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クローン技術の倫理的問題を突いた「わたしを離さないで」

<SF(19歩目)>
ノーベル文学賞受賞者の代表的なSF作品で、生物工学の進歩と人間の関係を考えてみる。

わたしを離さないで
カズオ イシグロ (著), 土屋 政雄 (翻訳)
早川書房

「19歩目」はSFテイスト漂う、文学作品です。

作者のカズオ・イシグロさんはノーベル文学賞受賞者であり、その作品の精度は素晴らしい。
そして、とても美しい文体であり、読後に失望しない作家です。

この作品はベストセラーでもあり、駄文で紹介することは避けます。
間違いなく、誰が読んでも素晴らしい作品の一つです。

この作品の透き通った文体の彼方に、見つかるものは、私には「オリジナルとは!?」でした。

医学研究には「倫理規定」があり、「科学的・医学的」に出来るが踏み込まない領域があります。

以前に山中伸弥先生の講演に伺ったことがあるのですが、「何故?IPS細胞の研究を進めるのか?」にもつながるのですが、「再生細胞で臓器をつくる」ことの難易度は高い。

それに突き進む一つの理由は、「クローン技術による移植」が倫理として許されるものではないとのことです。

この「わたしを離さないで」とSF界の巨匠のグレッグ・イーガンさんの短篇集「プランク・ダイヴ」に収められている「エキストラ」は科学研究を目指す若者にとっても考えさせる作品です。

登山で言うと「直登ルート」があっても、「直登ルート」を突き進んでいいのだろうか?を考えさせる作品です。

「オリジナル」を生かすための、一つの技術の先に「オリジナルっていったい何なんだ!?」を深く考える契機になります。この作品が2000年に書かれていることに注目です。完全に科学技術が追いついてきていて、まさに旬になっています。

各種の「科学」や「技術」がブレイクスルーしそうな現代。
文学作品、あるいはSF小説として楽しみながら、深いところを家族で話し合う時に役立つ作品です。

おススメです。

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