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売れる企画は、一般的なマーケティングリサーチからは生まれない

"(中略)このように世間の常識やライフスタイルを変えたiphoneは、2007年に市場に投入されるまで、入念な市場調査と何万人ものユーザーニーズアンケート調査やグループインタビューを経て産まれたのです”

突然ですが、かのスティーブ・ジョブスが生み出したiphoneですが、上記のような逸話が残っているそうです。


・・・嘘です


超大嘘ですw


内部事情を知ってるわけではないですが、おそらくそんなわけないです。

なぜなら、世の中を変えるような新しいプロダクトや、驚かせるような企画、かつ売れる企画は、決して一般的なユーザー調査からは産まれないからです。


アンケートや調査結果は上司の許可を得るためだけのツールにすぎないということ


自分もマネージメントの立場になって数年。ふと、日々のメンバーの企画案に「それ、ユーザー調査したの?」とか「コンセプトテストやってみようか」などと言いがちなことに最近気づきまして、自戒の念を込めて今日はこんな記事を書いてみます。


現在所属している会社は、ユニークな企画や商品を生み出すことで定評のある会社でした(過去形)。ところが近年、過度な市場調査やアンケート志向、さらには全く使えないデザインシンキングというバズワードに踊らされ、振り返ると、近年はほとんどそういった商品や企画は非常に薄くなってきました。薄くなったというよりは、小粒というか猿真似というか。
手堅くバットを短めに持ってフルカウントで粘った挙句、ボテボテの内野ゴロといった具合です。


私も、現役の企画者や開発をやってた頃を振り返ると、1アイテムあたりで数百万枚とここ数年で最も累計数量を販売した商品を作ったり、今でも継続している企画やプロダクト、デザインを生み出してきました。(その背後には死屍累々の失敗がありますが)

私以外の素晴らしい同僚も様々な「売れる」企画やプロダクトを作られた方もおられます。
最近、自社のそういう「超売れた」企画やプロダクトをリストアップして、開発や企画手法を自分と他人含めて整理してみると、1つとして市場調査やアンケートありきで作ったものはないということに気づきました。

他社もかも、と思っていろいろ調べてみたり、想像した結果。結構同じかもしれないと思ってきたのです。冒頭のiphoneの大嘘もその時に気づきました。

でもなぜ、僕たちはアンケートやユーザー調査をしてしまうのか?そしてユーザー調査って意味があるの?という疑問が出てきます。


アンケートやユーザー調査に集まった消費者はテキトーで嘘つきだ


ま、これですね。「売れる」または「面白くて売れる」企画がユーザー調査から出ない結論はこれです。

以前の記事に、企画は誰でもできる、普段からやってるんだよ。と言いましたが、それは自然とユーザー目線だからですね。ところが発信者側になると突然できなくなる。ユーザー側に立てばすぐ解決する話なのに。

じゃあ、ユーザー調査にくるユーザーの気持ちに立ってみましょう。

・ある日突然、知ってる会社からユーザー調査の案内がくる。ちょうど暇だったし、謝礼も入るということで承諾する
・やや寝坊して、多少遅刻し、まあ会社見学という軽いノリで会場に着席。普段とは異なる特殊な緊張感のある空気を感じる
・眼前には、あまり食べたくないお菓子と、これまた普段飲まない常温のペットボトルの緑茶やコーヒーなどが並び、目の前にはこの会社の人間ではないと白々しく前口上を述べる謎の質問人と、その背後には議事録を取るために配備されたと思われるタイピング速度だけはやたらと早い事務処理能力評価が高そうな、表情を忘れた若手社員
・会場の一部に録画用のカメラや録音用のマイクが分かりやすく設置。リアルタイムで別室でこの内容をニヤニヤしながら見てるんだろうなということを先週見たバラエティ番組のドッキリの仕掛け人を思い出してやや機嫌が悪くなる
・この調査終わりで予定入れている美容院でどんな髪型にするかということをこの調査時間の中で考えることを主眼とすることを心の中で決めて、適当にあいづちを打ち始める
・突然出された謎の商品的なプロトタイプや、コンセプトが書かれた書類、いくつか選択肢の用意されたグラフィックデザイン、、選べと言われ、完全に適当で選ぶ。理由は?と問われ、「何となく・・」と言うとちょっと悪い気がするので、全くそうは思ってないが適当な理由をひねり出す。
・最初は適当な回答にちょっとは罪悪感を感じていたが、2、3度経ることでそれもなくなり、とりあえず選択は真ん中を指すことと、その理由は右側のものをディスるというパターンを作って、あとは別のことを考える


これ、意味ある???


そして、そういった個々の素人の適当なジャッジが、その会社の命運を分ける調査の結果として、共有され企画に生かされていく


完全に時間の無駄では


そもそも人は、そんな会場にいる心理とナチュラルで商品を選んでいる心理とは全く違うし、人間は過度に新しいものにはアレルギーを無条件に出してしまうものです。

おそらくアップルがiphoneのテストとしてユーザーインタビューしたとしてもこんな感じでしょう。

・アップルの人「タッチパネルで物理ボタンの無いケータイ欲しいですか?」
・ユーザー「いらない。別にパカパカケータイで満足してるし、見ないでメール打てるほど物理キーを指が覚えてるし」
・アップルの人「電話とブラウザと音楽とカメラが一緒になったモバイル欲しいですか?」
・ユーザー「・・・・・」「ええと、うん、まあいいんじゃないですか(新しすぎて想像できず頭がパニクって適当に答える)」


間違いなく、iphoneの企画の最初はスティーブ・ジョブスの閃きでしょう。


売れる企画の根本は、まず自分が心の底から欲しいかどうか


結論というか答えはこれです。

前回の記事でも触れましたが、企画脳とは右脳から初めて左脳→右脳と行き来する方が効果的です。

まず最初は企画者が、自分の経験や感じたこと、原体験や原風景を元に企画の骨格や世界観を作るのです。思いつきと思われてもいいのです。アウトプットのプロセスは何だっていいのです。面白くて売れれば。ただ、それは不安との戦いです。
しかし、売れる企画を作る人間は、思いつきやヒラメキと思われる背後で、莫大な知識を持っていますし、インプットする努力を行ってます。


売れる企画の最初の第一歩は知識を蓄えまくる ということかもしれません


知識という背景があるからこそ、自宅のシャワーとかでたまたま「思いつく」のです。知識もなく思いつくのはただの天才だけです。

ですので、知識を普段からかき集めている人は不安になることはありません。それは堂々とした売れる企画を生み出す正しいプロセスです。

アンケートにこだわる人間は、おそらくその不安が嫌だから、逃げたいから免罪符のようにそれにこだわることも多いのではと思います。「お客様の声がこうですから」と、あたかも数人の声を全体の声と勘違いさせるかのごとく発言して、自分含めて組織全体を思考停止にしていく。
大変危険なことです。

そんなしょうもないことよりも、考えている自分が一番欲しいかどうか、自分が気づいた世の中の不安・不満・負担を取り除けることができるのなら、自分は◉◉◉円出しても買う、いや3倍出しても買うね!と思えるかどうかを基準にしましょう。発信者が一番強くなければ社内の賛同は得られませんし、ユーザーの反応なんかあるわけありません。

もし、アンケートや調査を使うなら、それを左脳で肉付けしたりちょっとし軌道修正するために使いましょう。
たぶん最も一番いい使い方は、実際に企画やプロダクトが世間に出てから、自分が思った通りの使われ方や使用メリットを感じてもらってるかの「答え合わせ」に使うことが一番いいと思います。


デザインシンキングは使えない。やってる人、すぐに止めた方がいいです


最後に世の中で流行しているこの考え方を、自分がやってみた経験をもとにディスって終わりにします。

百歩譲って、使えるのはwebサービスの一部やUIテストくらいでしょうか。

少なくとも企画やプロダクトには全く使えません。日本でこの考えを布教している全く使えない(本当に使えない、講師や社員も全く低能かつハッタリばかりでびっくりしました)コンサル会社の研修を受けさせられたり、別途デザインシンキングの本場であるアメリカのIというデザインコンサル会社の偉いさんの1日研修(全編英語)も自ら志願して受けましたが、結論としては「使えないな」の一言です。

よくデザインシンキング実例で、CTスキャンの子供用プロダクトで、子供を泣いたり不安にさせないために、スキャンの外部内部に楽しい絵を描いて不安にさせない。そのプロダクトのおかげで凄く売れた。というエピソードを語られるのですが(私もIの研修の一発目で聞きました)。


子供用CTスキャンを作ろうって考えたら普通に誰でも考えそうなことじゃねーか?


何がデザインシンキングだ(怒)と開始10分でメモ取るのやめた記憶があります。

あと、デザインシンキングの手法論の一つにプロトタイプを早く作って、早くユーザの声を聞いて、早く修正して、また聞いて、また修正して、、、というサイクルを繰り返すというパターンがあります。

ということを繰り返すと、あら不思議。企画した時は「面白いな、売れそうだな」と思ったアイデアも、「どっかで見た企画」「何がいいのかさっぱり焦点がボケた企画」になるのです。

でもこれ、当たり前です。

そもそもプロで無い素人に聞きまくっても、思いつきやどこかで触った聞いたありがちなことをベースにしゃべるし、そもそも新しいものって実例が側にないとイメージも判断もできないからディスって終わりだし。

で、結果的に、くだらない意見と自信を喪失する発言を聞いて、どこかの誰かがやっていたことの二番煎じができていくというシステムです。オレ的には全くいいと思わないけどユーザーの声だからこれが正しいんだな、うん、となる。(ここで思考停止、負け確定)

実際に私も研修に参加して、このシステムに入り込んで、本当にくだらない企画ができてしまい、途中から止めたくなり、適当に研修を終わらせました。結局この研修からは何も生まれなかったですね。あゝ時間がもったいない。大後悔しました。


売れる企画のつくりかたについて、まとめます

1、限られた条件でのユーザー調査、アンケートなどは基本信じない。絶対に最初からやらない

2、自分の素直な思いつきや閃きを大事にする

3、でもそのために、知識は山ほどインプットしておく。その背景があるから閃きは根拠のある閃きになる

4、自分が客なら3倍の価格を出しても買うかどうかが基準

5、調査するなら、市場に出したあとの答え合わせに

6、デザインシンキングはくだらない企画を量産するシステムだから決してやらないこと

現場からは以上です。

オレも連休明けから、意識を戻そうっと。



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