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【論文読了】マネジメントの現在・過去・未来

ハーバード・ビジネス・レビューがなんと100周年なのだそうです。ハーバード大学はこんなにも長く実務家向けの論文集を出してきたのですね。

マネジメントの歴史について論文がたっぷりあるほか、CEOや学者の意見もあります。時代の流れも感じられます。

それでは順番に振り返ってみましょう。

共創を実現するリーダーシップ

集合天才(コレクティブジーニアス)という言葉はDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューで読んだ気がします。

1人の天才が新しいものを生み出すのではなく、リーダーシップによって多くの人の力を集めて、天才のような力を発揮するということですね。これなら個々人の得意なことを活かして実現できそうに思います。

そしてこれを拡張したスケーリングジーニアスというものがあるそうです。3つの役割があって、建築家(architect)、橋渡し役(bridger)、触媒(catalyst)の3種類で、頭文字をとってABCです。

建築家としてのリーダーは、組織の仕組みや業務のオペレーションを作り、従業員のマインドセットや行動を作る人です。これは私にできそうです。システムの仕事でマネジメントをやっている人や、管理職の人は想像が付きやすいかもしれませんね。

橋渡し役はその名の通りつなぐ役ですね。部署や組織や会社の壁を越えて協業する人です。従業員にそれをやってもらうのはハードルが高いとのことですが、よく解ります。視野の広さも必要ですし、こんな面倒事を進んでしたい人は少ないでしょう。

私は複数企業と共同で進める仕事を長年やっているので、意外と苦にならなそうです。社外の人と一緒に仕事を進めている人は得意そうですね。

触媒はコラボを基に共創を加速させる人のようです。橋渡し役は広く色々なステークホルダーをつないだり調整したりして目的を達成する人ですが、触媒は広くというより、目的に合った関係者をつなぎ、特定の能力を強化するというようなイメージに感じますね。

これらはどれがいいと言うよりは、どれも役割が違います。だから状況に応じて使い分ければいいかなと思いました。

組織が成功するために必要なこと

現在の企業の組織構造、すなわち経営陣をトップとして管理職がいて、その下にメンバーがいる階層型組織は工業化の時代にできました。変化が少なく、予測が立ちやすい時代です。

しかし現代はもうVUCAの時代と言われます。変化に柔軟に対応できることが重要なのです。そんな状況では工業化時代の組織構造では難しいところがあります。組織よりチームの時代であり、柔軟性が必要なのです。

これからはコアコンピタンスを新たに獲得したり、時代に合わなくなったコアコンピタンスは諦めるという選択も必要になるようです。獲得は特に気を付けなければいけませんね。会社も個人も必要です。

もう長期計画を立ててそれを守る時代ではありません。私はマネジメントに携わる者として、臨機応変なマネジメントを実践しています。柔軟性があって臨機応変な対応ができるチームや方法論が必要なのです。

HBR100年から経営課題の変化を読み解く

ハーバード・ビジネス・レビューの論文を100年間分析した結果について書かれています。

ハーバード・ビジネス・レビューが創設された年から1980年代まで、オペレーションと財務・会計に関する論文は減り続け、今では少なくなっているようです。

会社内で見ると、オペレーションや財務・会計ができる人は立場が強く感じますが、論文としては、戦略やマーケティングの割合が増えています。VUCAの時代となり、新しいものを生み出し、顧客を開拓する必要がある時代を反映していますね。

組織と人事に関する論文は変わらずのようです。

こうしてみると、ハーバード・ビジネス・レビューがビジネス界のニーズに合わせた論文を提供してきたと感じます。もちろんビジネス界の現状と比べ先を行っているとは感じますが。

私がDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューを読み始めたのが2011年だったと思います。読むようになってから、ビッグデータやブルーオーシャン、オフィスの生産性・創造性、多様性など流行となるテーマをいつでも仕入れることができました。

ハーバード・ビジネス・レビューは実務家にとって、マネジメントの先端を常に知ることができる便利な雑誌なのです。

よい仕事とは何か

最初に自分のお店を持つ人がこだわりについて無限に話せてしまうという話が出てきます。こういう人は自分の仕事を愛しています。こだわりを持ち、語りたいことが山ほどあるのですね。

よい仕事の定義は人それぞれ違うかもしれません。本稿では正当な報酬が支払われ、本当に得意と感じる仕事だそうです。

一般的には下記のようなものが多そうですね。一度ワークショップをやってみたいです。

  • 好きなことができる

  • 給料や福利厚生に満足できる

  • プライベートと両立できる

  • 上司や同僚に恵まれている

  • 会社の知名度や肩書きなど所属に満足できる

  • 社会的意義を感じる

  • やりがいを感じる

  • 自分の能力や特技を活かせる

  • 性別や人種などによる差別がない

私にとって良い仕事とは、顧客から自分の知識が必要とされ、自分の能力と裁量で何でもできて、顧客に貢献できる仕事ですね。仕事内容に対価が見合っていることも必要です。

本稿で重要なのは、良いストレス(ユーストレス)と悪いストレス(ディストレス)があること、そしてどんな仕事でも好きな部分とそうでない部分があり、100%好きなことだけできる仕事はないということです。

企業がこれからの社会で担う役割

企業がどんな美辞麗句を並べようと、自社株買いや配当金に多くの資金をつぎ込んでは矛盾しています。雇用にとっての最大の脅威はAIと言われますが、実は投資の欠如だそうです。

経営陣や株主のための経営ではなく、ステークホルダー全員のための経営をするためにはミッション・エコノミーというものが必要と説いています。

こういうことをやろうとすると、方向性を示して、ステークホルダーと対話してコラボしていくことが必要です。

こうなってくると仕組みも必要ですし、とてもタフな調整を続けないといけなそうですね。自らそれをやる立場を買って出ればいいだけかな。

女性の地位はこの1世紀でどう変化してきたか

1953年にハーバード・ビジネス・レビューは初めて女性がビジネス界で直面する問題を取り上げたそうです。

まだ女性は事務作業を中心としたサポート的な仕事が中心だった時代です。女性の仕事は事務作業、出世するのは男性というのが当時です。そういう時代柄もあって、女性がどれだけ頑張っても評価は評価する側次第、すなわち好かれているか否だと指摘したそうです。

しかし同時期に別の論文で、夫が出世するためには妻が夫の長時間労働や転勤を受け入れ、後押しすることが必要であるという指摘も出たそうです。20世紀の働き方をよく表しているともいえるでしょう。

その論文ではさらに、夫が出世するにつれ、身分相応の新しい人に出会うことで、新しい妻を迎えるか今の妻を捨てることになるかもしれないとすら書かれていたそうです。

酷い書き方とはいえ、社会的な立場が変わることで付き合う人を変えてしまうことが人には起こりえます。本当は支えてくれた人を大事にした方がいいと思いますけどね。

その後1960年代と1970年代では並外れた女性だけが成功できる時代、1980年代は男女の雇用機会均等が目指された時代となります。1990年代は労働力に占める女性の割合が高くなると同時に、マミートラックのような問題も発生します。

21世紀はもう女性が男性同様に専門職や総合職で働き、管理職に就くことも普通になってきました。とはいえまだ比率でいくと男性の方が多いでしょうけど。

読んでいると、ハーバード・ビジネス・レビューは男女のキャリアについても早めに指摘してきたようです。1978年にセクハラが登場したり、1989年にワークライフバランスを取り上げたりと、日本の企業社会より20~30年は先を行っていますね。

ここ10年でも、ハーバード・ビジネス・レビューでは女性や有色人種のキャリアに関する論文が出ています。メンターの問題、社会的ジェンダーによる自信の差などですね。

私個人は異性の友達も普通にいるので、男女で仕事の能力差はないという考えです。むしろ性差のほとんどは社会的なものだという考えです。

しかし近代までは肉体労働が中心で、20世紀までは長時間労働が普通だったので、仕事の中心が男性になっていたんだろうなと思います。もうそういう時代じゃないので、体力勝負でなければ男女の能力差なんてない、あるのは個人差という考えです。

ちなみに女性の政治家や役員が女性ならではのきめ細やかな気配りでとアピールするのも社会的ジェンダーという考えです。女の子は周りに気を使ってお行儀よくしなさいと子供の頃から教えられている人は少なくでしょう。

そういう社会的ジェンダーギャップにより、女性の方が自信が少ないことがハーバード・ビジネス・レビューでも指摘されています。

まだ前例とかロールモデルという点で女性や有色人種、さらにはLGBTQなどの人たちが活躍できる土台が未熟ではありますが、私自身はそういう理由で差をつけたりせずに接するように心がけたいものです。

終わりに

100年の歴史は凄いですが、ブレないことも凄いです。ハーバード・ビジネス・レビューは常に実務家の問題を解決する知識を提供してきたのですから。

私自身もハーバード・ビジネス・レビューを読み続けることで、流行のマネジメント手法やテクノロジーをキャッチアップできることがありがたいです。

特にマネジメントに関しては、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されるネタは日本の企業社会の5年くらいは先を行っていると感じます。

これからもマネジメントの追求のために読み続けたい限りです。

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