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「根拠のない自信」はいつも悲劇を呼ぶ「空腹ねずみと満腹ねずみ」

<文学(22歩目)>
ドイツの乾いた笑いから、「事態は統制できている!」という「根拠ない自信」が非常にヤバイことを学ぶ。

空腹ねずみと満腹ねずみ 上
Timur Vermes, ティムール ヴェルメシュ, 森内 薫
河出書房新社

空腹ねずみと満腹ねずみ 下
Timur Vermes, ティムール ヴェルメシュ, 森内 薫
河出書房新社

「22歩目」はドイツ発のベストセラーから、主題となる「難民問題」を学びながら、「事態はきちんと統制できている!」という根拠ない自信が壊滅的な打撃につながることを学ぶのに最適な作品です。

ティムール・ヴェルメシュさんは連続ですが、素晴らしいです。
この作品は、欧州・北米でとても重要な課題となっている「難民問題」にかかわる作品。

それも、テレビ局の裏事情を使って展開させるので、オモシロイ。

紹介する二作ともに、テレビ業界を並行して走らせているのだが、そこが「笑える」から、深刻な問題が一層印象的になる手法で「うまい!」と思いました。

この作品では、魅力的なタレントと名もない難民の青年の「思い付き」が、大きな渦となる。

SF作品を見る目で読んでしまったが、途中のプロットが破綻しないで結末まで進むことがテクニカルに素晴らしいと思った。

最初の100ページ程を読み進めるキツさ(ちょっと冗長で、大きく切って短くできるレベル)の後は、登場人物が個性的でどんどん読ませてくれる。

主人公の二人、わき役もキャラが立っている。そして、登場人物のロイベル内務大臣が提案した内容が素晴らしい。

しかし、人類が理想を受け入れるには「恥」(人為的に悲劇的な事態を発生させてしまった)が無いと実現化しないようです。また、終わり方はまさに「想定外」であるが、この様な案件を見つめる際に、脳の片隅に入れておかないといけないと感じた。

有能な人は、「事態は完全に把握している」と優秀な頭脳で考えがち。何でもそうだが、ここに落とし穴が沢山ある。。。(ビジネスでよくある「No problem」と報告上がってきたら「Problem」を考えた方がいいとの格言とまんま一緒です!)

難民問題でもあり、優秀なテクノクラートに対しての重要な戒めがあって、とても考えさせられる作品でした。

こちらも家族で読んだのですが、とても考えさせられた。
自分自身が対峙しても、同じようなミスを犯しそうで怖い。それにしても「愛(love)」って素晴らしいね。

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