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LBOモデル作成Step|Step0

今回は以前紹介したLBOモデルの概要に続いて、LBOモデル作成の具体的なステップを、実際のテストをイメージしながら行っていく。
前回までのLBOに関する記事

LBOモデルは、投資銀行のM&Aアドバイザリーでも作成することはあるが、ここでは主にプライベートエクイティの選考等において行われるLBOモデリングテストの準備の参考になるような内容を念頭に置いている。

一般的にPEファンドのLBOモデリングテストでは、面接プロセスの中で行われる可能性があり、受けているファンドの他のメンバーとの追加面接が行われたり、丸々半日をかけてケースディスカッションを行ったり、選考を受ける者にとってはタフなプロセスになることが多い。

LBOモデリングのプロセスでは、他の候補者との比較もあるが、それ以上に時間をかけてすべての数式を正しく作成し、かつ計算を理解することが重要になる。
この手のLBOモデリングのテストは、1日または1週間ですぐに習得することは困難であるため、PEファンドへの転職を希望する場合にはいたずらに応募したりヘッドハンターと会う前に、繰り返し練習し、エラーをチェック・自分のミスを修正する方法を学びながら、LBOモデルがどのように機能するかについての理解を深めることが鍵である


ステップ

以下にLBOモデル作成のステップを記載している(今後はこの順で更新を想定)

Step0:ケースの前提、取引概要の確認、前提条件
Step1:予測PLの作成
Step2:予測BS作成① 
Step3:予測BS作成② (Debt Schedule)
Step4:予測キャッシュフロー計算書(CFS)の作成
Step5::リターン分析 (IRR and MOIC)

ケースの前提、取引概要の確認、前提条件

以下に、実際のLBOテストを意識した例を記載する。今後の記事で書く内容とは若干異なるが、概ね以下のようなイメージで作成を求められることが多いので参考になれば幸いである。

会社名
XYZ Company ("XYZ")
製造業を営む非上場会社である。過去5年間の財務数値が入手可能。

演習内容

必要なすべてのスケジュールを含む統合された3ステートメントのLBOモデルを作成

投資の前提

Entry Mutiple: LTM EBITDA: 7.0x
Entry EBITDA:LTM EBITDAと同値とする
対価:Cash
ストラクチャー:株式譲渡

PLに関する前提条件

期間:2022年-2026年
売上高

Upside case
年間成長率が1%
Stress case
年間成長率は0%

粗利率
Upside case

直近会計年度の数値が予測期間において継続
Stress case
過去5年間の平均値と直近会計年度の数値のうち、小さい数値が予測期間において継続

SG&Aの仮定(予測期間を通じて一定であると仮定)

人件費=対売上高比率で計算
給与と福利厚生=対売上高比率で計算
研究開発費=対売上高比率で計算
販売手数料=売上高の5%で計算
オフィスおよびその他の管理コスト=年間75百万円
CEOの給与とボーナス=年間25百万円

その他PL項目
支払利息(PIK利息含む)
Debt期首残高を使用して計算
特別損益
予測期間を通じて発生しないものと仮定
税前利益(EBT)に対する法定実効税率
30.62% 

BSに関する前提条件

運転資本
DSO, DIO, DPO(それぞれ売上債権回転日数、棚卸資産回転日数、および仕入債務回転日数)およびその他の資産と負債を対売上高比率を使用して計算
年間365日であると想定 (Days outstanding = 365)
固定資産(PPE)
既存のPPEが定額法で10年償却、年間Capexが5年間の定額法で減価償却することを想定し減価償却スケジュールを作成

ファイナンシングの前提
・シニアローン

4.0x of entry EBITDA
利率: 2.5%

・劣後ローン
2.0x of entry EBITDA
利率12%(cash coupon: 8%、PIK for 4%)
Mandatory payment: 2% to face value

・Management Rollover
エグジット時点において、Equity proceedの50%を受け取るものと仮定
(エントリー時点のManagement持分はsources and usesの計算において反映されている)

・ミニマムキャッシュ(必要最低現預金)
500百万円と想定

・キャッシュスイープあり
各トランシェの返済が優先順位の高い順によって行われ、余剰キャッシュがキャッシュスイープに使用されると想定
*つまり100%のキャッシュスイープを適用

その他事項

・ディールにかかるコスト
アドバイザー等費用400百万円
・Financing fee
手数料は、5年間の定額法で償却
・のれん
取得価格から純資産簿価を差し引いたものに等しいと仮定し、PPAは実施しない。対象会社に既存ののれんはないものとする。

リターンの計算

一定のExit マルチプルの範囲で、2022年から2026年までの予想エグジット時点に基づいてエクイティ (ファンドと経営陣両方) へのリターンを示すスケジュール(IRR and MOIC)を作成。感応度分析も実施する

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