り替えたような、色のトーンが変わったようなカラっとした諦観が漂う。


2.紅匂ふ

伝説の芸妓、岩崎峯子の自伝を大和和紀先生が漫画化。舞妓でありながら男女の機微に疎く生真面目な主人公が妻子ある俳優と出会い(勝新太郎がモデル)恋に落ちる。好きな人と結ばれたいと先輩芸妓が無言参りに通う様子を嘲笑っていたのに、今は自分がそうしていると嘆くその心の流れが自然でこうなるしかなかったんだと思ってしまう。


3.スナックさいばら 落ち武者編

今どハマり中なのが西原理恵子。恋愛だけじゃなく人生にも効く綺麗事じゃない名言がいっぱい。


女の一途は幸せのジャマ
第三者にはうんざりするほど見えている死亡フラグが、本人だけは見えてない
自分がにコンプレックスがあて、さびしんぼうな人が「こんな私を頼りにしてくれるなら」ってなったらもうアウト!
5回6回ハメてるのに好きになってもらえないんだったら、きびすを返して、その場から去りましょう。

それにしても誰に学ぶでもなくこの手のノウハウが全て備わった、恋愛灘開成東大コースの人ってやはり天に与えられし才能なのだろうか…と羨みつつ、前2作を読んで自己憐憫に浸った後のお口直しにもぴったり。

そして彼女に伝えたいのは、誰もあなたの自由を奪えない、決めることも諦めることも出来る。全て自分が決めていいのだということ。そして他の人の苦しみを知ったり、物語世界で他者が救われることが、現実的にそうはならなくても不思議と自分を癒す効用が本当にあるということも。

経験を経ないと沁みない本がある、こういう物思いを知らずに死ぬよりマシ、とも言える。いつかネタになる日が来るよ、それをツマミにまた飲もうよ。

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