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公演レビュー

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コンサート 歌舞伎
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【公演回顧】2024年(令和6年)二月 / 三月大歌舞伎


2024年(令和6年)2月15日(木) 十八世中村勘三郎十三回忌追善 猿若祭二月大歌舞伎 夜の部より(幕見)

歌舞伎座で初めて幕見席を利用。想像より遥かに見やすく、高いところなればこそうかがい知れる要素もあり、楽しめた。

猿若江戸の初櫓

400年前の1624年2月15日が、初世勘三郎が江戸で初めて幕府の許しのもと小屋の櫓を上げた「江戸歌舞伎発祥の日」とのこと。節目の日に初世勘三郎の故実から

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【公演レビュー】2024年2月11日/インバル指揮、東京都交響楽団


《プログラム》

東京都交響楽団 プロムナードコンサートNo.406
サントリーホール
指揮:エリアフ・インバル
ブラームス:大学祝典序曲
ベートーヴェン:交響曲第8番
~休憩~
ドヴォルザーク:交響曲第8番

【要約】

ほぼ満席の大盛況。
カーテンコールの画像から演奏内容もお察し頂けるだろう。
ブラームス、ベートーヴェンの2曲はガッシリした輪郭のサウンドが機敏に動き、筋肉質の音楽を展開。

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【公演レビュー】2024年2月4日/井上道義指揮、NHK交響楽団


要約

2024年12月で指揮活動から退く予定の井上道義が、近年NHK交響楽団と行ってきたショスタコーヴィチをメインとする公演の集大成。
ヨハン・シュトラウス2世が元々ロシアのひとの依頼に応じて書いたポルカ、ショスタコーヴィチのコインの裏側を垣間見られる行進曲やワルツ、そしてナチスのユダヤ人虐殺を出発点としながら、ソヴィエトの様々な側面も投影した詩を用いたショスタコーヴィチの問題作がという考え抜

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【公演レビュー】2024年(令和6年)1月27日/ 壽 初春大歌舞伎 夜の部 千穐楽


[要約]

1月7日の同演目の公演についてはこちら。

一.鶴亀

約170年前に作られた謡曲をほぼそのまま長唄にした歌舞伎舞踊。
女帝の拝賀に浴して民の歓呼の声が上がるなか、廷臣と従者が舞を演じ、五穀豊穣と天下泰平を祈念する祝儀もの。
療養中の不自由な体でつとめる福助の女帝の動きが一段と大きくなり、表情の変化もあった。2月も歌舞伎座出演が予定され、体調は回復傾向と推測できる。ファンの多い役者ゆ

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【公演レビュー】2024年(令和6年)1月7日/ 壽 初春大歌舞伎 夜の部


[要約]

一.鶴亀

初春にふさわしい天下泰平と五穀豊穣を願う祝儀舞踊。
病気療養中の福助の両サイドでいまの歌舞伎界の中心を担う幸四郎、松緑とそれぞれの息子が麗々しく舞う。
松緑の下半身からのメリハリで動く技術はさすが。演技だと体型の都合でしっくりこないケースもしばしばだが、舞踊に関しては現役なら一頭抜けている。
制約のあるなか、艶やかさを漂わせる福助に回復ぶりがうかがえた。

二.寿曽我対面

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【公演回顧】2023年10月中旬以降鑑賞分

昨年終盤は、私生活のゴタゴタで行った催しのレビューを殆どできなかった。なので年初の機会にいくつかピックアップして振り返る。

要約

別ブログにInstagram投稿を並べたもの。

2023年(令和5年)10月13日(金)ティアラこうとう小ホール
Tiara Monthly Concert Vol.244「伝承の調べが紡ぐ世界」

近年、大正時代における西洋文化受容の検証が盛んになっている。

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【公演レビュー】2024年1月3日/第66回NHKニューイヤーオペラコンサート

あけましておめでとうございます
新年早々痛ましい災害や事故が相次いだので暫く投稿を控えました
困難な状況に置かれている方々にお見舞い申し上げます
そして皆様の心に松明が燈ることを祈念します

↓テレビ視聴した昨年のコンサートについてはこちら↓

沼尻竜典指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団
二期会合唱団
びわ湖ホール声楽アンサンブル
藤原歌劇団合唱部

~曲目~

ヘンデル(吉松隆

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【公演レビュー】秀山祭九月大歌舞伎②

歌舞伎座新開場十周年
二世中村吉右衛門三回忌追善
秀山祭九月大歌舞伎

全体の要約と昼の部についてはこちら

夜の部:2023年(令和5年)9月24日(日)

一.菅原伝授手習鑑 より 車引
二.連獅子
三.一本刀土俵入

歌舞伎の三大名作の一つに数えられる「菅原伝授手習鑑」(1746)全体のあらすじは下記リンク参照。「車引」は4番目のチャプターの場面。

見栄の切り方や隈取りの差異で登場人物の心

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【公演レビュー】秀山祭九月大歌舞伎①

歌舞伎座新開場十周年
二世中村吉右衛門三回忌追善
秀山祭九月大歌舞伎

[要約]

秀山祭は二代目中村吉右衛門(1944~2021)が初代吉右衛門(1886~1954)の俳名を冠して2006年から始めたもの。
2019年までの毎年秋に催され、家の十八番はもとより、ときには能などを基に自身が構成した新作もかけた。
古典の名作上演では通常割愛する箇所の復活といった掘り下げを行い、歌舞伎の伝統を次世代に

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【公演随想】2023年9月15日/池辺晋一郎80歳バースデー・コンサート

[要約]

交響曲、オペラから映画音楽、大河ドラマのテーマ音楽に至る幅広い、旺盛な作曲活動を続けてきた池辺晋一郎(1933年9月15日生まれ)氏の80歳の誕生日当日に行われた記念コンサート。
プログラムは三部構成で無伴奏合唱、オペラ、管弦楽が取り上げられた。
いずれも20代の作品と60歳以降の創作(ラストは新作の交響楽作品)を組み合わせ、器楽系や劇伴以外の作曲遍歴を端的に味わえる内容。
聴いていて

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【公演レビュー】2023年7月8日/ジェフリー・パターソン指揮、名古屋フィル、カニサレス〔ギター〕

《プログラム》

愛知県芸術劇場 コンサートホール
名古屋フィルハーモニー交響楽団 第514回定期演奏会
ジェフリー・パターソン(指揮)
カニサレス(ギター)
ラヴェル:スペイン狂詩曲
カニサレス:地中海協奏曲〔日本初演〕
〜休憩(20分)〜
ラフマニノフ:交響曲第3番

フラメンコギターの巨匠が魅せた音彩のカレイドスコープ

「主役」のフラメンコギタリストのカニサレスを初めて知ったのは、2011

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【公演レビュー】2023年6月24日/山根一仁〔ヴァイオリン〕阪田知樹〔ピアノ〕デュオ・リサイタル

フィリアホール「土曜マチネシリーズ第1回」
山根一仁〔ヴァイオリン〕 / 阪田知樹〔ピアノ〕

《プログラム》

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番 BWV.1001
ストラヴィンスキー(ドゥシュキン編):イタリア組曲
①序奏 ②セレナータ ③タランテラ ④2つの変奏をもつガヴォッタ
⑤スケツィーノ ⑥メヌエットとフィナーレ
〜休憩(20分)〜
武満徹:妖精の距離
リスト:巡礼

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【公演レビュー】2023年6月10日/髙橋望〔ピアノ〕「バッハとシューベルト第2回」

東京オペラシティリサイタルホール
髙橋望〔ピアノ〕

《プログラム》

J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ BWV.903
J.S.バッハ:パルティータ第4番 BWV.828
〜休憩(20分)〜
シューベルト:ピアノ・ソナタ第19番 D.958

着実で柔軟な設えから覗いたアグレッシブさ

ピアニスト髙橋望と「バッハとシューベルト」第1回(2022年)についてはこちらを御覧下さい。

Inst

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【公演レビュー】2023年6月3日/井上道義指揮、東京交響楽団、上野通明〔チェロ〕

《プログラム》

東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
東京交響楽団 第133回東京オペラシティシリーズ
井上道義(指揮)
上野通明(チェロ)
武満徹:3つの映画音楽より
第1曲 映画「ホゼー・トレス」から「訓練と休息の音楽」
第3曲 映画「他人の顔」からワルツ
井上道義:交響詩「鏡の眼」
〜休憩(20分)〜
エルガー:チェロ協奏曲
エルガー:序曲「南国にて」

久々に生で聴いた東

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