見出し画像

『ののはな通信』を読んで

少し前から読みかけていた
三浦しをん「ののはな通信」
時間がかかってしまったけれどやっと読了

女子高校生の2人の
授業中のメモ交換からポスト投函する手紙
そのやりとり全てが書かれている
毎日学校で会うのに手紙を書く
どれだけ話しても尽きない
2人でいたらどれだけでも話していられる
そんな2人に自分の学生時代を重ねる人も少なくないのではないか

進路が分かれてしまった大学時代
途切れてしまったやりとりも
はなからの半ば強引な手紙でやりとりがまた始まる
そこから何十年もの時を経て
40代での再開
その時には手紙ではなくメールでのやりとりに変わっていたが
最終的にまた手紙というものに戻る
500ページ強、2人の書簡のみで 全てが進んでいく

若く瑞々しい女子高生の頃
大人へと変わりゆく大学時代
そしてすっかり大人になりもうそれぞれの人生が形作られている40代
どれだけの文字のやり取りを飽きることなく続け
どれだけのお互いの気持ち、感情、想いを言葉にして伝えただろう

友情、愛、愛おしさ、喜び、高揚
憎しみ、悲しみ、苦しさ、怒り
相反する自分の感情への戸惑い
尊敬、慈しみ、羨望

あらゆる感情が言葉として文字としてしたためられ
自分の感情を文字という媒体を通じて表現する

相手にどうしたら伝わるのか
相手はどんな気持ちだったのか
言葉から受け止める感情
言葉から想像する気持ち

相手から届く手紙を開く時
自分が書いた手紙を相手が読んでいると想像する時
相手のことを想いながら書く時
自分の気持ちを伝えたいと思って書く時
相手に書いていたはずがいつのまにか
自分の気持ちに整理になっていたり

自分と重ねながら
2人のどちらにも感情移入しながら読んだ
こんなに濃密で強い感情があるのかと思った

終盤はもう
涙と鼻水が止まらなかった



以下ネタバレあり

✎︎______________

ここからはこのお話のネタバレというのか
本当は読みながら知ってもらいたいなと思う部分

高校生時代に2人は恋をする
ののがはなに告白して
はなもののが好きだと気付く

お互いを愛し幸せで満ち足りた毎日も長くは続かず
結局さよならを選び
別々の人生を歩む

最終的に性対象は2人とも男女とも可能
好きになるのは
「のの」の方は女性
「はな」の方は男女
になるのたけれど

高校時代の2人の愛が深過ぎて
お互いにこんなにも純粋でこんなにも深い愛は無い
ダイアモンドのように輝いて
いつまでも心の中にある
溶け合ってひとつになってしまいたいとまで思った相手はお互いしかいない

それ以降の相手もまっすぐに愛した
だけど根底にいつもいたのはお互いだった

あなたの幸せを心から願いながらも
いつも心の奥底にいるのはあなた
心が求めるのはあなた
何千通何万通になっていたのか分からない
2人の書簡は2人だけの世界
2人が大切に築いてきた誰も入ることのできない2人だけの世界

あなただから
あなただったから

はなの持つ持ち前の明るさや天真爛漫さの裏側にある芯の強さ
ののの強く真っ直ぐな美しさ

はなの決断をののはメールで知り
はなはののにしかその決断を伝えなかった
手紙のやりとりはそこで終わる
はながどこにいて何をしているのか
家族、(元)夫でさえ分からない

一方的なののの手紙が続き
最後は分からないままで終わるのだけれど
2人の手紙はいつまでも続いていくのだと
どこかで感じる
そんな物語だった

この記事が参加している募集

読書感想文

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?