ダイデラモネ🏳️‍🌈

アマゾンに書いたレビューからの転載がメインですが、たまにオリジナルも書きます。また、転…

ダイデラモネ🏳️‍🌈

アマゾンに書いたレビューからの転載がメインですが、たまにオリジナルも書きます。また、転載は時事にあわせる場合もあります。出版関係の仕事をしていたことがありますが今は足を洗っていますので、読者の立場から出版界のあれこれについて書くこともあります。

最近の記事

清原なつのの『じゃあまたね』を読みながら、10代の頃の精神的「背伸び」について考える―読書月記52

(敬称略) 60代以上の人なら、1969年にヒットした『フランシーヌの場合』という歌を覚えている人も多いだろう。私の場合、歌詞の内容の詳細について知ったのは大人になってからだが、歌そのものと、抗議の焼身自殺ということだけは、子どもながら知っていた。 先日、清原なつのの自伝的作品『じゃあまたね』(kindle版)を読んでいたら、この曲の話が出てきた。『じゃあまたね』では、清原は個人的なことはもちろん、社会的事件、同時期の少女マンガや少年マンガで印象に残った作品に触れているが

    • 黒い霧事件と赤ちゃんあっせん事件と十一谷義三郎の『花より外に』―読書月記51

      (敬称略) 久々に「野球賭博」という言葉がネットに溢れたのを見てビックリした。ただ、私の中では「野球賭博」という言葉は「八百長」という言葉とセットだ。私の子ども時代、1960年代末から1970年代初頭、プロ野球界を賑わせたこの二つの言葉は、最終的に「黒い霧事件」という言葉に集約されていく。 日本のプロ野球では、1970年代には様々な世間を騒がせる事件も多かったが、やはりこの「黒い霧事件」ほどショッキングなものはなかったと思う。ただ、1980年代に入ると「黒い霧事件」そのもの

      • 『鬼の筆』を読みながら考えた、映像化の功罪―読書月記50

        (敬称略) 先月、本(活字メディア)と映画(映像メディア)を中心に論じた『夢想の研究』について書いたが、そのすぐ後、脚本家・映画監督の橋本忍についての評伝『鬼の筆』を読んだ。日本映画に関して多少の知識があれば、橋本忍の名を知らぬ人はいないだろう。橋本は多くの作品の脚本を手掛けているが、原作ありの作品がかなり多く、そういった意味では『夢想の研究』の内容と通じる部分があったし、橋本の原作の読み込み、脚色における〝腕力〟など興味深いことが多かった。 私が最初に橋本の名を知ったの

        • 瀬戸川猛資の『夢想の研究』を再読しながら考えたアレコレ―読書月記49

          (敬称略)             瀬戸川猛資の『夢想の研究』(創元ライブラリ版)を再読した。最初に読んだのは、1999年に同書が刊行されて間もない頃だったと記憶している。ときどき、部分的に拾い読みをすることはあったが、通読するのはかなり久しぶりだ。 創元ライブラリ版が刊行された時点で、著者は鬼籍に入っていた。著者はミステリや映画に関する文書を多数発表していた。しかし、私は映画も観ていたしミステリも読んでいたが、どういうわけか著者が存命の間に、その文章に触れたことはなく、そ

        清原なつのの『じゃあまたね』を読みながら、10代の頃の精神的「背伸び」について考える―読書月記52

          2023年に読んだ本ベスト5―読書月記番外編

          『終盤戦 79歳の日記』メイ・サートン著(みすず書房) 『ニジンスキー 踊る神と呼ばれた男』鈴木晶著(みすず書房) 『大いなる錯乱 気候変動と〈思考しえぬもの〉』アミタヴ・ゴーシュ著(以文社) 『暗闇の効用』ヨハン・エクレフ著(太田出版) 『昆虫絶滅 地球を支える生物システムの消失』オリヴァー・ミルマン著(早川書房) 『昆虫絶滅』のみ読んでいる最中。『世界は五反田からはじまった』星野博美著(ゲンロン)も忘れ難い。

          2023年に読んだ本ベスト5―読書月記番外編

          買った本にまつわる「記憶」と「記録」―読書月記48

          (敬称略) マンガ家の篠有紀子が初期に発表した作品に『冬の日の1ページ』がある。篠の作品のなかでは、私が最も好きなものだ。コミックス『フレッシュグリーンの季節』に収められた作品で、1979年の「LaLa」2月号に掲載されたのが初出だ。 この作品の中には好きな台詞がいくつかあるが、その一つに「いつもと違うことすると いつもは見えないものが見えてくるから」というものがある。ごみなどが落ちていて普段はきれいとは思えない海を早朝に見たときに、その美しさに驚いた主人公に、義理の姉妹で

          買った本にまつわる「記憶」と「記録」―読書月記48

          ミステリのトリック集とコスパ重視―読書月記47

          (敬称略) 最近もあるのかどうか分からないが、私が子どもの頃に、ミステリのトリックだけを集めて解説した本があった。もちろん、私が読んだのは子ども向けだ。犯人の名前はなかったと記憶しているが、トリックの紹介にはイラストがあるものが多く、それに加え、ご親切に作品名まで書かれていた。子どもの頃の私は、この本を読んで後々どんなことになるかなんて考えずに、この手の本を何冊か読んだ記憶がある。覚えていないものも多いけど、いくつかは強く脳裏に刻まれた。 以前にも書いたが、私はミステリを

          ミステリのトリック集とコスパ重視―読書月記47

          古書を買うとき、売るときのアレコレ―読書月記46

          (敬称略) 何がきっかけだったのか忘れたが、少し前に斎藤栄の『水の魔法陣』を読み返した。最初に読んだのは30年以上も前だと思う。読んだ文庫の解説によると、『火の魔法陣』『空の魔法陣』の3部作だということなので、そちらも、ネットで古書を、それぞれ上下セットを見つけ購入し、読むことにした。この2作も以前に読んでいるが、3作ともほぼ記憶にない。 それぞれ共通する登場人物がいるものの、独立して読める作品にはなっている。『水の魔法陣』では、マンションの「水」から始まって様々な水の問題

          古書を買うとき、売るときのアレコレ―読書月記46

          個人出品が増加する古書市場―読書月記45

          (敬称略) 8月終わりぐらいから、蔵書整理を始めた。終活まではいかないが、リタイア後のことも考えてのことで、7~8年かけてのことになりそうだ。基本的には4~5割程度の本を処分するつもりだ。 蔵書整理については、3年前の「読書月記番外編」でも触れているが、基本的に今回も売るのは「ヤフオク」「ブックオフ」「日本の古本屋」になる。個人出品先としては「メルカリ」もあるが、購入先としてはいいが、固定価格なので値付けが難しい部分もあって今回はスルーした。今のところ、「ヤフオク」一本であ

          個人出品が増加する古書市場―読書月記45

          『大島弓子選集8 四月怪談』―Amazonレビュー欄から消されたレビュー1

          本選集第1巻末尾に付された「作品リスト」を開き、1978年5月から1979年6月までに発表された作品を見てみると、感嘆してしまう。もちろん、この前にも、この後にも、傑作がないわけではない。それでも、この14か月間に発表された作品の凄さは、やはり特別だ。樋口一葉に「奇跡の十四か月」があるが、大島弓子にも「奇跡の十四か月」があったのだろう。 本巻には、その時期に書かれた作品4作を含め8作が収録されている。 なかでも「パスカルの群」は特に好きな作品だ。公平は「おれのもっていないも

          『大島弓子選集8 四月怪談』―Amazonレビュー欄から消されたレビュー1

          「月刊みすず」と「STORY BOX」の紙版が終刊号を迎えた―読書月記44

          (敬称略) 「月刊みすず」が8月号で、「STORY BOX」が9月号で、それぞれ紙版を終了し、WEB版へ移行する(ともに発行は8月中)。両誌の移行は、現今の雑誌の厳しい状況を反映していると考えていいだろう。 私の読書の中心は書籍で、雑誌にはそれほど思い入れはないものの、それでも1980年以降、40年以上に渡って、途切れることなく最低でも月に1冊以上の雑誌を買い続けてきた。普通の活字の雑誌、出版社のPR誌、マンガ雑誌などを含め、20ぐらいの雑誌をすべて同時ではないものの、定

          「月刊みすず」と「STORY BOX」の紙版が終刊号を迎えた―読書月記44

          『Slowdown 減速する素晴らしき世界』を読んで考えたこと二つ―読書月記43

          (敬称略) 『Slowdown 減速する素晴らしき世界』を読んだ。興味深い指摘が多い本だった。ただ、中身の全体についての話ではなく、同書を読むことで思いついた二つのことについて書いてみたい。ちなみに、私はkindleで読んだが、紙の書籍だと540ページ、それなりの厚みだ。寝転んで読むには少し分厚いだろう。 まずは、第4章「データ-新しいものがどんどん減っていく」のなかでオランダの出版に関する部分だ。ここでは、オランダの16世紀後半以降の出版点数などのことに触れられている。

          『Slowdown 減速する素晴らしき世界』を読んで考えたこと二つ―読書月記43

          不世出の天才ダンサー、ニジンスキーの生涯を描くー『ニジンスキー―踊る神と呼ばれた男』(鈴木晶著/みすず書房)

          (敬称略 「はじめに」に「本書が対象にするのは」「ダンサーかつコレオグラファー(振付家)としてのニジンスキー」と書かれているように、マリインスキー劇場時代も含め、ニジンスキーの「踊り」の部分について詳しく描かれている。著者は四半世紀前に『ニジンスキー 神の道化』を書いているが、「あとがき」によると、「最初からもう一度全部書き直すことにした。ただし、前著をそのまま残した部分も若干はある」とのこと。同書を私は未読なので、その辺りのことを判断はできない。 生年、生誕の地、両親、

          不世出の天才ダンサー、ニジンスキーの生涯を描くー『ニジンスキー―踊る神と呼ばれた男』(鈴木晶著/みすず書房)

          ディアギレフにはまってバレエ本を集めているー読書月記42

          (敬称略) 6月26日あたりから、積読になっていた本の整理を始めた。フローリングの床に、ジャンルや著者なども関係なく、せいぜい判型や大きさを購入順に近い形で平積みにしていくという、まさしく〝積〟読状態。急に知りたいことがでてきたときや、前に買った記憶はあるけど、そろそろ読みたいと思って、探そうとしたときに、すぐに見つからず、不便極まりない。本棚もほぼ満杯状態。一応、本棚に並べる段階では、ある種の区分分けはしているが、前後に並べている場合、奥の方の書名が分からず、思ったほど探

          ディアギレフにはまってバレエ本を集めているー読書月記42

          蔦屋重三郎と須原屋市兵衛―読書月記41

          (敬称略) 2025年のNHK大河ドラマの主人公が、蔦屋重三郎(蔦重)になったというニュースが流れたが、蔦重のことを知らない人が意外に多いことに驚いた。東洲斎写楽を知っていても、彼を世に送り出した江戸時代のもっとも著名な出版人である蔦重の知名度は写楽に及ばないようだ。まして、同じ出版人の須原屋市兵衛を知る人はさらに少ない。須原屋市兵衛については読書月記でも幾度となく触れているが、『解体新書』などを出した、開明的な書肆である。もちろん、日本の出版史を少し調べると、18世紀前半

          蔦屋重三郎と須原屋市兵衛―読書月記41

          『始祖鳥記』から『コンニャク屋漂流記』へ―読書月記40

          (敬称略) 星野博美の『コンニャク屋漂流記』をようやく読み終えた。同書に関しては、記憶では2012年に最初に挑戦している。おそらく、2012年冒頭の「月刊みすず」の読書アンケート号で何人かが取り上げていたからだ。しかし、冒頭で挫折。さらに『みんな彗星を見ていた』を2016年に読んでいるが、その後に再チャレンジしているが、やはり冒頭で挫折。今年になって『世界は五反田から始まった』を読んだが、同書中で触れられていたにも関わらず、私は『コンニャク屋~』と縁がないと諦めていて、チャ

          『始祖鳥記』から『コンニャク屋漂流記』へ―読書月記40