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ウサギ仙人の子育て術②(共生意識)叱り方のポイント

ウサギ仙人(ウ仙)から「共生意識」について、いろいろ学んできた亀子であったが、

ウ仙「そうじゃ。少年院の話をしたのじゃが、どうすれば子どもが犯罪をおかさないようになるのかはまだ伝授してなかったの」

亀子「それはぜひ聞きたいです」

ウ仙「実は昔な、児童養護施設出身の子が成人になるまで面倒を見ておったんじゃ」

亀子「児童養護施設出身の子?」

ウ仙「児童養護施設は昔でいう孤児院じゃな。戦争で親を亡くした子を戦災孤児、交通事故で親を亡くした子を交通遺児といって、親に育ててもらえなくなった子が入っておった施設じゃよ。最近は親がいない子よりも親から虐待を受けて入っている子のほうが多いそうじゃがな」

亀子「出身というのは?」

ウ仙「日本では児童養護施設は18歳までしかおれんのじゃ。18歳を過ぎたら出ていかないといけないのじゃが、今は成人年齢が引き下げられて18歳になっておるが、当時はまだ成人年齢が20歳だったので、その2年間親代わりに世話をする人が必要だったのじゃ」

亀子「なるほど」

ウ仙「その子が窃盗を犯して警察に捕まってしまってのぅ」

亀子「どうなったんですか?」

ウ仙「警察から電話がかかってきてな。夜遅くだったので、警察は『まぁ初犯ですし保護者と連絡取れたから今日は本人を釈放しますが、後日事情聴取に応じなかったら、責任を持って連れてきてください』と言われたんじゃ。本人も初めて警察に捕まって怖いだろうと思って、『迎えに行きます』と言って警察署に行ったんじゃ」

亀子「本人に何か言ったのですか?」

ウ仙「いや何も。本人は一人暮らししておるから、『家に帰りなさい』とだけ」

亀子「18歳の子が人の物を盗むなんて、私なら怒ってしまいそうです」

ウ仙「本人にも思うところがあったのじゃろうから、本人がそれを言いたくなるまで待とうと思ったのじゃ」

亀子「本人は事情を話してくれたのですか?」

ウ仙「いや。それから一週間後、また警察から電話がかかってきた」

亀子「何の電話だったんですか?」

ウ仙「『その子がまた同じ窃盗をしたから保護している』と」

亀子「えー、やっぱり怒らないとわからないんじゃ・・・」

ウ仙「ところがな、2回目の窃盗というのは1回目の逮捕よりも前に盗んだものが発覚しただけで、事実上は1回目の逮捕の後に窃盗を繰り返したわけではなかったのじゃ」

亀子「でもその後はどうなったんですか?」

ウ仙「児童養護施設の施設長に一連の流れを報告したところ、施設長がその子に連絡をとってくれてな。本人は『ウサギ仙人に迷惑をかけたくないから、二度と他人の物は盗まない』と言っていたそうじゃ。実際にそれから一度も犯罪をおかすことはなくなった」

亀子「すごいじゃないですか」

ウ仙「少年院のところでも孤独を感じている子が犯罪をおかしやすいという話をしたと思うのじゃが、要はな、犯罪をおかしたときに悲しむ人がいると、心にブレーキがかかって犯罪に手を染めるのをやめてしまうんじゃ」

亀子「ドラゴンボールのピッコロも悟飯が『ピッコロさんは悪い人じゃない』って言ってから、大魔王ではなくなりましたもんね」

ウ仙「その通りじゃ。誰か一人でいいから、理解者がいれば、犯罪はおかさなくなる」

亀子「なるほど」

ウ仙「1回目の逮捕の時にわしがその子を責めなかったのは、全面的に『君の味方だよ』ということを示したかったからなのじゃ。児童養護施設を出たら、誰も守ってくれる人がいないけど、わしだけは『君を守るよ」ということを行動で表したんじゃ」

亀子「そういうことだったんですか」

ウ仙「実は逮捕されるまで、その子は18歳ということもあって、反抗期真っただ中。わしが話かけてもスマホを見て、友達とLINEをしているようなところがあったんじゃ。まだ本当の信頼関係は築けてなかったな」

亀子「その後、どうなったんですか?」

ウ仙「一回目の逮捕で迎えに行った後は、きちんと向き合ってくれるようになったのじゃ。信頼関係ができたという実感が持てたんじゃ」

亀子「それはよかったですね」

ウ仙「子どもが小さいうちから理解者であることを示しておけば、子どもが成長しても犯罪をおかさなくなるのじゃ」

亀子「理解者であることを示すというのは・・・」

ウ仙「実は叱るときにポイントがあってな。2~3歳になったら、他人のおもちゃを勝手に使ってしまったり、スーパーの棚にあるお菓子を勝手にカゴに入れたりすることがある。その時に『そんなことしたら、お母さん(お父さん)は悲しいな』という叱り方をするのじゃ」

亀子「『そんなことしちゃダメでしょ』じゃダメなんですか?」

ウ仙「あくまでも理解者であることを示すのが大事なんじゃ。頭ごなしに叱ると、自分が否定されたという感覚になって、隠れて同じ行動を起こしたり、ウソをつく子になってしまうのじゃ」

亀子「そうなんですね」

ウ仙「人格は否定せず、『あなたのことは大好きだけど、その行動はやめてほしい』というニュアンスで叱ることが大事なんじゃ」

亀子「なるほど」

ウ仙「2~3歳のうちからそういう叱り方をしていると、子どもは身近な大人、とくに親が悲しむことはしたくなくなるので、そういう行為はやめるようになる。成長しても友達から万引き行為に誘われたとしても、親の顔を思い出して、そういう行為には手を出さなくなるのじゃ」

亀子「いやー勉強になりますね」

ウ仙「叱り方のポイントとしては、他人の物を盗んだり、ウソをついたりしたときに、その行為に加えて叱り手のマイナス感情を付け加えることじゃな。『人の物を盗むのはお母さん(お父さん)は悲しいな(嫌だな)』といった具合にな」

亀子「私も感情的にならないよう叱り方に気を付けます」

こうして亀子はレベルが上がった。
「人格を否定せずに行為を否定する」叱り方の魔法を覚えた。


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