かえるん

二十代のフリーター。小説、エッセイ、詩、批評、色々書いてます。

かえるん

二十代のフリーター。小説、エッセイ、詩、批評、色々書いてます。

最近の記事

光と影の物語ーバッハのコラールとピアソラのタンゴー 感想編

1.はじめに  1月10日。JMSアステールプラザのオーケストラ等練習場にて、19時から1時間45分ほど行われたコンサートに行ってきた。ヴィオラの赤坂智子とアコーディオンの太田智美、そして、作曲家の細川俊夫、この3人からなるコンサートだった。コンサートは、ヴィオラとアコーディオンのデュオで、題名の通り、バッハとピアソラの曲、そして、細川俊夫の曲が演奏され、観客の心は揺さぶられたようだった。かく言う僕もまた満足を携えて、母と一緒に帰路に着いた。そもそも今回のコンサートに出向い

    • 他人を変えようとすること①

      1.はじめに   あなたは他人を変えようとしたことがあるだろうか?少なからずあるのではないだろうか?自分勝手な欲望のために都合よく、あるいは、家族間の家事のバランスをとるため、あるいは、仕事の関係で仕方なく、あるいは、社会正義のために声高に、あるいは、誰かの人生のために諭す時。  なぜ、あなたは他人を変えようとしたのか?その時、あなたはどのような状況に置かれていたのか?その他人と、どんな関係を結んでいたのか?何について、どういう所からどういう所へ変えようとしたのか?それで

      • 不機嫌ということ

        1.さよなら 降りていく 坂道を降りていく 陽は傾けば傾くほどいいね だけど、 沈み込み過ぎてはいけないよ つまり、 僕は夕暮れが好きだし それは、 僕と君が一緒の時間だから どれだけはしゃごうが どれだけ仲良く遊ぼうが いつも夕暮れ 夜は僕らを追い詰めて 夜は僕らに襲いかかるよ 僕は君のために 君は僕のために 永遠に、あのオレンジと紫を だけど、 君は夜も愛おしいと言う それは、 新しい朝を願うからだとも ならば、 僕はもう君なんか要らないよ 2.宇宙 帽子が

        • ゲオルグ・カントールと岡潔ー数学思想という幻の世界ー

          1.はじめに  まず、僕は『「無限」に魅入られた天才数学者たち』(アミール・D・アクゼル著、青木薫訳、早川書房、2015年)を読んだ。そして、その感想を書こうと思った。あなたは数学が好きだろうか?  僕はこの本と出会ったのはよく利用する近くの図書館の、科学を楽しむための本が置かれているコーナーでだった。僕はその小さな本棚に差し込まれたこの本を見つけて、すぐに手に取った。  僕は高校の時、文系を選んだ。数学が得意で、国語が苦手だった僕が文系を選んだのは、理系に男子が多く入

        光と影の物語ーバッハのコラールとピアソラのタンゴー 感想編

          曾祖母の一周忌に行って

           先日、曾祖母の一周忌に行ってきた。出身も、嫁ぎ先も岡山だった曾祖母の法事は、岡山で行われており、一周忌もそうだった。嫁ぎ先の家が日蓮宗の檀家だったので、日蓮宗の方法で行われた。    通夜なしで、葬式と初七日が一度に行われたが、その時に、僕は参加した。豪雪のために、四十九日には参加できなかった。三周忌からは、曾祖母の子の世代の人たちのみが法事に参加するとのことであり、僕が曾祖母の法事に参加するのは、今回が最後だった。  また、四十九日に、墓に曾祖母の骨壺を収めることになっ

          曾祖母の一周忌に行って

          BOOK PARK CLUB広島編に行って

          1.記事を読んだ  僕がこのイベントを知ったのは中国新聞の記事によってだった。同居している祖父が中国新聞を取っていて、いつも祖母や母が回し読みしているのだが、時々、母が気になった記事について、僕に紹介してくることがあるのだが、今回もそれだった。母に紹介されて、このイベントの記事を読んだ。  笑顔を称えた優しそうな人の写真が大きく掲載されていた。それが、仕掛け人だった。今田順さん(34歳)、ブックキュレーターを名乗っていた。ブックは本だけど、キュレーターって、何だろうって、

          BOOK PARK CLUB広島編に行って

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評⑤ーシマオさんの熊の話と小村の喪明けー

          1.はじめに  1.はじめに  前回は、『UFOが釧路に降りる』が何を描き出そうとしている作品で、<他者>にまつわるどういう洞察を含んでいるのか批評してきた。  見えてきたのは、釧路がポストモダン社会として、つまり、疎外論と物象化論の重ね合わせの場所として、精密に設定されていることだった。  また、疎外論のメリットだけが消失していること、そして、「仲間」がポストモダン社会の中では重要なことが分かった。  少し補足をすると、『ドライブ・マイ・カー』では、疎外論的な共同

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評⑤ーシマオさんの熊の話と小村の喪明けー

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評④ーポストモダン社会としての釧路?ー

          1.はじめに  前回、『UFOが釧路に降りる』と『ドライブ・マイ・カー』を、自動車をキーアイテムとして比較し、両者が対になっている作品たちであるのを突き止めた。 https://dmc.bitters.co.jp/  『UFOが釧路に降りる』は<世界>に軸足を置き、人類とか、社会とか、少し抽象度の高い事柄を描き出していることを確認した。  一方、『ドライブ・マイ・カー』は亡霊論に軸足を置き、人間社会の中でのドラマを豊かに描き出していた。<世界>は背景と化している。

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評④ーポストモダン社会としての釧路?ー

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評③ー『ドライブ・マイ・カー』とともにー

          1.はじめに  さて、今回も、『UFOが釧路に降りる』を批評していくよ。『神様の子どもたちはみな踊る』の一作目に収録されているから、読んでみてね。  パワポの再掲。亡霊論についても、整理しておいた方が良かっただろうか?いや、前回をきちんと読んでくれた人には必要ないかな?  あ、後、ちょっと寄り道してもいいかな?  実はさ、『UFOが釧路に降りる』はさ、『ドライブ・マイ・カー』とよく似ているんだよね。僕は『ドライブ・マイ・カー』の原作の方は読んでないけどさ。 http

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評③ー『ドライブ・マイ・カー』とともにー

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評②ー小村の妻が「死んだ」とは?ー

          1.はじめに  とにかく村上春樹を読みなよ。読んでよ。てか、読め。読まないと、許さないんだからね。いや、僕は、別に、好きってわけじゃないけどさ。  この本、前回も紹介したけど、村上春樹の短編集でね、それも、阪神淡路大震災が全六話全てに登場する震災六部作。今、読むべき本だよ。  これも、前回、指摘したことだけど、新海誠が『すずめの戸締り』作った時にモチーフにした作品『かえるくん、東京を救う』も掲載されてるし。  で、前回から、短編集の最初の話『UFOが釧路に降りる』の批

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評②ー小村の妻が「死んだ」とは?ー

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評①ーどうして小村の妻はいなくなったかー

          1.はじめに  久々の批評だ。『僕の心のヤバイやつ』のイマジナリー京太郎について考えている時に、ふと『ドライブマイカー』を思い出して…。 「分身と亡霊って、何か違ったりするのかな?」  なんて、疑問にとりつかれてから、村上春樹を読み直すに至り、しばらく本の虫状態と化していた僕である。  そして、とりあえずサクッと読める村上春樹の短編集に手を出したはいいものの、これも、一筋縄では理解ができない作品ばかりで、僕は泣きたくなった。  小説に純粋なエンタメを求める人は村上春

          村上春樹『UFOが釧路に降りる』批評①ーどうして小村の妻はいなくなったかー

          アニメ版『僕の心のヤバイやつ』批評⑥-関根萌子の恋ー

          1.はじめに  今回は第六回。ここまで来たかと嘆息する。つらつらだらだら続けているだけだけど、何か掴めていたらいいなって、本当に思うよ。  前回は、突然、S&Mシリーズ『すべてがFになる』を扱ったよ。いや、四季シリーズも扱ったけどね。特に、真賀田四季の通過儀礼を扱ったね。  何故って?  批評の道具が心もとなく感じたからだよ。前回の批評で、交差型を大幅に洗練することができた。これで、色々と見通しが良くなったよ。  今回は、何度か口にしてきた関根萌子の恋について語って

          アニメ版『僕の心のヤバイやつ』批評⑥-関根萌子の恋ー

          アニメ版『僕の心のヤバイやつ』批評⑤-真賀田四季の問題ー

          1.はじめに  さて、アニメ版『僕の心のヤバイやつ』の批評も五回目。どんどん批評が深まっているといいんだけど、どうだろうね? https://bokuyaba-anime.com/  関根萌子の恋に入る予定だったんだけど、批評の道具の心もとなさが気になって、仕方ない。仕方ないので、道具を鍛錬することに。  しかしね、そこまで、抽象的な概念とか、理論とか、整理整頓することにこだわらなくてもいい気がするのね。  それに合わせて、食材を切ってしまったり、食材の食べられる部

          アニメ版『僕の心のヤバイやつ』批評⑤-真賀田四季の問題ー

          アニメ版『僕の心のヤバイやつ』批評④ー恥ずかしいって、何?ー

          1.はじめに   僕の書く記事なんか誰も読まないと思っていたら、意外と読んでくれる人がチラホラいることに驚いた。  暇人が多いんだな、きっと。  という感じに、照れ隠ししてみるけど、ホントありがたいと思ってるよ。見てくれる誰かがいるって、励みになるんだなぁ。  でも、誰かが見てくれてるとか、誰かが評価してくれるとか、そういうのに振り回されちゃ、終わりだと思うんだよね。  だって、いつも誰かが見てくれるとは限らないし、評価してくれるとは限らないからね。そうじゃなくなっ

          アニメ版『僕の心のヤバイやつ』批評④ー恥ずかしいって、何?ー

          『僕の心のヤバイやつ』批評③ー交差型の整理と対幻想の条件ー

          1.はじめに   やあやあ。  今回は、前回の続きね。  前回、吉本隆明『共同幻想論』のキータームを使って、『僕の心のヤバイやつ』第九話「僕は山田が嫌い」を批評したよ。 https://amzn.asia/d/cv5EpeC  二次性徴と社会性の発達がどう位相が違って、それらが交差する際どんな緊張が生まれるか、それを描き出そうとしたつもりだ。  まずは、吉本隆明『共同幻想論』のキータームの振り返りと、先に挙げた交差の整理をちょっと行いたい。  キーターム。個人幻

          『僕の心のヤバイやつ』批評③ー交差型の整理と対幻想の条件ー

          アニメ版『僕の心のヤバイやつ』批評②ー吉本隆明『共同幻想論』編ー

          1.はじめに  早速、批評第二弾。  やれやれ。暇と退屈は憂鬱の源だ。皆、引きこもりニートとか、フリーターとかやるなら、気をつけて。趣味を持ってないと、死ぬよ?時間の感覚がうねうねになって、焦燥感に身を焦がされるよ?  よし、無駄話はこれくらいにして、本編。  前回さ、思春期の躓きを扱ったよね?  第一話の冒頭シーンと、第十二話の主人公過去編を振り返って。その内容をちょっと整理してみたい。  思春期ってのは、二次性徴と社会性の発達が肝なのさ。それは、身体も、心も変

          アニメ版『僕の心のヤバイやつ』批評②ー吉本隆明『共同幻想論』編ー