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  • 爆裂愛物語

    ツイッターで出逢った少女との想い出をモチーフにした超大作恋愛小説

  • DIABOLOS

    津久井山百合事件、植松聖事件をモチーフに描いた大作ミステリー・サスペンス小説! 安楽死問題、日本の福祉の問題、重複障害者の社会における必要意義と生命と倫理の問題、などを鋭い切り口で臨んだ大作! 「この国は、健常者国家に産まれ変わるんだ」 「もしも月の給与を100万にしてやれば、この国の介護士たちはもっと優しくなるよ」

  • ミニクヒアクマノコ

    著者の学生時代、並びに、教育現場に勤めた実体験を元に描いたSF小説

  • 青を護る黒

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爆裂愛物語 第十話 死と永遠と母子の絆

 その日は、雨だった。叩きつけるような激しい雨音は、まるでカーテンコールの終わりを報せるベルのようだった。雨はやがて豪雨へと変わり、雷が鳴り響く。まるでこれから起こる物語を先取りしているかのような雷鳴と雨音だった。そう……戦争の予感を…… 「きた」  鉤十字を背負った黒い軍用ヘリコプター。その数、十三機。彼等がGMC本社に近づいてくる。まるで、自分たちこそが地獄の使者なのだと主張しているかのように。 「きたぞ! 我路!」 「わかってる! いくぞ」 「おう!」  軍用ヘリが旋回

    • 爆裂愛物語 第九話 BURST LOVE STORY

       夏空が眩しい。雲一つない、青々とした空。まばゆい青が視界のすみから隅まで広がっていた。それを焼き付けるような白い日差し、燦々と降り注ぐ陽差しの中を……凪と我路は歩いて行く。  夏風が吹くと、艶やかな黒髪がさらさらと揺れ、たなびく。さらりとした艶のある髪から漂う甘い香りが、我路の鼻腔をくすぐった。 「? どうしたの?」  そんな黒髪の主である彼女は、我路に向かって小首を傾げる。 「いや……よく似合うなと思って」 「あ……ありがと」  我路が言うと、凪は少し恥ずかしそうにうなず

      • 爆裂愛物語 第八話 心臓に向かう折れた針

         大日本翼賛会の寮へ、凪とアイが帰ってきた頃には……もう昼だった。 「何処に行っとったんや! 心配したぞ!!」  フォルクスワーゲンVW38で帰ってきたアイと凪を、一番最初にそう出迎えたのは我路だった。 「つーかなんやねんこのモダンな車は! ってかアイはサングラス着けとるし、なにキメとんねん!」 「私は眼も含め、紫外線に弱いためこのような対策が必要なのです」 「……だからってなんでフォルクスワーゲン……」  我路がツッコミをいれつつ、ちょっと怒り気味だが、 「まぁまぁ、凪もア

        • 爆裂愛物語 第七話 悪魔の使徒

           大日本翼賛会事務所に帰った我路たち。そこでは、普段は静かな事務所が、波のようにざわついている。 「なるほど……大東亜戦争の業か」  並さんが深く頷く。 「しかしお前ら、こっからナチス相手に闘うってエラいもんにオレら巻き込んでくれたなー笑」  宮さんは笑いながら言った。 「まぁ、その通りですけど……でもこれしかなかったんですよ」  そう我路が答えると、隣の園さんも笑いを浮かべる。 「これでオレら死んだら我路責任とって凪ちゃんか静香ちゃんかアイちゃんか夏凛ちゃんと結婚な。あーア

        爆裂愛物語 第十話 死と永遠と母子の絆

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        • 爆裂愛物語
          10本
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          ¥200
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          爆裂愛物語 第六話 頭の中の怪物

           夜が訪れる。空には雲がうっすらとかかっており、月は雲に隠されて見えない。  街灯が少なく、田舎町の郊外にあるこの町は暗く静まりかえっている。 「我路ー」 「ん?」 「お腹すいたー。お弁当食べようよー。っていうか、もう食べたーい!」  と凪が舌足らずな声で言った。 「もうすぐ寮なんだからガマンしようぜ。つか、それまでガマンしろ」 「はーい。買い物つきあってくれてありがとう。明日も一緒にお出かけしようね!」 「おう!」  2人がそんな会話をしながら寮のある方角へ向かう。その時、

          爆裂愛物語 第六話 頭の中の怪物

          爆裂愛物語 第五話 忘れない夏

           陽炎に、うつる恋の、ゆく先は  儚くうつる、忘れない夏  中学三年、15の夏を、彼女は忘れない。夏凛は、燃ゆ空に今も踊る陽炎を時折窓から眺めている。そのまなざしに惑いはない。刹那の時よ永久に続けと切実に願いながら。 “僕は夏凛、僕は全てが見える。全てを感じる。全てを知っている。だから冷めている”  愛の行方を知っている。優しさならわかるけど愛の行方は誰も知らない。でも夏凛は知っている。愛のままに生き、生きようとした行方を。  忘れない夏の夜……まるで真夏の夜の夢。夜

          爆裂愛物語 第五話 忘れない夏

          爆裂愛物語 第四話 家族のぬくもり

          「ふぁ〜あ」  ある朝、我路はいつものように大きなあくびをしながら目を覚ました。そして寝ぼけ眼のまま、いつものように寮の扉を開ける。 「おはよーダン」 「おはよーさん」  我路は間の抜けたような声で言った。まだ完全に目覚めてない感じだが、これがいつものことなので特に問題はないだろう……と我路は思った。 「さて……今日も仕事仕事!」  そう言って車の運転席に座り、エンジンをかけよう……としたが、 「?」  エンジンがかからない。何度試してもかからなかった。 「まさか……こいつぁ

          爆裂愛物語 第四話 家族のぬくもり

          爆裂愛物語 第三話 約束のデート

           大日本翼賛会の朝、旭日旗がなびく事務所の窓に朝の光が差し込む。 「ふぁ〜あ」  凪は眠い目をこすり、覚めきらない頭のまま浴場へ向かった。 「あ、宮さんおはようございます」 「押忍!」 (この人挨拶の返事いつも押忍なんだよな……)  凪がここに来て1週間が経ち、世界がより鮮やかになっていく。段々ここでの生活にも慣れつつあった。宮さんや並さんも、最初こそ厳しく怒鳴ることが多かったが、仕事ができるようになってきたら何も言わなくなってきた。それは凪にとって、認められたような、信頼さ

          爆裂愛物語 第三話 約束のデート

          爆裂愛物語 第二話 家出少女

           我路のバイクがすべるように夜の国道を行く。背に凪を乗せて……背中から伝わってくるのは、ぬくもりだった。それが彼女には……なんだか自分を迎えに来てくれた王子様のように思えて、 「あ、あのね」  とん、とん、とバイクの後ろでゆれながら凪が言った。 「家、泊めてもらうんだから、その……覚悟はできてる! でも、その、あの……」  ブンブブーン! バンババーン! ギュン! ズドドドドーン! ギュンギュギューン! 凪のその声はエンジンの爆音にかき消されて聞こえなかった。 「うん? なん

          爆裂愛物語 第二話 家出少女

          爆裂愛物語 第一話 死の覚悟

           固定  レイ・病み垢  わが路を行け オレたちは開拓者  あの日の正午、凪は死ぬハズだった。死ねば楽になれる。苦しむことに耐えきれなくなった彼女は、自分の通う中学の屋上の手すりを乗り越えようとしていたのだ。春の終わりのひんやりしたお昼だった。  関西のとある中学に通う少女、凪。彼女が手すりの向こう側へそっと身を投げ出す瞬間、通知音が鳴った。ポケットのスマホだ。それが運命をねじ曲げた。彼女を救ったのは、ツイッターのメッセージ。それは「レイ・病み垢」のとあるつぶやきのリツイ

          爆裂愛物語 第一話 死の覚悟

          DIABOLOS 最終話

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          DIABOLOS 最終話

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          DIABOLOS 第7話

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          DIABOLOS 第7話

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          DIABOLOS 第6話

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          DIABOLOS 第6話

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          DIABOLOS 第5話

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          DIABOLOS 第5話

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          DIABOLOS 第4話

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          DIABOLOS 第4話

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          DIABOLOS 第3話

           そこは警察署の一角にある薄暗い空間だ。そこは狭く、そして薄暗い。窓はなく蛍光灯が一つしか点けられてなかった。天井の隅っこにある換気口から微かに黴臭い冷気と、小さな虫が這う音がしているだけで、そこは陰に覆われていた。この室内では外界の景色は全く見えないため時さえ止まっているように感じるし、時間も流れていないかのように錯覚する。それは時間の経過を感じさせない異質な空間であることは明らかであった…… 「カオリちゃん、だっけ? じゃあ君は、事件前日に溝呂木聖也から犯行予告の手紙を受

          DIABOLOS 第3話