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「『探す』を探す旅」のお伴

おはようございます!!! 書評行きます!!!

「にげてさがして」 赤ちゃんとママ社 2021年出版 ヨシタケシンスケ著 48P

(以下は読書メーターのアカウント https://bookmeter.com/users/49241 に書いたレビューです)

初プレイのドラクエやFFで一度も逃げずにクリアした人はいるのだろうか? あえて逆境に踏み止まる決意は尊いけど、徹頭徹尾内発的なものであるべき。RPGと違って現実は死んだらそれまで。だから先の戦争の特攻志願みたいな「本音を口に出せないように圧迫する」空気は世の中からなくなって欲しい。そんなの読まなくていい。ひとつしかない命の使い所を誤ったらもったいない。ただ肝心なのは逃げた後。「探して」を続けよう。妥協ではなく折り合いあるいは直観。これならできる、やってみようかなと胸躍る場所がきっと誰にでもある。楽しもう。

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2006年、現役引退を発表したあるサッカー選手が「自分探しの旅に出たい」と心境を語りました。

過酷なプレッシャーの中で長年戦ってきた彼がようやくそこから解放されるという間際に発したこのフレーズ。いま改めて見ると、安易な賞賛も否定も拒む、積み重ねたものに対する静かな「矜持」を感じます。

当時の私はそれを理解できず、「何それ?」という冷笑的な姿勢でした。休みが月2~3日の過酷な職場で働いていたころなので、余計にそう思ったのでしょう。あとアニメ「マクロス7」における主人公・熱気バサラの一言を真っ先に連想したことを覚えています。

「本当の俺? ここにいるよ」

いまここにいる自分だけが自分ではない。そんな野心の芽は私の内にもしれっと潜んでいます。俺はこんなモンじゃないと。でも同時に「こんなモン」であるリアルタイムの己を受け入れることから始めないと、理想と現実のギャップに耐えられずに潰れるとも感じています。

最近になって気づきました。ふたりは正反対のフレーズで同じことを言っていたのだな、と。

自分を「こんなモン」に留めている何かから逃げることで、意外な自分に出会えるかもしれない。逆に「こんなモン」である己を受け入れることからも、新たな楽しみを生み出せるかもしれない。ケースバイケース。いずれにしても一歩前へ進むために大事にすべきは、ここにいる自分の「思い」です。そして「思い」の正体を確かめるには「逃げる」だけでも「受け入れる」だけでも画竜点睛を欠く。そう、「探す」がキーになるのです。

「何を探すか?」を探す旅のキッカケにこの絵本をぜひ。のんびりでいいじゃないですか。クエストは行き着くまでの過程が何より楽しいんですから。




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