「無計画こそ、未知の出来事に出会う旅の楽しみ方である。」

青い青い当時の私は、そのような持論をまきちらしていた。

ルートや宿泊場所を調べていないどころか、地図すら持たない主義を貫き通した。
そして、ただ下道を北へ走り、寄り道もせず、ご当地の物も食べず、寝る場所にも困るという当然の結果を招いていた。

仙人が霞を食って生きているように、何も持たずとも、旅の空気を食って生きていけると思っていた。

今となってはバカだったと素直に認めざるを得ないが、当時は未知への期待だけで進むことが出来るほどに澄みきっていた。

苦行のようにひたすら北へと走り続けること3日間。
目の前に青森港が現れる。

はじめての北海道はもう、すぐそこ。
フェリーの乗船手続きでさえワクワクを高める儀式の一つであった。

津軽海峡を渡ればもうそこは憧れの北海道である。
想像しながらフェリーに揺られていた私の心は、キャップを開けたての三ツ矢サイダーのようにシュワシュワと弾けていた。

つづく