真・邪道勇者 経歴編 全話無料開放中
無論、ブン殴った。それも「もう殴らないで」から「早く殺してくれ」と懇願するまで強く激しく、そして死なない程度に手加減した。
というのも、当初この街に来たばかりの頃は当然「住める場所」に心当たりなど無かった──────当たり前だ。他の作家ならいざ知らず、そのような「要領の良さ」とか「人との縁」に恵まれた連中と一緒にするな。
当然、古今東西、過去現在において敵だらけだと保証する••••••未来に関しては、まあ、あまり考えないでおくとしよう。正直想像もつかないが、何であれ悲観的みたいな考えになるのは宜しくない。
果たして「味方」などという概念が存在するのか疑問だが、まあとにかく住める場所など法の無い街ならどうにかなる。法律とは弱者から搾取する手段であって、無ければ誰もが自由になれる。
具体的には、エルフの売買がなされていた。
なに? 売春宿ではないかだと?
馬鹿め!! 魔術だの何だのが使える連中に関して言えば、技能を活かした方が金になる••••••••••••最も、そういう需要が減る訳では無いので売られた後は知らないが。
無論、私が気にしたのはそこではない。
とりあえず軽い視察でもしてみようかと、言わば顔見せの段階だった。運営者はゴブリンと人間の掛け合わせなのか、体長5メートルはある大型の男だったのだが、その男が
「細っちろい人間種族だなァ••••••家で本でも読んでるのがお似合い
と、奴の遺言は「そこ」までにした。
物語を軽く見た時点で、それも邪道作家に対してナメた態度を取った時点で、奴の寿命は決まっている。まして、あざ笑うなど「殺してくれ」というサインだろう。
サインは受け取った。私はノーコンだがやると決めた事はやる主義だ。実際、邪道作家シリーズは完結まで書いたしな。
全23冊、累計500万文字は書いた。それに比べればゴブリンを叩きのめすなど容易い事だ──────なので、容赦はしなかった。
善悪なんぞどうでもいいが、物語をコケにし作家を軽んじる奴は許せない。そも私に許す機能があるか疑問だ。とにかく、私は休まず弛まず、四六時中奴をブン殴った。
最初は反抗的だったが、次第にそれも収まり「許して」とか「悪かった」とかほざいていたが、生憎と免罪は無い。読者もそうだが、金を払わない読者と物語を軽んじる輩は死刑以外に有り得ない。
いや!! 無期懲役の極刑だ!! それも、地獄の鬼すら裸足で逃げ出す無間地獄が相応しい••••••それが何であろうとな。
そういう意味では、人間の信仰する神仏連中も「有罪」だと言えるだろう。訳のわからん英雄だの何だのを贔屓し、肝心の物語──────人類史より遥かに価値ある宝に一円たりとも払わないのだ。
極刑だ!! 決して許さん!!!
それら、物語業界に関する思いを込めながら殴り続けた訳だ••••••言わば「愛の鞭」であり「奉仕精神」のたまものと言えよう。
物は言いようだ。そこは任せろ!!
どうとでも、解釈してくれよう!!
何なら、世界に貢献した報酬として聖人判定してくれていい。最も、私が祀られた教会に十字軍は来ても神など知らん。
仏も同様だ。悟ったから、だから何だと言うのか••••••••••••衆生を救えなければ辞めるそうなので、案外失業したのやもしれない。
血を吐きながら戯言を何か言ってた気もしたが、私の耳には入らなかった。ただ、周りの首輪に繋がれたエルフ連中は違ったらしく
「あの、もうその辺りで••••••」
と、この私を静止した。
なので、私は聞いてやる事にした。無論、エルフだろうが人間だろうが読者だろうが神仏だろうが区別は無い。一切無い。
怯える布切れ一枚のエルフ相手に
「お前は••••••物語を、どう思う?」
とだけ聞いた。
少し逡巡してから、彼女は
「物語••••••ですか? あの、青い鳥とか絵本にある?」
「そうだ」
同じ事を確認するんじゃない。イライラして憂晴らしの為だけに首を切り落としてやろうか、とさえ思った。
だが、人間と対応は違っていた。
ひまわりのような笑顔と金の美しいと評判な髪をたなびかせつつ、
「いいですよね、物語!! ああいう御話には夢があります」
だから好きです、と。
••••••••••••私の物語にとて夢はある!! 多少非人間向きなだけで、それなら売れたって良い筈だ。
そうは思ったが、まあ一応傘下と言えなくもない。であるので私は敵意を抑えた。
その後、彼女らは博士の組織に接収されて、今では立派な悪党として七面六臂の大活躍を遂げた。言わば、人間リサイクルだな。
この場合、人間ではなくエルフだったが。
ふん!! 夢と希望だけが物語? まさか。何であれ野望と悪意が無ければつまらない。
私の場合、ちょいとばかり多いだけだ。
辛い物好きと同じだ。過ぎたるは更に強し。
であれば、悪意を刻みつけても構うまい。
その後、色々あってエルフの依頼づてに今の獰猛犬がいる訳だ。
ゴブリンはどうなったか? さぁな••••••••••••複雑骨折だけでも100ヶ所は超える。何せ、1日中殴ったのだ。あれで無事な生物がいれば、そいつは不老不死か何かだろう。最も、それでも死ぬくらいには殴ったが。
それなりに街の顔役だったらしく、私に喧嘩をふっかける奴はいなかった。残念だ。やるなら殴り甲斐のある相手が良い。
敵がいなければ、殴れないからな!!!
何故か、エルフの評判は上がったが──────その辺は関係ない話だ。第一、それが作品の売上に関与するか?
しないならば、知らん。
その後、知っての通り幾つかの依頼を受けて博士と取引をした訳だ。具体的には「獲物」を提供し金まで支払うという破格のもので、彼にすれば私という化け物が使えれば何でも良かったというのが実情だろう。
数多くの犯罪に関与したぞ!! 貴族は人間だけでなく攫ったし、金持ちは神々だろうと強奪した。時には、英雄などという胡散臭い連中とも争った••••••無駄に頑丈で狩り甲斐のある奴等だった。
神を名乗る宇宙人ども、博士は「グレイ型」とか読んでいた連中も拉致し、死体を解剖した事もある──────連中の言う「魔術」とやらを解明すべく、博士が私に依頼したが何でもなのましん、とか呼ばれる極小の絡繰仕掛けが仕組みらしい。
何人?も拉致したので、我らが組織は魔術に長けた。厳密には科学だと言うので、我々は魔術と呼ばないがな。
後は、敵対組織への攻撃も忘れていない。
というのも、当然ながら犯罪組織は我々だけでは無いからだ。
具体的には、まず宇宙から飛来した宇宙人、神々を名乗る連中自体も組織の1つだ。大体よくわからん奴等が急に来たのに、理解出来ないから何でも「神」というのは如何がなものか。
少しは考えて生きたらどうなのか。
やれやれ。
とまあ、ざっくりした経歴はこの程度だ。具体的な詳細を語るには、読者が金を払っていない。だから、無責任に放置させて貰う。
実際、責任は無いしな。読みたきゃ邪道作家の方でも勝手に読みやがれ
Androidなら栞機能が使える。おひねり制として出したが、決済能力のない奴らにそんなもん要求しても無駄だったな
タダで奢って得られる物は特に無かったが••••••やれやれ
ま、何にしろやるべきと信じた事はやった。やりたい形でやり遂げた。
その「後」なんざ、知らねーよ
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