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【どうする家康】“最推し”広次ロスで週明けから辛い……家康は信玄に一矢報いることができたのか。第18回「真・三方ヶ原合戦」雑感

NHK大河ドラマ『どうする家康』(以下、『どう康』)第18回の雑感です。

前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)

●神回過ぎて絶句……我が最推し・夏目広次ロスで週明けから辛い

正直、今週はレビューできる気がしませんでした……まじでもうしんどい。バスタオル必須どころじゃなかったね。ひょっとしたら画面が見えなくなるくらい泣いちゃうんじゃないかとは覚悟してましたけど。覚悟したところでボロ泣き必至でした……。

しかも、自分の中ではドラマを見た後の楽しみともなっている、ノベライズ版のチェックもやったんですけれど。広次の最期のエピソードに差し掛かると、文字だけでも自然とボロボロ泣けてくるんですよ……。

やっぱり僕の『どうする家康』の最推しは夏目広次やったんやと。もちろん、殿も本多平八郎も左衛門尉も岡田信長も、好きなキャラたくさんいるんですけど。広次はもう涙なしには語れない。

ドラマでは序盤、「留守を任せる」なんて言われて。でもその前に名前呼ぶときに、殿、また間違えてたじゃないですか。

「夏目ヨシ……夏目ノブ……」

「また間違えてらw」と笑えると同時に、僕も広次が今回ロスるということは史実を予習して知ってたわけですから、「最後ぐらいちゃんと名前言ってあげてよ……」という気持ちにもなっていたんです。

この、殿が広次の名前を覚えられない設定、ドラマ的には一つの個性づけだということもわかってたんですけど、ネットの感想を見たりするとしばしばドラマの批判の対象になっていたこともありました。「家臣の名前を覚えられないなんて最悪な殿だろ」と。実際、三河一揆のときにはそれがキッカケの一つとなって謀反を起こされてるわけですし。

(個人的には、謀反を起こした最大の理由は、目の前で家来に自害されたことがショックだったから、と過去にレビューしてましたが)

しかし今回は「なぜわしはおぬしの名を覚えられん? なぜずっと間違える?」なんて殿も言ってましたね。そりゃ1周目は僕も「知らんがな」と思って見てましたし、広次が「それは、私の影が薄いからでございましょう」なんて言うと、「僕の最推しは、最後の最後でこんな地味な存在として散っていくのだろうか」と一抹の不安も抱いたものです。

でも、そこからの……神シナリオじゃないですか。

「吉信じゃろう!お前は……幼い頃、わしと一番よう遊んでくれた……夏目吉信じゃろう!」

なんだよこれ。僕の最推しに、そんなクソデカ感情巻き起こすような神設定足してくれてよ……しかも、最期の最期で。もう、正直しんどいのよ。しんどいけど、「ありがとうございます」と拝むしかないですよね。

実際、このレビュー書きながらでも僕、ボロボロ泣いてますよ……37のオッサンがよ。あーだめだ……しんどい😭😭😭😭😭

●Wikipediaの時点で名前が違っていた広次。名称変化の余白を埋めるシナリオとしては余裕で満点越え。「真の神回」

そもそも、夏目広次なる人物をネットで検索してみると、「夏目吉信」なるページがWikipediaでヒットします。これもある意味ヒントにはなっていたんですけれども。

ちなみに「夏目吉信」は、時代考証の小和田先生の解説によれば、江戸幕府の公式史書『徳川実紀』「東照宮御実紀」第二巻という資料に掲載されている名前(フルネームは「夏目次郎左衛門吉信」)とのことです。

これが同時代の資料に「夏目広次」の名があるとのことから、ドラマの中では「吉信」ではなく「広次」の名を使われていたということなんですけど。

ただ、当時の人って、いっぱい名前があるじゃないですか。家康だって竹千代から松平次郎三郎元信松平元康に変え、そして松平家康から徳川家康に変わったという経緯があります。吉信が広次になるのも不思議ではなく、ただどういう経緯で変わったのかは、いろいろ想像の余地がある。つまり脚本家の腕の見せ所なわけですけれども。

そういう意味では今回、120点満点越えぐらいの点数付けても足りないくらいです。1000点必要なんじゃないか。これが真の神回だ、といわんばかりの展開でした。

もちろん、今回のシナリオにまったく心動かされなかったという人がいてもいいと思うんですよ。だって世の中、あの神アニメ『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』ですら泣けないという人だっていますからね。実業家のROLANDさんなんて、このアニメ「湖できるくらい泣ける」っておっしゃってるのに。

感じ方は人それぞれでいいと思うんですよ。ただ、「『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』まったく面白くない、アニメで泣くなんてROLANDもダセェ」なんて笑う人は、そう言う人同士で仲良くしてくれればいいですし。

僕なんかは『ヴァイオレット』も大好きなのでROLANDさんにも共感できますし、やっぱり今回の『どう康』では「夏目広次」が最推しだと確信したので、「夏目広次の最期、よかったよね。涙止まんなかった……」って人たちと感想を共有したいと思って今回のレビューを書いてる次第ですね。

……って、予防線はろうとするのにもキレがないなぁ、今回……。とにかく感情の整理が追いついてないんですね。それぐらいドラマが素晴らしかった、ということでもあるわけですが。

●家康、一矢報いることは……できなかった⁉合戦直後の諸々も家臣団がやれるだけやってくれました

ただ、ロスっちゃった人のことばかり語っていても前へ進めない。結局、僕が期待していた「家康は信玄に、一矢報いることができたのか」という点においては……確かに、三方ヶ原の退き口で、家康が勇ましく赤備えの追手どもを蹴散らすシーンだって描かれてましたが。

ただ、広次を身代わりにして城に逃げ戻った殿は、浜松城の主殿で仰向けになって泣いているばかりでしたね。そこに左衛門尉や数正が、家臣たちの働きを報告にきます。

「小平太はわずかな手勢ながら南側の敵を追い払いました。忠世も同じく犀ヶ崖にいる武田勢に夜討ちをかけました」

どちらもネットを検索したりすると出てくる、伝承通りの活躍が語られたわけですが。

武田信玄軍と、徳川家康・織田信長連合軍が衝突した三方ヶ原の戦い(みかたがはらのたたかい)に参戦。徳川・織田軍は敗北し、撤退を余儀なくされるが、その際に榊原康政は、知略を巡らせて武田軍を瓦解させた。

榊原康政の武将年表 - 刀剣ワールド

徳川家康は、三方ヶ原の戦いで対決した武田信玄に勝てず、一度は「浜松城」(静岡県浜松市)へ逃げ帰りました。
このとき大久保忠世は、武田信玄の陣に夜襲を仕掛け、戦いの準備ができていなかった武田信玄軍を混乱させたのです。
結局、この追撃でも徳川家康は敗れてしまいましたが、敵将・武田信玄は、奇襲してきた大久保忠世を「勝ちてもおそろしき敵かな」と賞賛したと伝わっています。

大久保忠世 - 刀剣ワールド

ただこれらは、ドラマの中では家康が命じたことではありませんでした。「皆、やれることをしております」というセリフからは、家臣たちの自主性に任せたような印象も受けます。

そもそも、特に有名な「空城の計」。これが家康ではなく、左衛門尉の発案だったというのが面白いところでした。

そもそも左衛門尉、第15回では「お前には学がないからなあ」なんて殿にバカにされていたのに、なんで諸葛孔明の「兵法三十六計」なんて知ってるの?実は密かに勉強してたの?なんて思ったところですけれど。

ここはドラマ的には、むしろ左衛門尉の「学の無さ」を強調したシーンのようにも思えました。だってこんな奇策、元々知っていたからって言って、やろうとは思わんでしょう。むしろ学がある人ほど「確かにそういう策も聞いたことはあるけど、あんなのネタじゃん」と笑い飛ばすところ。山県昌景だって「本当にやるやつは初めて見た」なんて嘲ってましたね。

だから左衛門尉も、ちゃんと兵法を学んだとしても、割と付け焼刃だった印象も持ちました。それこそレシピ本とか読んだばっかりで、覚えたての料理を一品こしらえてみる、みたいな感覚と言いましょうか。

元々料理が得意な人だったら、材料費や必要な器具、時間だとか最初に見積もって「手間だな」と思ったらやりませんし、そもそもレシピ通りやったりしないじゃないですか。いろいろ楽する方法や、もっとおいしくなる方法を考える。だけど初めての人ほど、できるだけレシピ通りに作ろうとするものです。グラニュー糖が無ければ上白糖でもいいわけです。でも、「ぜったいグラニュー糖じゃなきゃダメだ!」みたいなこと言って、わざわざ1kg買ってきちゃったりさ。上白糖なら家にめっちゃストックしてるのによ!

「ほかに手はなかろう」
「やってみるか……」

なんて、数正ともたまたま意見が合ったから良かったんですけど。ひょっとしたら信玄との戦に備えて、二人で勉強会でもやってたのかもしれないですね。「いざとなったらコレを使ってみるか」みたいに元々考えていたのかもしれないです。「上白糖では駄目だ!グラニュー糖のほかに手はなかろう」「やってみるか……」という、左衛門尉&数正の見様見真似3分クッキングの結果がアレだったと……まぁ、ただの妄想ですけどw

その結果の、ガチの開門、かがり火が煌々、ですよ。浜松まで攻めてきたのが、まだ若い勝頼でよかったですね……たまたまうまくいったようなもの。

通説ではこの「空城の計」も、家康の狸オヤジっぷりを示すエピソードの一つとして語られたりするんですけど、今回は「学の無い左衛門尉の、付け焼刃兵法」として楽しめました。つまりドラマ的には、「まだこの時点の家康には、大敗を喫した直後、すぐ冷静になって反撃できるほどの器量がない」ことを示していると思うんですね。あんな、前回では「それは、わしの弱い心じゃ。ここへ置いてゆく」と瀬名に木彫りの兎を託していましたのに。もう“のび太”しないと思っていたのに。

忠臣を失って、泣くばかりの殿。やっぱり情けない殿のままかよという落胆もある一方で、これまでの殿の姿も愛しく見ていた身としては、逆にちょっとホッとする感じでもあります。弱い殿は、まだそこにいたんだ、と。何よりそんな殿だから、広次も「だから皆、殿をお助けしたくなる」と言っていました。今回はそれでいいんだと思います。殿の成長よりも、支えてくれる家臣たちの姿をメインに描いた回だったんですね。

●それでも“一矢報いた”と言いたい。ラストで急展開、信玄はどうなる⁉

ただ、それでも最後に殿は、「必ず立て直すぞ!家康は生きておる!そう言いふらせ!」と力強く言っていました。家康ができた最低限の抵抗が、まずそれ。

すると、岡崎へ向かっていた武田軍も、ほどなく急展開を迎えていました。なぜか信玄の影武者を立て、本人は輿の中で死にそうな顔。第16回から何やら体調が悪い様子は見せていましたが、とうとう死期がきたのか……。

でもこのタイミングで武田が甲斐に引き返し始めたのが、ひょっとしたら家康的には、「一矢報いることができた」ということになるやもしれません。三方ヶ原合戦はほんの2時間で決着がついたと言われていますが、そんなほんのちょっとの足止めが歴史を変えた。もちろん、歴史にifはないので、三方ヶ原で合戦が起きなかったらどうなっていたかはわかりませんけど。ただ、ドラマ的にはあの合戦のお陰で、岡崎は守られたんだと思いたいです。

そうじゃなきゃ、本当に絶望しかないのよ。だって、「信玄を止めよ」と言った信長の命令も守れなかった、そして遠江の民が見ていた状況も、大敗を喫してしまってはやはり「弱くて愚かな殿さまだ」と落胆されたことでしょう。でも、「ここには、指一本触れさせぬ」と瀬名に誓った岡崎だけは守ることができた。そんなシナリオだったと思いたいんですね。

そして、信玄がいなくなった先は、ついに武田勝頼との勝負が待っているわけで……「四郎……そなたの代に残してゆく」なんて信玄は言ってましたけど、勝頼からしてみれば、まったくやっかいな敵を残してくれたな、という気がしますね……。

と言うわけで、次回の物語なんですけれど。第19回「お手付きしてどうする!」って、なんだそのギャグ回的なタイトルwwww

これまた、第10回「側室をどうする!」を彷彿とさせるような問題作になりそうですね……ギャグとシリアスの混ぜ込みがエグイのよ。マジで鬼脚本wwwwwww

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●オマケ:金陀美具足は失われたのか?そもそも今川義元からの形見ですらなかった?

さて、ここからはあとがきになります。

今回、ドラマの冒頭のアニメーションでは金陀美具足が儚く消えていく様が描かれ、その時点からもう泣きそうではあったんですけど……。

この金陀美具足、史実としても三方ヶ原で失われたものなのでしょうか?念のため調べてみたら、そんな解説しているサイトはまったくヒットせず、やはりこれもドラマのオリジナルだったと考えた方がよいところなんですけど。

そもそも、先に紹介した小和田先生の動画でもそう解説されていましたし。実際に金陀美具足って、「紀行潤礼」でも語られていましたけど、久能山東照宮・博物館に実物が飾られているんですよね。

もちろん、ドラマのように「広次が身に付けて、一度は武田の元へ奪われたが、後に徳川へ返却され、いま久能山東照宮にある」という可能性だって、「絶対、120%ありえない」とは言い切れないわけなんですけど。実際、今川義元の兜と鎧は、一度は織田の手に落ちていますが、その後、氏真の元へ返却されていましたもんね。

ただ、そもそもこの金陀美具足、陣中見舞いとして今川義元から家康に贈られたものという情報も、ドラマを離れたところでは一切出てこないわけです。つまり出自は不明なわけなんですけど。それを「義元からの形見」としたところが、またこの『どう康』というドラマの面白いところでもあります。

ドラマでは嫌々ながらも今川家を裏切るしかなかった家康。「元康」という、義元からもらった名前もありましたが、それも信長の命令で変えさせられてしまいました。金陀美具足だけがまだ唯一、亡き義元公に縋っていた要素のようにも見えたのですが。それが今回の物語で、広次と共に失われるという描き方をされたのは、やっぱり象徴的な気がするんですよ。

17回では「それは、わしの弱い心じゃ。ここへ置いてゆく」と瀬名に木彫りの兎を託していました。けれどあれは、作ったばかりで象徴性は薄かったじゃないですか。「わしが、これをわしの弱い心と言っておるのだから、そうだ」と言わんばかりと言いますか。それよりも、三方ヶ原にまで着て行っていた金陀美具足こそ、真の「わしの弱い心」だと見るべきなんです。

それが失われたということは、今度こそ家康の弱い心が失われたということ。ここからようやく天下取りへ向けて邁進していく様が描かれていくんだと思うと、楽しみでもあり、やはり逆に不安でもあります。

これまでの殿が可愛くて仕方なかった視聴者の方には、「なんでそんな風に変わっちゃうの」とショックを受けるところもあるかもしれません。実際、昨年の『鎌倉殿の13人』でも、伊豆の片田舎に住む無欲な青年・北条義時が、鎌倉幕府の実権を握ってどんどんブラックに染まっていく姿が描かれていきました。人は変わっていくもの。もちろん変わらない部分だってありますが、基本的に見た目も地位も性格も、どんどん変わっていく様を描いていくのが「大河ドラマ」というものです。

なかなか成長しない、ずっと弱虫泣き虫だった家康が、これからどう変わって、何が変わっていかないのか、これからは1話ごとに楽しめる展開が待っているのでは、という気もしています。益々、目が離せませんね。

ここまでご覧くださり、誠にありがとうございました!

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