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95年目の恩返し・後編『太陽の国』『月と星の国』

「イラク軍は48時間後の19日午後8時38分、日本時間20日午前2時以降、イラン上空を航空禁止空域とし、上空を飛ぶ全ての飛行機を無差別に攻撃する」

1980年(昭和55年)。

シャトル・アラブ川の領有権を巡る争いから始まったイラン・イラク戦争は、同年9月20日、イラク空軍の本格的な攻撃を機に全面戦争に突入。

次第に激化していき、お互いが都市攻撃をするまでになりました。

そんな中、イラク政府は上記のような信じられない声明を出したのです。

日本の航空機はイランに乗り入れておらず、当時、日本では海外に在留する日本人を救出・避難させる為に自衛隊機を海外へ派遣することは、社会党や共産党などの左系野党の反対により法整備ができず不可能でした。

また日本航空の救援機派遣も、日本航空の組合の反対や外務省の状況判断の甘さから、事実上不可能になってしまいました。

陸路・海路からの脱出も検討されましたが、共に危険が伴うため、こちらも事実上不可能。

残された手段は外国の航空機による脱出でした。

当時、イランのテヘランに乗り入れていたのは、

イギリス、西ドイツ、スイス、フランス、

オーストラリア、ソ連、トルコの7カ国。

しかし、当然ながら各国の航空会社は自国民を最優先。

日本人は、なかなかチケットは取れず、または断られ、当日になっても215名が取り残されていました。

この時、残った日本人のために救援機を出してくれたのが

「トルコ」だったのです。

トルコのイスタンブールにいた伊藤忠商事の森永堯氏が親交のあったオザル首相に救援を要請。

また イランの野村大使から要請を受けた、同じくイスメット・ビルセル、駐イラン大使からも連絡を受けていた事もあり、オザル首相は救援機を出す事を承諾してくれたのでした。

オザル首相は、森永氏にこう語ったそうです。

「我々はあなた方に恩返ししなければなりません」

こうして、トルコ航空による日本人救助のための特別機が出される事になりました。

トルコ航空で特別機に乗るパイロットを募った所、全員が手を上げたそうです。

その中から選ばれたのは、

オズデミル機長とギョクベルク副機長。

オズデミル元機長(この時は退職)は、後日、日本のテレビ番組が、この事を取り上げられた時、

「任務を辞退しようなどとは思いもしなかった。トルコ国民として日本人には親近感があった。日本人を愛している。このような任務がまたあれば、喜んでやるだろう」


と語ったそうです。

こうして、トルコからの救援機に乗って、残された日本人は無事救出されました。

実にタイムリミット1時間15分前でした。

そして、この話にもう一つエピソードがあります。

実はトルコの航空機には、日本人を優先するために約500人のトルコ人が乗れなかったのです。

彼等は、テヘランからイスタンブールまでフルスピードで3日以上かかる中を陸路を自動車で脱出したのでした。

しかし、この事でオザル首相への非難・批判は一切ありませんでした。

ほとんどの国民が、エルトゥールル号事件の事を知っていたからです。

官民あげて行なわれた、エルトゥールル号生存者への救援活動。

この活動の主役は、やはり大島の人達ではないでしょうか。

純粋に、生き残ったトルコの人達を助けたいという思いから、雨の中、崖下で助けを求める負傷者の救出活動。

僅かな衣服、非常食も含めた貴重な食料を提供し看護、そして遺体を手厚く供養した事が、生存者の心を打ち、それが伝えられ、今でもトルコの人達が日本人に感謝と親愛の念を持ってくれている、きっかけになったのではないかと思います。

大島は昭和33年に串本町と併合され、その串本町は、その後も幾度かの合併併合をくり返し、現在は東牟婁郡串本町になりました。

日本の歴史から忘れ去られた「エルトゥールル号事件」ですが、大島が串本町と変わった現在でもトルコと変わる事のない交流が続いています。

2015年に日本とトルコの友好125周年を記念して、このエピソードを映画化した『海難1890』が公開されました。

また、長崎市は「エルトゥールル号」の遭難事件にちなんで9月16日を「トルコライスの日」にしようとしたらトルコ政府から、思いっきり怒られました。

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参考資料・サイト

『東の太陽 西の新月』
山田 邦紀・坂本 俊夫 著 現代書館 版

串本町役場HP
http://www.town.kushimoto.wakayama.jp/

トルコ大使館HP
http://www.turkey.jp/jp/indexJP.htm

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