マガジンのカバー画像

ねこのこと

18
うちにいるねこについての記事です。
運営しているクリエイター

#ペット

【エッセイ】そういうこと

【エッセイ】そういうこと

 ねこは寝てばかりいた。
 これまでは具合が悪そうでも、数日寝ていればまた元気になったのだが、今回は長引いているようだ。
 でろんと横になり、触っても迷惑そうな顔すらしないで無視している。毛もボサボサで、なんだか薄汚い感じだ。すっかりやせて、抱き上げてしばらくすると嫌そうに小さく鳴く。
 しかし、夕方になるといくらか元気になることもあり、母と姉は病院に連れていくのを迷っていた。もとは野良ねこで、寝

もっとみる
【エッセイ】ふたたびの毛だまり

【エッセイ】ふたたびの毛だまり

 目を負傷したあと、ねこは寝ている時間が多くなった。
 腫れあがった顔は元に戻り、目も赤みがひいて開くようになったが、一日のほとんどを寝て過ごした。
 今までは姉や母のあとをついて歩いたり、気ままに辺りの見回りをしていたが、それもあまりしなくなった。カリカリも食べず、ちゅーるをかろうじてなめる程度で、あとは草むらや牧草の上で寝ている。抱き上げると軽く、前よりひと回り小さくなった気がする。
 そのよ

もっとみる
【エッセイ】ねこ模様 その3

【エッセイ】ねこ模様 その3

 靴を履いていたら、外をねこが足早に歩いていくのが見えた。
「ねこ! ねこちゃん! どこいくの!」
 大きな声で呼んではみたが、ガラス越しでは聞こえないようだ。そのうちにオンコの木の向こう側に入ってしまって、見えなくなった。
 急いで外に出て、行き先を見届ける。
「ねこちゃん!」
 呼びながら追いかけると、その先に姉がいた。しゃがみこんで草むしりをしていた。
「やっと来たのか! ずっと呼んでたのに

もっとみる
【エッセイ】行き止まり

【エッセイ】行き止まり

 馬屋の2階は牧草を保管しておくスペースだ。
 馬屋の天井には四角い穴が開いていて、そこにハシゴをかけて上る。ハシゴはほぼ直角なので、上るにも下りるにもちょっとした運動神経とコツが必要だ。
 ねこはこのごろ2階がお気に入りのようで、姿が見えないとだいたい2階にいる。そして、自分で下りられるくせに、人が通りかかると下ろしてくれと鳴く。(いざ下ろそうとすると、少しためらう)
 
 先日、ねこがハシゴか

もっとみる
【エッセイ】かまぼこ

【エッセイ】かまぼこ

 正月の朝ごはんのあと、姉が「ちょっと、かまぼこちょうだい」と言うので、紅白をふた切れずつ渡した。
 それを持って外に行ったあと、姉から動画が送られてきた。
 馬小屋の廊下で、ねこは姉の姿を見ると背中を見せて小走りに逃げる。ちょっかいを出されるのが嫌なのだ。
 そのねこを、呼び止める姉。ねこは止まらない。半ば強引に鼻先にかまぼこを突きつけてやっとこちらを向いた。
 ひと嗅ぎふた嗅ぎ、はっと気づいた

もっとみる
【エッセイ】うらみごと

【エッセイ】うらみごと

 このごろのねこは、私の姿を見ると見えないふりをするようだ。
 近づくと身をかがめて地面にしがみつくようにする。かまわず抱き上げる。つきたての餅のようにぐにゃりとつかみどころがなく、両腕で抱えていないと地面にすべり落ちてしまいそうだ。

 ねこを抱えてうろうろしていたら、姉が軽トラに乗れと言う。夕方、小屋に軽トラをしまう時間だ。
 ねこを抱えたまま助手席に乗り込む。すぐに車は動きはじめた。ねこを座

もっとみる
【エッセイ】ねこ模様 その2

【エッセイ】ねこ模様 その2

 母がとなりのおばさんとの1時間にわたる世間話で仕入れた情報によれば、ねこの勢力図に変化があったらしい。
 となりでエサをもらっていた黒(紺)の大きいねこは、事故で命を落としたようだ。
 そのあと、うちの先生に似た白いねこが居つくようになり、すっかり「うちのねこ」状態だそうだ。
 灰色はとなりでも厄介者あつかいで、白ねこのエサを勝手に食べてしまうのでいつもおばさんに追いたてられているとのこと。うち

もっとみる
【エッセイ】ねこの名は

【エッセイ】ねこの名は

 知らないうちに、ねこに呼び名がついていた。
 その名も「先生」。
 とある妖怪まんがに出てくるにゃんこ先生というキャラクターに似ているからだとか。
 近ごろのねこのふてぶてしさは、なるほどセンセイと呼びたくなるほどだ。そして、相変わらずかわいい。
 はじめは意地でもねこと呼び続けようと思っていたが、呼び名の必要性が高まったので、ついにわたしも先生と呼ぶことになってしまった。
 それというのも、母

もっとみる
【エッセイ】ねこ、帰る

【エッセイ】ねこ、帰る

 ねこが帰ってきた。
 何事もなかったように現れて、にゃあと鳴いた。エサ入れの小皿を置いた台にとび乗って姉を見上げ、キャットフードを催促したという。そして食べ終えると空のバケツを引き倒し、底に残っていた水を飲んだ。
 それ以来、水が満たされたバケツがコンクリートブロックの隣に置かれるようになった。ねこはブロックの上にあがって首を伸ばせば、自由に水が飲めるという具合である。
 じつに1日半の家出だっ

もっとみる
【エッセイ】ねこ

【エッセイ】ねこ

 ねこが居つくようになった。
 やっと暖かくなり、冬のはじめに死んだ飼い犬のお骨を家の裏に埋めた頃からだ。
 以前から、うちや隣近所をうろついている3匹のなかの1匹で、白い毛に少しブチが入っている。前は何日かに一度やってきては、愛想もふらずに居眠りをして、知らないうちに居なくなっていたのに、この頃は玄関先で待っていて、外に出るとすぐに駆け寄ってくる。
 歩くと、後ろを鳴きながらついてくる。時おり、

もっとみる