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【本115】『傷を愛せるか』

著者:宮地尚子 出版社:ちくま文庫

トラウマ研究の精神科医・宮地尚子さんのエッセイ集。旅先や留学先での出来事、アートや日常の風景や経験を切り取り、優しい言葉で綴っています。

きっとこのエッセイを読むと、じんわりと心に響く風景が、どなたにもあるはずです。今の私には「張りつく薄い寂しさ」がずんと心に残りました。

「剥がしても剥がしても張りついてくる薄い寂しさのようなものを、わたしたちは今抱えている気がする。人の価値が下がっている。」

社会人も学生も、そして、子どもたちも、急いで急いで生きていて。やっとつかんだ「成功」にさえも、その影に剥がれゆく大切なかけらが見え隠れしています。幸せとはなんだろう。精神科医としての社会への嘆きが聞こえてきました。

心の傷は目に見えない。でも、私たちは傷とともに生きていかなければならない。傷があることを認め、前に進む静かな勇気をもらえる本です。

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