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映画 さがす

〓2022年3月10日に川崎チネチッタで観賞。

突然消えた父親をさがす楓に届いた一通のメール。

お父さんをさがさないでください、元気でやってます。

この日観た5本のなかで一番刺激的で舌を巻いた作品。

話題を集めた岬の兄弟は先入観が邪魔をして未観賞(見たくないものから目を背けた)

人間の本性、片山監督から目が離せない。

名匠ポン・ジュノに師事した片山慎三監督(同い年!)の長編、商業映画デビュー作。

“シリアスとコメディは同じ地平にあると思っている”

失踪した父親・原田智役を佐藤二朗さん。

父親を“さがす”娘・原田楓役は主演作“世界の終わりから”がもうすぐ公開される伊東蒼ちゃん。

映画・空白の添田充(古田新太さん)の娘役。

空白では思春期で父親との関係や学校生活に悩む大人しい女の子の役だったが、本作ではおてんばなじゃじゃ馬娘。

飾らない、普通に周りにいそうな可愛さ。

それが一番難しい。

一般的に娘は父親に似るっていわれてるのに…って思いながら観てました笑

山内照巳(名無し)役は清水尋也くん。

映画・怒りの森山未來くんが頭に浮かんだ人も多いのでは?

最後の被害者ムクドリ役は森田望智ちゃん。

“指名手配中の連続殺人犯見たんや、捕まえたら300万もらえるで”

翌朝、父親の姿はなく、そのまま消えた。

物語は大阪の西成からはじまる。

予告だとおてんば娘、大阪・下町のじゃじゃ馬娘とサイコキラーとのどたばた鬼ごっこ。

いわゆるどたばた劇的なコメディ要素ありな作品かと思って観たら…騙された!

追いかけっこには違いないが、待っているのは衝撃の展開。

動いてる人間は駄目、縛られた姿、したたり落ちる血、靴下。

条件が揃えば老人(男性)ですら興奮してしまう。

殺人のあとにすぐに逃げずに食事、アイスを食べ、ネットをする、爪を噛む癖、日雇い生活をしながら西成に潜伏、離島、SNS(Twitter的な)で自殺願望者をさがす、殺す、古いコーポ二階の角部屋、クーラーボックス。

猟奇的で異常性の高い事件の犯罪者の特徴、異常さ、性癖を集めて作られたような怪物(モンスター)

古い事件だといまだ未解決の世田谷の事件、自分が小学生のときに世間を騒がせた神戸の猟奇的殺人鬼、さらには千葉から西成や沖縄の離島まで逃亡生活を続けた殺人犯、最近だとSNSで知り合った自殺願望がある女性を池袋のラブホテルで殺害した事件、座間の連続殺人事件。

SNS、ユーチューバー、日本の病み、現代の闇、社会の闇。

サイコキラーは饒舌で口が上手い。

かつ優しい…が。

所詮は快楽のための詭弁、自らの欲望、性癖を満たすための方便でしかない。

目的や下心がない優しさなどそうそうあるものではないのだから。

“他の奴は本気で死にたい奴なんか一人もいなかった、いざとなったら死にたくないと騒ぐ”

サイコキラーの9人目の被害者へのセリフ。

ASLという病気も出てくる。

智がSNSで知る本音。

命、人間が生きているということ、尊厳。

映画とは関係ないが、相模原の事件などいろんなことが頭を駆けめぐる。

ふとした瞬間、何気ない瞬間に垣間見える人間の性や本性、本能のようなもの。

それこそが人間らしさともいえる。

“さがす”タイトルに込められた本当の意味は観たあとに。

この物語にはダークヒーロー的な側面もある。

靴の裏にこびりついたガムのように離れない罪。

それは男のなかの正義なのか?

ラストの終わらないラリー、この幸せがずっと続けばいいのに…彼は心の底から思っただろう。

クーラーボックスに入ったビールのシーン。

あれは人間に絶望している名無しが見せた、唯一の人間らしさだったのだろうか?

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