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自賠責保険が支払われない・・・・!

自賠責保険に加入していても、被害者側に重大な過失があると減額される「重過失減額」があることを別記事で説明しましたが、全く支払われない場合もあるのです。


自賠責保険は自動車事故によるケガのすべてを無条件で補償するものではありませんので、今回はそのことをちょっと触れますね。
なお、ここでは過失割合にかかわらず相手自動車の自賠責保険に請求する者を「被害者」、請求される者を「加害者」とします。

|無責事故?

100%被害者の責任で発生した交通事故のことを「無責事故」といいます。

事故で死傷した被害者の過失が100%と認定された場合には、相手は加害者とみなされず相手方の自賠責保険に対して請求をすることができません。

|無責事故の要件

無責事故として認定される条件としては、次の3つがあります。

○ 加害者が自動車の運行に関して注意を怠らなかった場合
○ 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があった場合
○ 自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかった場合

これらの条件を加害者側が証明した場合に無責認定されることがあります。

|無責事故の3要因(交通事故の事例)

上記のような無責事故認定の要件がありますが、過去の判例により次のような場合に加害者の無責事故として認定されます。

⑴ 赤信号無視による事故
信号機のある交差点で、Aが赤信号無視で進入したため青信号で交差点に入ったBと衝突、Aが死傷した場合

(イラスト;自動車保険料率算出機構「自動車保険の概況」から転載)

⑵ 追突事故
脇見運転等により正常に停止していたB車に追突したAが死傷した場合

(イラスト;自動車保険料率算出機構「自動車保険の概況」から転載)

⑶ センターラインオーバーによる事故
Aが中央線をはみ出して対向車線に飛び出し対向車Bと衝突。はみ出したA側が死傷した場合

(イラスト;自動車保険料率算出機構「自動車保険の概況」から転載)

に「無責」と認定されているいます。
ただ、車同士の交通事故なら双方に過失があることが多く、片方だけ全く過失がないということはほとんどないかと思います。

上記の信号無視の場合でも、信頼の原則で青信号側は保護されますが、一方で「交差点安全進行義務」などもあったりします。のでケースバイケースなのですが、あくまでも死傷した車側に100%の過失ありと認定された場合には相手側の自賠責は「無責」ということになります。

|支払い対象外事故

自賠責保険は、
① 自動車の運行によって他人を死傷させ
② 加害者が法律上の損害賠償責任を負った場合の損害

について支払う保険です。
このため、次のような場合にも自賠責保険は適用されません(対象外)。

⑴ 加害者(賠償責任を負う者)がいない事故
自ら電柱に衝突したような、いわゆる自損事故で死傷をした場合には自分の自賠責は対象外であり、賠償責任を負う加害者がいない。

⑵ 自動車の運行によって死傷をしたものではない場合
駐車場に止まっている自動車に、スケートボードで遊んでいた子供が衝突して死傷をしたとき(駐車してある車は運行中ではないため)。

⑶ 被害者が「他人」ではない場合
車の所有者の同乗する自動車を友人が運転中に自損事故を起こし、その自動車に同乗していた自動車の所有者が死傷したとき。
※被害者所有の車による事故であり、被害者は「他人」とはいえない。

このほか、悪意による事故や同一の自動車に複数の自賠責保険が契約されている場合も自賠責保険で支払われないことがあります。

詳しくは約款の「免責事由」を確認するとよいです。

(重複契約の場合の免責):自賠責法第八十二条の三 

(自動車保険料率算出機構「自動車保険の概況」から転載)

|無責事故の補償は自身の任意保険を確認!

無責事故の認定を受けると自賠責保険や相手の任意保険から損害賠償を受けることができません。
ではどうしたらよいでしょうか?

そこで、活躍するのが自身の加入する「任意保険」です。
まずはその契約内容を確認してください。
詳しくは別の機会に書きますが・・・

最近では、任意保険である自動車保険に「人身傷害補償保険」「自損事故保険」、「搭乗者保険」が付いていると思います。付いていればこちらから補償を受けることができます。

さらに、労災保険や医療保険、生命保険から保険金が支払われるケースがあります。

|まとめ

以上、前回の重過失免責、無責事故などの場合には自賠責保険に加入していても、自賠責保険からの支払保険金が減額されたり全く受けられないことがあることご理解いただけましたでしょうか。

安全運転に努め、交通事故を起こさないことが重要ですが、自賠責保険や任意保険について理解しておくことも大事ですね。
次回は、自賠責の請求に関して書きます。

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