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Back to the world

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1980年代半ば。『ガープの世界』を愛読している高校生・藤尾純、通称ジェリーは劇的な出生ゆえか夢見がちな性格である。 個性派揃いの高校に通い始め、青臭く多感な毎日を過ごしている。… もっと読む
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記事一覧

Back to the world_022/隣家の流星、集団宿泊、ラブリーと子犬

 朝 家を出た純は自転車に跨ったまま、隣の家の流星の絵を眺めていた。庭 木にくくりつけられ…

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4か月前
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Back to the world_021/そこかしこでテントをおっ立てた衝動、逃走、ミステリー

 母が叩く宗教の団扇太鼓の音も、今日は聴き慣れた心地よいリズムとして耳に入って来るーー。…

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11か月前
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Back to the world_020/ラブリーがラブリーでなくなった

一瞬緊張が走った。『お正月』は顎を何度も神経質にしゃくり上げながらどんどん足を拡げてズボ…

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1年前
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Back to the world_019/5月、お正月と盆が一緒に来る予感

 放課後、坂を下り切った駄菓子屋の前で土管のように太いボンタン(変形学生ズボン)を穿いた…

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1年前
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Back to the world_018/ブー美と雪山登山

「死ぬな、死ぬなブー美~!」 中野の寸劇はエスカレートして、寝転んだ佐内をビンタするふり…

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1年前
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Back to the world_017/洗礼・赤レンジャー

 その晩純は寝床の中でショーグンの言ったことを考えていた。『実際あった記録か、あるいは真…

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1年前
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Back to the world_016/3mの大魚

 純はこの日のベンチでのやりとりをまたいつか思い出すのだろうと思いながら喋り出した。 「それで…やっぱり同じ頃だったと思うんだけど、こっちに遊びに来てた時にさ、俺、でかい魚を見たんだよ。 それ、父親と車で走っててなんか偶然みつけた池なんだよね。 市内だと思うんだけどさ、そういうトコ聞いたことない?池か堤かーー?でかいのが泳いでるの、何匹か」 「なんだろう?それってどのくらい大きいのかな?」 「3…いや、4mぐらいかな?」 「4mぅ?!」 「うん、1mとかじゃなくて3、4mっ

Back to the world_015/5歳までを繰り返して水上を歩く

「あ。でもずいぶん前のちっちゃい頃ーー5歳くらいの頃の話なんでそう言われると記憶がアレな…

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1年前
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Back to the world_014/タヌキがチェンソーのモノマネをしている

 教室でショーグンが龍を見た話をした時に純も軽く不思議な話を披露したが、じっくり話せる時…

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1年前
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Back to the world_013/帰りに駅で

 船が岸壁を離れた。すぐにきゃあきゃあ言う女子は船頭の義手に気づいてぎくっとしたが、すぐ…

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1年前
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Back to the world_012/『ブー美』と呼ばれる女

 高司はその後さらに純をイラつかせる事になる。 「バカ司、アニメ軍団と仲いいんだな」 「…

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1年前
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Back to the world_011/果実+通信

 放課後、アニメ軍団の岸田のところへ美術部の女子たちがやって来た。この高校は男女別クラス…

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1年前
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Back to the world_010/雅なメガネ拭き、ショーグンになる

「UFO写真あんだって?うひっ」 昼休みには早川にUFO写真を見せた。 入学してすぐ、純のことを…

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1年前
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Back to the world_009/龍とUFOと竹槍

 2枚目の集合写真の中の鴨沢は顔がブレていて、地面に突いた竹刀を握りしめていた。UFOに対し身構えたのか、首が肩にめり込んで見えた。 「この肩ジャミラみたい!ーーUFOはいてもいないんだよな、そういう事でいいんだよ、あいつらな!」 「じゃっ、そういう事で!」 佐内が叫び中野がニヤリとした。その横を三好がウォークマンを聴きながら通り過ぎ、気づいた高司が話しかけた。 「みっちょん、あの時のさ、UFOの写真あるよ」 「えー?何?」 「ほらUFO」 三好はリズムを取りながら無表情で