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清原なつのの『じゃあまたね』を読みながら、10代の頃の精神的「背伸び」について考える―読書月記52
(敬称略)
60代以上の人なら、1969年にヒットした『フランシーヌの場合』という歌を覚えている人も多いだろう。私の場合、歌詞の内容の詳細について知ったのは大人になってからだが、歌そのものと、抗議の焼身自殺ということだけは、子どもながら知っていた。
先日、清原なつのの自伝的作品『じゃあまたね』(kindle版)を読んでいたら、この曲の話が出てきた。『じゃあまたね』では、清原は個人的なことはもち
黒い霧事件と赤ちゃんあっせん事件と十一谷義三郎の『花より外に』―読書月記51
(敬称略)
久々に「野球賭博」という言葉がネットに溢れたのを見てビックリした。ただ、私の中では「野球賭博」という言葉は「八百長」という言葉とセットだ。私の子ども時代、1960年代末から1970年代初頭、プロ野球界を賑わせたこの二つの言葉は、最終的に「黒い霧事件」という言葉に集約されていく。
日本のプロ野球では、1970年代には様々な世間を騒がせる事件も多かったが、やはりこの「黒い霧事件」ほどショ
2023年に読んだ本ベスト5―読書月記番外編
『終盤戦 79歳の日記』メイ・サートン著(みすず書房)
『ニジンスキー 踊る神と呼ばれた男』鈴木晶著(みすず書房)
『大いなる錯乱 気候変動と〈思考しえぬもの〉』アミタヴ・ゴーシュ著(以文社)
『暗闇の効用』ヨハン・エクレフ著(太田出版)
『昆虫絶滅 地球を支える生物システムの消失』オリヴァー・ミルマン著(早川書房)
『昆虫絶滅』のみ読んでいる最中。『世界は五反田からはじまった』星野博美著(ゲン
買った本にまつわる「記憶」と「記録」―読書月記48
(敬称略)
マンガ家の篠有紀子が初期に発表した作品に『冬の日の1ページ』がある。篠の作品のなかでは、私が最も好きなものだ。コミックス『フレッシュグリーンの季節』に収められた作品で、1979年の「LaLa」2月号に掲載されたのが初出だ。
この作品の中には好きな台詞がいくつかあるが、その一つに「いつもと違うことすると いつもは見えないものが見えてくるから」というものがある。ごみなどが落ちていて普段は
ミステリのトリック集とコスパ重視―読書月記47
(敬称略)
最近もあるのかどうか分からないが、私が子どもの頃に、ミステリのトリックだけを集めて解説した本があった。もちろん、私が読んだのは子ども向けだ。犯人の名前はなかったと記憶しているが、トリックの紹介にはイラストがあるものが多く、それに加え、ご親切に作品名まで書かれていた。子どもの頃の私は、この本を読んで後々どんなことになるかなんて考えずに、この手の本を何冊か読んだ記憶がある。覚えていないも
古書を買うとき、売るときのアレコレ―読書月記46
(敬称略)
何がきっかけだったのか忘れたが、少し前に斎藤栄の『水の魔法陣』を読み返した。最初に読んだのは30年以上も前だと思う。読んだ文庫の解説によると、『火の魔法陣』『空の魔法陣』の3部作だということなので、そちらも、ネットで古書を、それぞれ上下セットを見つけ購入し、読むことにした。この2作も以前に読んでいるが、3作ともほぼ記憶にない。
それぞれ共通する登場人物がいるものの、独立して読める作品
「月刊みすず」と「STORY BOX」の紙版が終刊号を迎えた―読書月記44
(敬称略)
「月刊みすず」が8月号で、「STORY BOX」が9月号で、それぞれ紙版を終了し、WEB版へ移行する(ともに発行は8月中)。両誌の移行は、現今の雑誌の厳しい状況を反映していると考えていいだろう。
私の読書の中心は書籍で、雑誌にはそれほど思い入れはないものの、それでも1980年以降、40年以上に渡って、途切れることなく最低でも月に1冊以上の雑誌を買い続けてきた。普通の活字の雑誌、出版