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「掃き溜めに鶴」のビジネス~イノベーションにおける個人と組織の関係~

 現在進行形の第4次産業革命の時代にあって、『成長』という言葉は、『イノベーション』と同義になりつつあります。何故なら、既存のビジネス(モノ・サービス)でシェア競争をする「ドングリの背比べ」では、革新的なビジネスが出てきた時に「掃き溜めに鶴」になってしまい、持続的な成長は覚束ないからです。イノベーションあってこその成長、もっと言うなら、イノベーションし続けることによってのみ成長が達成されるのです。

 問題は、このようなイノベーションのサイクルが、イノベーションアクセラレータであるIoT、そしてAIの進化によって加速していくという点です。企業にとって、働く人にとって念頭を離れる事のない『成長』という言葉の呪縛から解き放たれ、自らがイノベーションの担い手となる為にはどうしたらいいのか?どうやって成長するのか?

 日経電子版の記事【成長加速する事業提携】は、ずばり、そんな疑問に答えてくれるヒントに溢れていると思います。記事では、主体として企業を扱っていますが、企業を個人に置き換えれば、働く個人のレベルでも参考になるに違いありません。



 記事からは、『成長』のスキームとして、アライアンス(業務提携・企業連合)によるイノベーションの活性化を読み取ることができます――

▶アライアンスによるイノベーションの活性化

(1)水平的統合(バリューチェーン上の特定の工程の統合)

  ① 周辺産業との提携
・・・自己の事業と関連する周辺産業と提携して、
             新たな価値を創出する。

  ② 同業との同盟・・・同業と同盟して、スケールメリットを追求し、
           また、互いのノウハウを掛け合わせて、新たな
           価値を創出する。

(2)垂直的統合(バリューチェーンに沿った統合)

  ① 川上との統合
・・・自己の事業の川上にある事業と提携して、競合を
           遮断し、また、互いのナレッジを掛け合わせて、
           新たな価値を創出する。

  ② 川下との統合・・・自己の事業の川下にある事業と提携して、売上・
           利益を拡大し、また、互いのナレッジを掛け
           合わせて、新たな価値を創出する。

 

 このように見てくると、アライアンスによる『成長』というスキームは、水平、そして垂直という4方向との結合によって、圧倒的優位性・売上・利益といった直接的効果(シェア)と、アイデアとアイデアの結合による新たな価値創出という間接的ではあってもより重要な効果(イノベーション)という2パターンの効果を目的としている事が分かります。

 つまり、第4次産業革命の時代のアライアンスは、従来の補完ドリブンな提携ではなく、結合ドリブンな提携を主目的として、イノベーションを最重要な課題と捉えるべきであり、その為には、イノベーションの担い手である『個人』の活躍が不可欠になってくると考えられます。

 その事から導き出されるのは――



(1)アライアンスの前にやること
  ▶キーワード『希薄化』

 イノベーションの担い手である個人と個人が、ダイバーシティな環境で結合して、アイデアとアイデアの結合からイノベーションが生まれる事が最も重要であるとするなら、アライアンスより以前に、企業がその境界を開いて、フリーランス、複業、パラレルワークなど様々な働き方で個人の交流が促進される状態を準備することが先決となってくる、と考えられます。そうすることで、そもそものアライアンス案件が、質的にも量的にも増大してくるのではないでしょうか。

 アライアンスありきではなく、まず企業の境界を希薄化させ、オープンにすることが、個人と個人の結合、アイデアとアイデアの結合を活性化させ、イノベーションへと繋がるのだと思います。アライアンスが従来では考えられないレベルで頻繁に発生する状態こそが、持続的な『成長』であり、イノベーションのエコシステムが活性化している証であると考えられます。


(2)アライアンスをどのように始めるか
  ▶キーワード『小型化』

 第二に留意しなくてはならない事は、アライアンスの始め方です。アライアンスが初動から大規模である事は、必ずしも好ましい事ではない、と考えられます。何故なら、イノベーションの推進において重要な事は、変化に迅速・敏感に反応する柔軟性だからです。

 大規模組織にはない柔軟性に優れた低コスト・少人数なプロジェクトとしてスタートし、アジャイルな開発で試行錯誤しながら徐々に拡大していくリーンスタートアップこそが、ユーザーに刺さる尖ったプロダクトへと繋がっていくのだと思います。たった一つの大規模プロジェクトも、まったく「なし」ではありませんが、いくつものリーンスタートアップが次々に立ち上がることこそが、エコシステムの活性化ではないでしょうか。


(3)アライアンスを提案する
  ▶キーワード『個人化』

 このように見てくると、企業と個人との関係において、第4次産業革命の時代のアライアンスとは、企業に命じられて個人がアライアンスに携わるのではなくて、個人が、ダイバーシティな個人間の繋がりの中からイノベーションへと繋がるアライアンスを見い出し、企業にアライアンスを提案し自らリーダーとなる事である、と言えそうです。

 イノベーションのエコシステムにおける主導権は、イノベーションのアイデアの担い手である個人にあるのです。



 『成長』とはイノベーションであり、そのイノベーションの担い手は『個人』です。今求められているのは、『個人』がダイバーシティな繋がりの中でアイデアとアイデアを結合させ、結合ドリブンで柔軟な(緩やかな)アライアンスを主導することではないでしょうか。


(追記:第4次産業革命の時代に重要なキーワードと考えられる『個人化✖小型化✖希薄化』については、下記の拙稿でも考察しています。)




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