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僕とちくわの不思議な数ヶ月

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ちくわを食べたくなるお話です。
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2019年7月の記事一覧

2、ちくわライフ、始まる

優里奈と僕は付き合うことになった。そして、今日は初めて優里奈とデート。
デートの日取りを決めて以来、ちくわの穴からは連日優里奈とのデートが失敗に終わる映像ばかりが流れ、それを元に、僕は綿密な予定をたてた。

結果、デートは大成功した。
友達としての親しさや気安さを残しつつも、気持ちが通じ合った彼氏・彼女としての一歩を踏み出せた気がする。

僕はまだ残っている優里奈の手の感触を思い出しヤニヤ

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3、ちくわ仲間現る

合宿は、学校からバスに乗って二時間ほどにある山奥のキャンプ場で行われる。
男女五名ずつの班に分かれて、カレーを作ってキャンプファイアーをして、テントを張って一晩を明かのだ。

非日常なイベントに僕は少々浮かれていた。優里奈から前日「他の女の子と仲良くしたら嫌だからね」と、かわいいことを言われたことも浮かれっぷりに拍車をかけていた。

大切なちくわは、多めに保冷剤を入れてカバンの一番奥に鎮座させた。

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4. ちくわの予言

こうして、同士の絆で結ばれた僕たちは、キャンプが終わってからも頻繁に情報交換するようになった。
ちくわの予測は、伊織と僕では毎回違っていた。
たとえば抜き打ちテストのあるなしについて、僕には教科に関係なく毎回知らされるのに対し、伊織は英語と古典の時しか出ないらしい。
「たぶん、僕は英語と古典が苦手だからかな」
 食堂の片隅で、A定食の味噌汁を飲みながら伊織は言った。
「つまり、僕は全般的に苦手だか

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4-2 ちくわの予言

その日の夜、僕は日曜日のデートに向けて、ちくわの助言を借りようと、いつものように穴を覗いた。

そこに映ったのは、地面にゆっくりと倒れこむ伊織だった。
ハっとして、僕はちくわから目を離す。

…なんだ、今のは。

恐る恐る、もう一度覗き込んでみる。しかし今度は、デートの日に財布を無くして慌てふためいている僕の様子が映っていた。
しばらくして、もう一度覗き込んでみても、やはり慌てふためいている僕の様

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4-3 ちくわの予言

一瞬、何を聞かれたのか分からず、僕はぽかんとした。彼女とは優里奈のことだろうか。
「うん、元気だよ」
「そう、元気ならいいんだ。じゃあ」
「うん?」
「…いや、やっぱり!」
伊織は僕の腕を引っ張ると、廊下を歩き出した。
「え、なに、遅刻しちゃうじゃ…っ」
使われていない空き教室に引っ張り込むと、伊織はカバンから自分のちくわを取り出し、僕に押し付けた。
「覗いてみて!見えるか分からないけど」
訳が分

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