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#24 スープカレーについての愛を語る

【注記】
今回から3回に分けて、最近訪れた北海道体験記が中心に描かれ、ほんのちょっぴり愛かもしれないなぁと思ったことをつらつら書いています。

 せっかく長い休みができたので、海外は行くことが難しいにしてもどうせなら少し遠い場所へ行こうと思い、最終的に選んだ場所は札幌であった。たまたま時期的に安いチケットが手に入ったということもあるが、元来どこかへ行かないといられない性分なのだ。我ながら、少し病的だと思う。気ままなひとり旅。

 ちょうど他の人より1日早く休みに入り、早朝の明け方の飛行機に乗る。LCCは重量制限が厳しいことをすっかり忘れていた。なんとかかんとか7kg以内に収めたものの、あれそうするとお土産買えないのでは?という本来もっと初めに考えねばならない問題と直面し、頭が真っ白に。とりあえず脇へ置いておく。

 滑走路をしばらくうろうろして、15分後くらいで離陸する。その瞬間が、わたしは好きだ。何か新しいことが始まる予感がする。体が浮遊して、どこか遠い場所へと運ばれていく感覚。今回はあまり下調べをせずに現地へ飛んだ。なぜなら、旅のテーマは明確だから。ズバリ、「スープカレー」である。

 きっちり1時間程度で新千歳空港へ到着する。最初に思ったのは、「え、、寒……!」ということだった。それなりに厚着はしたものの、北海道の春をわたしはみくびっていたのである。若干ブルブルしながら、電車に乗り札幌駅へ。

*

1日目

 札幌から徒歩20分ほどの場所に宿を取った。だいたい4日間くらいの滞在である。前に訪れたのがいつのことかパッと思い出せないくらい最後の訪問日からだいぶ日が経っているわけだが、時計台も電波塔もその姿のままで鎮座しておられた。

 早速宿に荷物置いて、あらかじめマークしておいたカレー屋さんへと向かう。滞在中わたしは1日に4食くらい食べてやるぞーという意気込みに燃えていた。初日はだいぶ体力が有り余っているので、宿から20分ほどの場所にあるCURRY YA!CONGというカレー屋さんへ。開店と同時に行ったにも関わらず、2時間待ちと言われた。

「へ、2時間ですか?まだ開店したばかりだと思うのですが」(若干震え声)

「うん、そうだよ2時間。待てないならやめておきな」

 な、なんと。悔しいのでいっそ待とうかとも思ったが、2時間……自分が待っている姿を想像したが、明らかに無理だと思ったので、

「わかりました。今日は諦めます」とすんなり引っ込んだ。うう、悔しい。

 ということで泣く泣く、そこから10分程度の場所にあったメディスンマンというカレー屋さんへ。そこも元々チェックしていた店だった。店内には、マスターの趣味なのかインディアン好きがみて取れるフランキーな内装だった。うん、美味い。ちょっと痺れる味わい。

 前日から何も飲まず食わずの状態だったので、そのまま2軒目ハシゴ。お次は、ラマイというスパイスカレー屋さん。正直最初扉がガッチガチに閉まっていて、やっているのか不安だったのだが、中に入ってみるとなんともエキゾティックな異空間が広がっていた。

 カレーも申し分なし。野菜がゴロゴロ入っていて、寒さの中で震えた体がゆっくりと温まっていく。スープカレーの何がいいって、やっぱりスープって、人の体内だけでなくて心も整えてくれるところだと思っている。不安な時に、すっと横から「これ飲んで」と言われたら、それだけで心の底からその人を信じられる気がする。優しさとスパイスが溶け込んでいる。

 3軒目も行こうと思ったが、その時点で、もうすでに自分のお腹がだいぶ限界に近いことに気がつく。まさかこんなに胃袋が小さくなっているとは。衝撃。

2日目

 またもやCURRY YA!CONGにチャレンジ。人間とは不思議なもので、一度お預けを食らうと余計に食べたくなってしまうものらしい。今度は開店1時間前に店の前に並ぶ。それでもすでに1人先客がいた。恐るべし。

 流石に今回は開店と同時に入ることができた。入店してから10分ほどして料理が運ばれてきた。最初、スープを飲むとあれなんか薄い……?と首を捻る。次いで野菜を食べたところで、思わず目が飛び出した。

 あまりに野菜のレベルが高かったからだ。スープカレーは素揚げした野菜を入れるので、比較的野菜本来の味が出やすいのだが、それでもCONGカレー(名前省略、キングコング?)は、もう本当に味が段違いに新鮮なのである。

 イメージしづらいと思うので補足すると、まるでもぎ立ての野菜の味がするのだ。ついさっきまで、植物として息をしていたことを思わせる味わい。ピーマンはきちんとした苦さがあるし、トマトや男爵芋もしっかりうまい。こんな食体験をしたことは初めてかもしれない。

 最初の悔しい思いはどこへやら、なんだか心が満たされていた。最初薄味だなと思っていたスープの味も、野菜を食べていくとじわじわとスパイスの味が滲み出てくる。全て計算された味だったのか。

 お店を出たあと、爽やかな汗が滴り落ちていた。充足感があって、風が気持ちよかった。そのままの勢いで4万歩歩いたあと、夕方はこうひいはうすというスープカレー屋さんへ。

 こちらはどちらかというと故郷の味、という感じ。喫茶店っぽい。クラシックジャズが流れていて、時計がコチコチと時を刻む。運ばれてきたチキンカレーは、柔らかくて甘かった。食後のコーヒーが味を引き締める。

 結局旅は往々にして予定通りには行かず、スープカレー食道楽はここまで。3日目は小樽に行ったし、4日目はラムを食べに行った。所詮人生こんなもの。行き当たりばったりでわたしは生きている。


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