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ノンフィクションを物語でくるんだら敷いたばかりのシーツのように肌触りよくならんかな、と思い立ち。
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さっきからロイヤルロイヤルうるさい

さっきからロイヤルロイヤルうるさい

何となく電車に乗って終点駅の知らない街にやってきた。特に用事はなかったけれど、せっかく来たのだからどんな場所か見てやろう。そんなつもりでいた。

改札を出ると目の前に小さなフードコートがあった。軽食のテナントがいくつか並び、たくさんのイスと机が並んでいる。中途半端な時間だったこともあるのか、食事をしている人は見当たらない。学生がノートを広げて勉強している姿が目立つ。

お店を何となくながめて、パン

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焼き芋論争の行く末、街角の3分間事件簿

焼き芋論争の行く末、街角の3分間事件簿

午前中の仕事を終えて、お昼ごはんを求めて街に出た。自転車にまたがると、すぐに公園で遊ぶ子供達の声が聞こえてきた。

日があるうちは暖かいが、日陰は寒さが気になる。すっかり秋めいてきた。そんなことはお構いなしに、飛び跳ねる子供達のエネルギーがうらやましい。

団地の角を曲がると、石焼き芋の移動販売車が止まっていた。この秋、はじめて出会った季節を感じる車だ。

見れば、そのかたわらで杖をついたじいさん

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深夜そば、うどん

深夜そば、うどん

深夜の立ち食いそば屋は、おばちゃんがネギを刻む音とラジオの音だけが聞こえた。音の邪魔をしないよう「春菊、そばで」とだけ伝えた。

そこへ道路工事の警備をしていた小柄のおじいさんが入ってきた。

おじいさんは券売機の前で「何にするかな?」「これは押せばいいの?」「セットはないの?」と矢継ぎ早に質問した。

すると、おばちゃんはなにか面倒くさそうに「はい」とだけ答えた。一体何に対するYESだったのかわ

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隣席でいい大人の息子と母親がもめている。

隣席でいい大人の息子と母親がもめている。

カフェの隣席でいい大人の息子と母親がもめている。すぐ隣でなくとも聞こえる大きな声だった。

横目でちらちらと確認しただけだからわからないけれど、いい大人の息子は子どもっぽい口ぶりではあるものの、たぶん30才目前ぐらいだろう。子どもっぽい口ぶりは母親の前だからかもしれない。

息子、母の再婚を嫌がる。いい大人の息子は劇団員のようで、その母親は近く再婚するらしい。再婚相手はいい大人の息子を嫌っていて、

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