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「ブルーフライデーの教え」と「ジャズが促すもの」

毎月の最終日曜に放送している「村上RADIO」を聴きました。

今回のテーマは「歌うジャズ器楽奏者たち」。ケニー・ドーハムが出てくるとは思いませんでした。ジャズに詳しくない私でも彼の名前は知っています。↓をよく聴いているので。

漫画「MASTERキートン」のおかげで知りました。予定のない週末の悲哀がやんわりと伝わってきませんか? やっと仕事から解放され、心が浮き立つ。次の瞬間に現実に気づき、笑顔が凍りつく。でもそこから何かを察したように孤独の川へ足を浸し、やがて周りの風景や聞こえる音を静かに味わう。繁華街のバーやカフェで。

決して悪い意味ではない「諦め方」もある。そんなことをこの曲と演奏に教えてもらった気がします。

ジャズ・ヴォーカルでよく聴くのは↓です。

チェット・ベイカー。彼の歌うこの曲を知ったきっかけは、1999年に公開された映画「リプリー」です。アラン・ドロン主演のヒット作「太陽がいっぱい」のリメイク版。ディッキーの設定をジャズミュージシャン志望へ変えたのがホームランでした。

マット・デイモン演じる貧乏学生リプリーは、ジュード・ロウ演じる大富豪の御曹司ディッキーの気を惹くためにジャズを聴きまくり、中性的な声で「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を歌います。そしてディッキーは彼に意味深な視線を送り、トランペットの演奏を合わせる。

危うい関係性を伝えるメタファーとして秀逸のワンシーンでした。

映画を見てからパトリシア・ハイスミスの原作を読むことをオススメします。罪を免れるために辻褄を合わせる細かい綱渡りのリアリティに背筋がゾクゾク。いけないものを覗き見ている昂揚感すら覚えました。

ジャズは聴く人の内に潜む物語の芽を刺激し、創作行為へと促す触媒かもしれない。もっと触れてみたいです。

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