【論文読了】人を惹きつける会社
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの特集は人を惹きつける会社でした。
もう会社が一生面倒を見てくれる時代でもないと私は考えています。また会社に滅私奉公する時代でもないと私は考えています。
現実にはそうなっていない会社も少なくないでしょう。しかし人手不足になって転職が普通になれば、働きやすい会社に人が集まっていくでしょう。
人をこき使ってなんぼ、従業員は会社に服従して滅私奉公しろという従来型の会社が人を集めにくくなって減っていけば、もっと仕事の満足度は上がるだろうと私は考えています。
今回の特集では働きやすい職場づくりから始まって、社内ジョブマッチングや障害者雇用、リスキリングなどのケースが紹介されています。
健全な組織文化が人を惹きつけ、企業の競争力を高める
まずは伝統的な会社を変えた事例です。
会社には不条理が当たり前のようにある
伝統的な会社の常識では不条理が当たり前です。仕事で不満がない人なんてまずいません。私だって仕事で腹が立つことは沢山ありました。理不尽や不条理を正当な行為として押し付けられるからです。
樋口氏も不条理をいくつも受けたそうです。私も似たような経験が沢山あり、ものすごく同意できました。
社外の友達と付き合うことが言語道断とか、会社の人がプライベートまで介入してくるのは私にも体験があります。同じ釜の飯を食う文化の会社はそうなんですよね。
私の場合は学生時代からサードプレイスに所属していたので、他部署の人とも当然のように交流を持ちました。そしたら同じ部署の人とだけ仲良くしろとか、同期だけと付き合えと怒られました。
また社外の人と付き合うことが理解してもらえず、頭がおかしい、幻覚を見ている、精神異常者だなどと言われ、精神科へ行けと怒鳴られました。
他にも社外のサークルなどに所属していると、学生気分だとか、会社と学校は違うみたいな意見もありました。
本誌のインタビューでは権力主義とか慣習に囚われているという話も出てきます。私もこれらに苦しめられたものです。
理不尽や不条理に散々苦しめられたのは自分だけじゃないんだなと感じられ、救われた気分です。
不条理に苦しんだからこそ不条理をなくせる
理不尽や不条理に苦しんだ後は、自分も苦労したんだから次の世代も苦労しろと言って、後輩に理不尽や不条理を押し付ける人がいます。
私はこういう考えに大反対です。断じて許せないという考えです。樋口氏も反対という考えで、同じように苦しまないようにしようという考えです。
ハラスメントを減らし、権力で押さえつけるよりも自主性を尊重するという話が出てきます。私も同じことを意識してマネジメントをしています。
マネジメントを勉強している人はちゃんと人を大切にすることを意識しているのです。
仕事だからとか社会人の常識だといって、仕事は厳しいんだといって、人をないがしろにしているのが現実の社会です。私はこれが違うと感じています。
人を活かせばもっといい仕事ができて、もっと快適にストレスなく仕事ができると考えています。私自身が自分の裁量で何でも自由にやらせてもらって、顧客からありがとうと言われる仕事ができているからです。
私のような高校すら行けず就職もできなかった実質的に底辺の落ちこぼれですらできるので、誰でもやりがいを持ってストレスを抑えた働き方ができるはずなのです。
もういい加減、仕事は理不尽で不条理なものとか、社会人は理不尽や不条理に耐えることが仕事だなんて考えは止めませんか?
私はとっくの昔に止めています。散々理不尽な目に遭って不条理に苦しめられたからです。
そして理不尽や不条理を反面教師としたマネジメントを実践しています。
社内に価値あるタレントマーケットプレイスを構築する法
インターナル・タレントマーケットプレイス、すなわち社内で仕事と人材をマッチングする仕組みのケーススタディです。
履歴書や職務経歴書では書ききれない自己PRや、関心があること、将来に対する希望などをシステムに登録しておいて、人材を探している人が見れるようにすれば、もっと判断しやすくなりそうです。
成長機会がない、アップスキリングの機会が得られないなどが理由で、アメリカ人労働者の48%が退職してしまうそうです。日本は人材の流動性がアメリカより低いので、同じ理由での退職者はもうちょっと低くなるかもしれません。
とはいえ従業員としてもスキルアップや希望する仕事を得ること、会社も人をアサインしたい仕事に適切な経験・スキルや関心がある従業員を探すことが必要です。
これが上手くできずに離職につながってしまうケースが多いのは残念なことです。かといって従業員が自己PRや希望を好きなだけ言える環境があるとも限りません。
そういう意味でタレントマーケットプレイスは面白そうだなと感じました。やっぱり長く勤められるのが一番ですし。
タレントマーケットプレイスを活用することでメリットもあります。従業員としては自分が希望する仕事に就ければ当然モチベーションが上がります。
他チームから人を受け入れたチームには新しい知識が入ってくるので、会社としても知識の伝達ができるのです。また知識を広めることは新しい発想にもつながります。
こういう仕組みを作ってみたいと思います。でもその前に導入先を探すか自分で会社を作るかしないとなぁ。まずはプロボノで試してみるのもいいかなと思いました。
優れた人材を採用したければ学位よりもスキルを重視せよ
今度は学位よりスキルを重視せよという論文です。
学歴がないと就職で不利になる
残念ながら世の中には学歴フィルターがあります。新卒採用などは実務経験0の人を採用するため、実績を測る経歴が学歴しかありません。
経験者採用だとデータサイエンスや技術系の研究職みたいな理系大学院卒でないと難しい職種は学歴がないと難しいとしても、多くの会社・職種で実務経験が重視されます。
しかし大企業になると大卒以上に限っているケースも多いです。応募者が多いから絞る必要があるわけですね。
本稿では大卒以上の教育を必要としないのに、大卒以上の学歴を条件とする仕事が多いという問題が挙げられています。
大学へ行くことだって教育を受けることです。つまり教育さえ受けられれば、学歴が低くてもスキルは伸ばせるのです。また適性があるのに学歴を理由に向いている仕事に就けない人がいたら残念です。
かくいう私も落ちこぼれであるがために仕事が選べず、苦しい想いをずっとしてきました。
学位や職務経験よりも適性で採用する
本稿では企業や自治体、大学が組んだ事例も紹介されていますし、企業が独自に取り組んだ事例も紹介されています。
職種毎に必要なスキルを洗い出し、その職種に就くための条件を学位や職務経験ではなくスキルに変えるという話が出てきます。
アプレンティスシップ(職業実習制度)やインターンシップなどで、適性のある人を受け入れて育てるという話も出てきます。
学位や職歴がない人をいきなり採用するのは難しいです。しかし仕事は学位や職歴があるよりも、向いている人の方が後で伸びてきます。
そういう意味では、多くの人が向いている仕事に就けるといいですね。そういう受け皿を作って人材を確保するわけです。
ただし適性の見極め方は職種によるので、本稿では特に解説されていません。受け入れて実習することで見極める必要があるのかもしれません。適性の見極めが悩ましいところです。
私自身が落ちこぼれで仕事を選べなくて苦労したので、私は学位や職歴が不十分で仕事を選べない人を雇って育てる会社を作ってみたいと考えています。またはこういう人たちをプロボノで育成するかですね。
障害者の雇用は競争優位の源泉となる
障害者雇用によって企業の競争力が上がる
障害者雇用は大企業だと特例子会社などを作ってやっていますね。しかし単純作業が多く、ほぼ最低賃金という現実があります。
本稿では障害者を活用することで、健常者よりも高いパフォーマンスを発揮してもらい、競争優位を構築できるということが紹介されています。読んでみて驚きが沢山ありました。
発達障害を持つ人の活用の事例
昨今では発達障害という言葉をよく聞くようになりました。ASD(自閉症スペクトラム)は本稿にも出てきます。
ASDはパターン認識に優れているため、データ分析をして相関関係や相互依存性を見つけるのが得意であるとされています。
またASDは対人関係は苦手でもスペシャリストとしての能力が高いことが知られています。データ分析意外にもプログラマーに向いているという話もよく聞きますが、それはIT業界に長くいる私もよく解ります。
また昨今は品質管理やサイバーセキュリティにもASDの人が活用されていると本稿では解説されています。
発達障害でASDと並んでよく知られるADHDについては本稿では書かれていません。しかしADHDは発想力が高くて企画に強いという話も聞きます。
身体障害者の活用の事例
身体障害者の活用の事例が特に驚きでした。
ショッピングモールのカスタマーサービスを身体障害者に任せるそうです。こういうところに来る顧客は怒っている場合が多いですが、相手が障害者と解ると落ち着くそうです。
また身体障害者を警備員にしているという事例も出てきます。身体障害者は車椅子を利用しているわけですが、足が不自由な分を上半身で補うために、上半身を鍛えている人が多いからだそうです。
走って逃げる犯人を普通の店員が走って追いかけるのは体力的に辛いです。しかし電動車椅子なら疲れずに追いかけることができます。
いずれ犯人の方が疲れて止まるでしょう。そして上半身の筋力が普通の人より強ければ、犯人を捕まえるのも普通の人より楽にできるというのです。
身体障害者は目に見えて解る不便を強いられているため、世間一般では守らなければいけない人とというイメージがあります。しかし実は意外な強さがあるという話を読んで驚きました。
障害者をチームに入れることのメリット
会社という場所はどうしても同僚との出世競争があります。時には上司を追い抜いて出世する人もいれば、後輩の方が立場が上になってしまうこともあります。競争がどうしても付き物です。
自分の給料がかかっているため、他の人に負けないように結果を出す必要があるのが会社という場所です。
しかし障害者がチームに入ることで、競争が緩和され、協力し合う習慣や態度を従業員が身に付けていくのだそうです。そして心理的安全性や文化が高まったと従業員が感じるようになるのだそうです。
また障害がある従業員は他者への共感のレベルが高く、カスタマーサポートにも向いているそうです。顧客は障害者と話していると知らなくても、満足度が高まるのだそうです。
障害者雇用がDEIにつながる
DEI(Diversity, Equity, Inclusion)は日本ではまだ女性活用のことを指し、欧米では有色人種やLGBTQ+のことを指します。
しかし本稿を読むと、それらに加えて障害者を活用することで本当のDEIになるのかなと感じました。
障害と言っても、普通と大きく離れているから普通じゃないという扱いなのです。だったら普通じゃない特殊な部分を活かせばいいのだと思います。
もちろん障害があるとハンデがあって不便をするので、そこは補わないといけません。ここが大変だから障害者雇用を避ける企業が多いのでしょう。
ここでふと思い出しました。日本で一番大切にしたい会社という本があります。好業績で従業員満足度が高く、残業も少ない会社が紹介されている本です。
実はこの本に登場する会社の多くは高齢者や障害者を雇っています。80代とか90代の社員がいる会社も登場します。障害者雇用に関しても、身体障害者も知的障害者も本の中に登場します。
障害者に優しい会社を作ると、多くの人にとって優しい会社になるのだそうです。
これもまたDEIじゃないでしょうか。
従業員のリスキリングを効果的に実践する方法
リスキリングの有効性
昨今はリスキリングが叫ばれるようになりましたね。国も力をいれたいようで、雇用保険を使った制度ができるという話を聞きました。まぁまだ国の制度レベルでしょう。
しかし本稿では国の制度としてのリスキリングではなく、先進的な企業が自社内でリスキリングを実施している例が出てきます。
自社にとって必要なスキルを持つ労働者を集めることは、必要でありながら大変なことです。まして人手不足な昨今では尚更大変です。また求人広告や人材会社への紹介料もかかります。
それよりも必要なスキルを自社で教育した方が速くて簡単という考え方もあります。ただし実践レベルまでが遠いようにも感じます。
リスキリングの前に自社の職種に求められるスキルの洗い出しが必要
本稿ではスキルタクソノミーという各職種で求められるスキルを詳細に記述したものを作ることが紹介されています。
「優れた人材を採用したければ学位よりもスキルを重視せよ」でも職種に求められるスキルを詳細化する話が出てきました。
やはりまずは自社にとって必要な仕事を分析することですね。そして必要なスキルを詳細に洗い出すのです。
リスキリングと言っても、ただ学べばいいわけではありません。何を学ぶかが重要です。
国が実施するならITや介護など人手不足業界に就職するためのスキルになると思います。
しかし企業が実施するとなると、自社にとって必要なスキルでなければ、教育投資に対して元が取れません。だからまずは自社の仕事に必要なスキルの洗い出しです。
Amazonは驚くほどリスキリングに投資しているそうです。リスキリングやキャリアコーチングの制度を充実させ、職種転換を可能とし、大学を出ていない従業員は学士号を取れ、各種資格の取得も支援しているそうです。しかも費用は全額会社持ちです。
驚きの充実度ですが、Amazonは儲かっているからできるともいえますね。
リスキリングは実践と反復も必要
リスキリングをする上での注意点も本稿では解説されています。
先ほども書いたように、職種ごとにスキルが明確化されているからこそ、従業員も興味が持てる職種にチャレンジしやすくなります。
またリスキリングはスキルを身に付けることですので、座学だけでなく反復練習が必要です。そこでシャドーイング(先輩に同行して学ぶ方法)や社内見習い制度、試用期間制度などを使うそうです。
知識だけでなく反復して熟練することも大事にしましょう。講座だけやって終わり、資格だけ取らせて終わりなんてことが横行しそうな気もします。しかしスキルは実践と熟練が大事です。
終わりに
今月号では組織文化から始まり、人材活用、障害者雇用によるDEI、リスキリングと昨今求められていることが解説されていました。
人に興味があるマネージャーにとって、今月号は面白いかもしれません。
私も人付き合いを大事にしているくらいですので、人に関するテーマは興味があります。やはり自分の案件に入った人には、何か身に付けてもらいたいですし。
マネジメントをやる上で人は欠かせません。そして強力な人がいればいるほど仕事は上手く回ります。
よって人を育てることや活かすことを大事にしていきたいものですね。
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