見出し画像

【休職日記】 「沈黙」を読んで


▶︎あらすじ

島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入したポルトガル人司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる……。

神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、〈神の沈黙〉という永遠の主題に切実な問いを投げかける長編。


▶︎著者

遠藤周作(1923-1996)
東京生まれ。幼年期を旧満州大連で過ごす。神戸に帰国後、12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て1955年「白い人」で芥川賞を受賞。結核を患い何度も手術を受けながらも、旺盛な執筆活動を続けた。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品や歴史小説、戯曲、映画脚本、〈狐狸庵もの〉と称されるエッセイなど作品世界は多岐にわたる。『海と毒薬』(新潮社文学賞/毎日出版文化賞)『わたしが・棄てた・女』『沈黙』(谷崎潤一郎賞)『死海のほとり』『イエスの生涯』『キリストの誕生』(読売文学賞)『侍』(野間文芸賞)『女の一生』『スキャンダル』『深い河(ディープ・リバー)』(毎日芸術賞)『夫婦の一日』等。1995年には文化勲章を受章した。



▶︎レビュー

キリスト教が厳しく弾圧されていた中、死が間近に迫ることで揺れ動く、神・殉教・正義・宗教への価値観が描かれています。

主人公のパードレの肉体的に衰弱していく様子や、価値観の変化がとても細かく描写されており、臨場感があるため、終始気持ちが重くなります。キリシタンの血、汗や泥臭い匂いが感じらるくらいの迫力があります。


神は本当に存在するのか。

なぜ神は沈黙を続けているのか。

神は信徒たちの祈りを聞いているのか。

殉教とは何なのか。

信仰心や苦しみは図れないのに、なぜ神でなく、人間が裁くのか。




信仰が身近でない、現代の世の中に生きる私にとって、この葛藤を本当に理解するのは不可能でしょう。
今だに宗教の対立は社会問題になっているし、人間を超越した存在を解釈し合い、分かり合うことはないでしょう。

ただ信仰心が深い人の中で、神の実態を感じるのは、同じように侮蔑を受け、苦しい思いをした人間なのではないかな。神の存在を求めるのも、立場が弱い人間なんだろう。



信仰を貫こうとするパードレの視点から考えると、すべての人間が弱く愚かな者に見えました。
日本に自国のキリスト教を広めようと争う各国のパードレ、形式に反したら罰しようとする偉いパードレ、全く違う神を描いて信仰する日本の切支丹、キリスト教徒でないことを主張するために罵声をあげる村のひと。。

きっとパードレにとっての神とは、弱い人間ゆえに感じる苦しみを、共に苦しんでくれるような存在だったんでしょうか。


この記事が参加している募集

読書感想文

雨の日をたのしく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?