あお

24 | 小さな港町で2人暮らし

あお

24 | 小さな港町で2人暮らし

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  • 『「じゃ」へ。』

    小さな港町での2人暮らし、その記録。

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「じゃ」へ。

まあ、端的にいうと喧嘩したんです。 冷戦です。主に僕が原因の。 彼女は小説家です。ググれば名前も作品もインタビュー記事もわんさかあるわけです。SNSには何万人もフ…

あお
1日前
10

不謹慎だろうか。僕はその瞬間が一番愛おしい。

「美談にするつもりは一切ないよ。でも”これ”があったから小説を書けたのも事実でさ。なんかいやんなっちゃうよ。まったくさ」 *** 青はいつもの1.5倍くらい。 銀…

あお
14時間前
9

構成も語彙も統一感もめちゃくちゃだけど

「そんなん読んでるとつまらないもんになるよ」 『初心者向け小説の書き方』 「でも俺書き方わからん」 「書けてるじゃん」そう言って印刷された僕の短編を持ち出した。 …

あお
1日前
18

ゴールデンウィークと同居人

「あお、指輪せえ、お出かけじゃ」 時計は6。カーテンの隙間から朝陽が漏れる。最近、日の出が早くなった。急に春が終わって急に夏が来るわけじゃないんだなあ、なんて当…

あお
5日前
10

主人公がアパートで音楽ガンガン鳴らしてクレームが来る

下品に笑っている彼女を見るのが好きだった。 その日もスマホを見ながらゲラゲラ笑っていた。 僕が何見てんのと聞くと、「うちの小説のレビュー」とXのコメント欄を嬉しそ…

あお
6日前
8

屋上とフィクション

今日も彼女は勉強中。 熱心に恋愛漫画を読み込んでおられます。 我が家の押入れは恋愛漫画、学園もの、青春ものでいっぱいです。もう図書館レベルです。彼女は自分が作家…

あお
6日前
10

じゃんけん

「見える。見えるでぇ。われはぐーを出す」 「じゃあ、乗ってやろうじゃないの。お望み通りぐーを出してやろう。どうだ、未来は変わったか」 「いーや、ぐーじゃ」 「ほお…

あお
7日前
4

さつき雨

5月。雨。風は強く、夜は2時。 「ねえ、あおい。起きてる??あおいー」 「...ん...ん?」 隣で寝ていた彼女が言った。 「私が死ぬって言ったらどうする?」 「自分でっ…

あお
9日前
7

金目鯛の唐揚げ

「それどうしたの」 「大家さんにもらった」 赤くて目がでかい魚。多分、金目鯛。 「それ結構お値段するんじゃないの」 「そうなの?このでかい金魚が?」 「それ金目鯛…

あお
9日前
10

キーボードの代わりに。

キーボードの音で目が覚めた。 寝たふりをしてからしばらくすると何故か音が止んだ。 気になったのでトイレに行くふりをした。 「今勉強しとるけぇ話しかけんさんな」 …

あお
10日前
9

これ、漫画で言う4コマを繋げて長編にするタイプなんですけど。
女の子の名前まだ決まってないんです。

「さつき」がいいかなって思ってるんですけど、なにか案欲しいです。(隠れファンのみなさん、出番ですよ!)

あお
10日前
5

24になりました。
子どもの頃描いた大人像とはえらく違いますがそんなもん万人共通だと思うのでまあいいでしょう。プロ野球選手にはなれなかったけど、自立してきちんと納税しているのでもう300点ですよ。
最後に、いつも小説読んでくれてありがとうございます。

あお
10日前
10

結婚ごっこ。

指輪を買ってみた。 2つ、隣町の雑貨屋で買った。 1個500円。銀色の輪っかを。 ことの発端は彼女。 「結婚ごっこしよう」 時々意味不明なことを言い出す。 でも面白そ…

あお
11日前
22

なんでもない夜。コンビニ。

「あお」 振り返ると彼女がいた。 「うちも行く」 「傘1本しかないよ」 「いいよ別に」 アパートの急な階段を落ちるように降り、通りに出る。 外は雨で、思ったより強…

あお
11日前
13

深夜、無人のタクシー乗り場、そのベンチ。

深夜、無人のタクシー乗り場、そのベンチ。 1時間に2本しか電車が出ないこのまちで。 坂の途中にある駅舎のタクシー乗り場で。 ペプシの青いベンチにだらりともたれ、空…

あお
12日前
15

どなたか僕とスタエフで雑談してくれませんか?人と話すのに飢えておりまして。テーマはあってもなくてもオッケー。日時も合わせます。暇人なので。

人助けだと思って、
コメント欄か、インスタでdm欲しいです。

あお
2週間前
4
「じゃ」へ。

「じゃ」へ。

まあ、端的にいうと喧嘩したんです。

冷戦です。主に僕が原因の。

彼女は小説家です。ググれば名前も作品もインタビュー記事もわんさかあるわけです。SNSには何万人もフォロワーいるし、その分だけワルグチもあって、ようは「ザ・成功者」で、「何者」であるんですよ。ついでに世間知らずで変なやつで、まさに「天才」。しかも顔、かわいいんすよ。

そんで、そういうのが同じ家にいる気持ち、わかります?

昼間はず

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不謹慎だろうか。僕はその瞬間が一番愛おしい。

不謹慎だろうか。僕はその瞬間が一番愛おしい。

「美談にするつもりは一切ないよ。でも”これ”があったから小説を書けたのも事実でさ。なんかいやんなっちゃうよ。まったくさ」

***

青はいつもの1.5倍くらい。

銀色のシートはいつもと同じ。
オレンジのカプセル錠剤はいつもの倍はあった。

……いつもより調子が悪いのかもしれないな、そう思った。

僕がゴミ出し担当なのには3つ理由があって、まず第一に彼女が分別を全くしないこと。そして自身のゴミ箱

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構成も語彙も統一感もめちゃくちゃだけど

構成も語彙も統一感もめちゃくちゃだけど

「そんなん読んでるとつまらないもんになるよ」

『初心者向け小説の書き方』

「でも俺書き方わからん」
「書けてるじゃん」そう言って印刷された僕の短編を持ち出した。

「これさ、悲しいほど下手くそだけど」
「言葉選べよ」
「構成も語彙も統一感もめちゃくちゃだけど」
「ねえ」
「時々意味不明だけど」
「おい」

「うちは好きだよ」

特にこのシーンとか。

あおはさ、構成も語彙もキャラ作りも悲しいほ

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ゴールデンウィークと同居人

ゴールデンウィークと同居人

「あお、指輪せえ、お出かけじゃ」

時計は6。カーテンの隙間から朝陽が漏れる。最近、日の出が早くなった。急に春が終わって急に夏が来るわけじゃないんだなあ、なんて当たり前のことをぼんやり考えていたら叩き起こされた。

「まだ6時じゃん、てかどこいくの」
「東京」
「は?」
「東京に旅館とった。いくで」
「は?」
「ゴールデンウィークでな、夫婦割ってのがあったから」
「夫婦じゃないだろ。そもそもカップ

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主人公がアパートで音楽ガンガン鳴らしてクレームが来る

主人公がアパートで音楽ガンガン鳴らしてクレームが来る

下品に笑っている彼女を見るのが好きだった。

その日もスマホを見ながらゲラゲラ笑っていた。
僕が何見てんのと聞くと、「うちの小説のレビュー」とXのコメント欄を嬉しそうに見せてきた。

「小説家ってそういうの見るの?」
「知らん。うち作家の友達おらん」
「傷つかないの?そういう、誹謗中傷?」
「うちにとっては娯楽じゃ」

コメント欄は実にバラエティに富んでいて、あふれんばかりの賞賛とあふれんばかりの

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屋上とフィクション

屋上とフィクション

今日も彼女は勉強中。

熱心に恋愛漫画を読み込んでおられます。
我が家の押入れは恋愛漫画、学園もの、青春ものでいっぱいです。もう図書館レベルです。彼女は自分が作家であるのをいいことにこれらは全て経費として計上しております。まあ悪いことではないのでしょうけれど。でも家計をひっ迫させるほど買い込んだり、毎週毎週馬鹿でかいダンボールが届くのはちょっと勘弁して欲しいです。え?いやいや、僕は覗き見なんてして

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じゃんけん

じゃんけん

「見える。見えるでぇ。われはぐーを出す」
「じゃあ、乗ってやろうじゃないの。お望み通りぐーを出してやろう。どうだ、未来は変わったか」
「いーや、ぐーじゃ」
「ほお?」

いつもの謎のポーズで予言をする20代女と心理戦を持ちかける20代男。
心はまだまだ小学生。

儀式が終わり始まる決闘。

「じゃんけん・・・ぽん!」

チッと舌打ちして財布から小銭を出した。
「男なら女に奢るものじゃろ」「というか

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さつき雨

さつき雨

5月。雨。風は強く、夜は2時。

「ねえ、あおい。起きてる??あおいー」
「...ん...ん?」

隣で寝ていた彼女が言った。

「私が死ぬって言ったらどうする?」
「自分でってこと?」
「そう」
「死にたいの?」
「もしも、だよ」

「……第一発見者にはなりたくないかな」

一瞬の沈黙の後、「ふふっ」と彼女は笑った。暗くて顔は見えないし。

「君は俺にどうして欲しいの?」

「……第一発見者には

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金目鯛の唐揚げ

金目鯛の唐揚げ

「それどうしたの」

「大家さんにもらった」
赤くて目がでかい魚。多分、金目鯛。

「それ結構お値段するんじゃないの」
「そうなの?このでかい金魚が?」
「それ金目鯛だよ」
「ほお・・・」

多分、わかってないな。
港町に住んでるくせに。

「あお、これどうやって食うの?」
「煮付けが定番って聞くけど、君そういうのあんまり好きじゃないでしょ」
「うちは鮎の塩焼き派かな」
「……焼いて、塩かけたのが

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キーボードの代わりに。

キーボードの代わりに。

キーボードの音で目が覚めた。

寝たふりをしてからしばらくすると何故か音が止んだ。
気になったのでトイレに行くふりをした。

「今勉強しとるけぇ話しかけんさんな」

振り返ることすらせず、釘を刺されそっと後ろから覗くとタブレットに恋愛漫画。

勉強ってそれかい。

地元言葉の時はいうことを聞く。
暴れ散らかすので。それで何度も家具を壊された。

ようは今回のそれも彼女にとっては重要なことなのだろう

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これ、漫画で言う4コマを繋げて長編にするタイプなんですけど。
女の子の名前まだ決まってないんです。

「さつき」がいいかなって思ってるんですけど、なにか案欲しいです。(隠れファンのみなさん、出番ですよ!)

24になりました。
子どもの頃描いた大人像とはえらく違いますがそんなもん万人共通だと思うのでまあいいでしょう。プロ野球選手にはなれなかったけど、自立してきちんと納税しているのでもう300点ですよ。
最後に、いつも小説読んでくれてありがとうございます。

結婚ごっこ。

結婚ごっこ。

指輪を買ってみた。

2つ、隣町の雑貨屋で買った。
1個500円。銀色の輪っかを。

ことの発端は彼女。

「結婚ごっこしよう」

時々意味不明なことを言い出す。
でも面白そうなので毎回乗ってしまう。

僕らは電車に乗った。
明るいうちに外に出るのは久しぶりで、ちょっとだけ眩暈がした。

雑貨屋で指輪を2つ買って、店を出て早速左手の薬指にはめてみた。

「ムズムズするねえ」と君は嬉しそうだった。

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なんでもない夜。コンビニ。

なんでもない夜。コンビニ。

「あお」

振り返ると彼女がいた。

「うちも行く」
「傘1本しかないよ」
「いいよ別に」

アパートの急な階段を落ちるように降り、通りに出る。
外は雨で、思ったより強く降っていた。僕は傘をさし、彼女はそこに入った。

真夜中、銀色のフープイヤリングが彼女の位置を示す。
肩まで伸びた髪。出会った頃は男みたいに短く刈り上げられていた。

風に合わせて傘の向きを変える。時折風は強く雨は横を向く。
彼女

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深夜、無人のタクシー乗り場、そのベンチ。

深夜、無人のタクシー乗り場、そのベンチ。

深夜、無人のタクシー乗り場、そのベンチ。

1時間に2本しか電車が出ないこのまちで。
坂の途中にある駅舎のタクシー乗り場で。

ペプシの青いベンチにだらりともたれ、空を見る。

なぜここに?と思わざるを得ないアイスクリームの自販機。
多分使っているのは僕だけだと思う。一番右下の、ブドウのアイス。180円。小銭をパジャマに突っ込み毎晩課金。

寿命が目前の街灯がチカチカと振り絞る。
鈍い灯りに時代を

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どなたか僕とスタエフで雑談してくれませんか?人と話すのに飢えておりまして。テーマはあってもなくてもオッケー。日時も合わせます。暇人なので。

人助けだと思って、
コメント欄か、インスタでdm欲しいです。