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中国茶のある暮らし――7月のお茶「擂茶」

 長い歴史に磨かれた豊かな中国茶の世界。四季折々の甘味や食に合わせるお茶を、中国政府公認の評茶員・茶藝師の澄川鈴が提案します。
 心に余裕がなくなりがちな日々だからこそ、めぐる季節を愛で、自分を癒すひとときを。そして、お茶を通して見える中国の人々の素顔と暮らしにも、ほんの少し触れていただけたらと思います。


☞ 連載「中国茶のある暮らし」


7月は擂茶のアレンジレシピを紹介

客家擂茶はっかれいちゃ」という茶をご存知でしょうか。茶葉と数種類の雑穀をすり鉢で〝り潰し〟、そこに湯を加えて飲む擂茶は、中国・客家の伝統的な飲み物とされています。

 客家の人々は、黄河こうが中流域の中原地方(現在の河南かなん省一帯)を原郷として、一説では東晋とうしん時代(317年〜420年)の末頃から各地に南下したと言われています。現在では、主に広東かんとん省や福建ふっけん省に住んでいますが、広西こうせいチワン族自治区や四川しせん省、湖南こなん省、さらには台湾や東南アジア各地にも点在しています。

 日本では唯一、「松茶まっちゃ商店(無店舗型の擂茶専門店で、各地のイベントなどでも販売している)」が台湾から輸入した擂茶を販売しています。「松茶商店」が取り扱う擂茶は、大豆などの20種類以上の穀物を丁寧にすり潰し、粉末にした穀物茶です。

「松茶商店」が販売する「客家擂茶」

 大豆が主成分なので、きな粉のような香ばしい風味が特徴でとても飲みやすく、ビタミンB群をはじめビタミン E、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの栄養素が豊富に含まれています。

 コップ一杯でたくさんの栄養素を摂取できますので、偏栄養へんえいようの方や固形の食事が取りにくい方なども補助的な食品として活用できるはずです。私自身も、普段の食事にプラスする形でお茶のまま飲んだり、アレンジレシピを楽しんだりしています。

 台湾では「一日3杯の擂茶はあなたを98歳まで生かす」との触れ込みで売られている擂茶――。今回は、そんな擂茶を使っていくつかの食事とデザートを作ってみました。

 食事はシンガポールなどで食べられている擂茶をドレッシングのように使った「サンダーティーライス(擂茶飯)」と私が創作した「擂茶蒸しパン」を、デザートには擂茶を混ぜた「豆乳プリン」と「甘酒アイス」をご用意しました。


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