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いろんな感想文

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森羅万象への感想。読書感想文含む。
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#読書感想文

読書感想文:最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―

先日、1枚の絵をきっかけに芸大を目指すようになった高校生を描くアニメ「ブルー・ピリオド」を観ました。アニメの中では東京藝大美術学部への入学試験の様子が詳しく描かれ、全く知らなかったその世界、「東京藝大」がとても印象に残りました。 そんな時、目にしたのがこの本です。タイトルに惹かれて読んでみました。 面白いけどそれだけじゃない 本の内容は、主に藝大生へのインタビューで構成されています。文章はとても読みやすく、語り口も親しみやすくて、どんどん読んでいけました。 東京藝大の

読書感想:「スノウ・クラッシュ」:メタバースの語源となった小説

メタバース内に現れた新手のドラッグ「スノウ・クラッシュ」の謎を追う、ピザ配達人であり、凄腕ハッカーでもあり、日本刀を背負っている主人公。謎を追ううちに、とんでもなく大きな事件に巻き込まれ、マフィアや元カノやスケボー少女とともにその事件に立ち向かってゆく物語。 「メタバース」という言葉を初めて使った小説とのことで、その点に興味を惹かれて読んでみました。 「スノウ・クラッシュ」はこんな本メタバースと現実の世界を行き来しながらの近未来SF冒険活劇です。最初から最後までノンストッ

読書感想:「こじらせ美術館」

ゴッホに代表されるような「こじらせ」た人生を送った画家を取り上げ、「人はなぜ絵画を描くのか」「人はなぜ絵画を愛するのか」に迫ろうとする真面目な本です。 本文ではカラヴァッジョ、クリムト、モディリアーニなど12人の作品と、そのこじらせた人生を紹介しています。 簡潔に22人の画家のこじらせ具合を紹介したコラムや、奇妙なエピソードを持った 6作の絵画とその作者を紹介した「こじらせ名画館」というコーナーが掲載されていて、それぞれに読みごたえがありました。 ただ、タイトルを見て、も

読書感想:「怖いへんないきものの絵」

『怖い絵』シリーズでおなじみの中野京子さんと、『へんないきもの』の早川いくをさんの対談という形で、ちょっと変わった絵画を読み解いていく本です。 「画家はなぜこんな絵を描いたんだろう?」という問いを発せずにはいられない絵 16点。 共通点は絵の中に生き物が描かれていること。 中野京子さんと早川いくをさんのやり取りが楽しい出てくる絵がひとつひとつ面白いし、絵を巡っての中野京子さんと早川いくをさんのやり取りがとても楽しい本です。 早川さんの美術素人的視点と、中野さんの玄人解説を

読書感想:天才たちの日課:高い創造性と生産性を支えた習慣とは?

天才たちのクリエイティビティの秘密はその日課にあったのでしょうか?「天才たちの日課」という本にその秘密を探りました。 350ページ程度のやや厚めの本に 161人もの作家、画家、音楽家、科学者などの習慣が記されており、何時に起きてどこでどんな風に仕事をしたのか、創作活動において何に悩んでいたのかなどを、インタビュー記事の引用などを交えて読むことができます。 一人につき1、2ページのペースで紹介される、人それぞれ実に多様な習慣や悩みは、その人の "人となり" が見えてくるよう

「複製技術時代の芸術」とNFTとデジタルの未来

永松歩さんの「CryptoArtの論点」という記事を読み、その中で言及されているベンヤミンの「複製技術時代の芸術」に興味が湧き、関連書籍を読んでみました。 CryptoArt、NFT とデジタルの未来に対して、私は自分の中にモヤモヤとしたものを感じており、それをはっきりさせたいという動機を持って読みました。 「複製技術時代の芸術」を読んで時は20世紀初め、写真や映画といった複製技術を備えた新しいメディアが広まった時代。技術の発展により精巧なコピーを大量に作り出せるようにな

読書感想:「三体2:黒暗森林」

読んだ後、夜空を仰ぎながら心配になってきました。「あれ…? ボイジャーってやっちゃってるよね? どうすんだろ、あれ…」 「三体2:黒暗森林」は、SF小説界最高の賞とされるヒューゴ賞受賞の傑作エンターテイメント・超弩級・徹夜必至小説「三体」の続編で、上下2巻からなる小説です。 三体シリーズの感想をネタバレ無しに書こうとすると、どうしても「面白い」とか「凄い」とかだけになってしまいますので、この感想も「凄い」とか「面白い」とかだけ書くことにします。 第一作目の紹介や感想をこ

読書感想:「なぜ、これがアートなの?」

いつも「アートって何かしら?」と思っている私にうってつけの本! 「なんじゃこりゃ?」と感じがちの現代美術を題材として、アートとは何なのかを考えていく本です。 著者はアメリア・アレナスさん。ニューヨーク近代美術館の教育プログラムの担当者でギャラリートークの達人だそう。 そのせいか文章は平易で堅苦しくなく、スイスイと読んでいけます。 題材となる 69点の美術作品は全てカラーで掲載されています。 本の大きさからしても鑑賞目的ではなく参考としての掲載ですが、これがあるのは本当にあ

読書感想:ユーモラスで考えさせられてドキッとする「タイタンの妖女」

カート・ヴォネガット 1959年の小説「タイタンの妖女」。 とても面白く一気に読めました。 もし自作を一冊再読するなら?という質問に、ヴォネガットは「書いてるとき一番楽しかったから」という理由でこの本を挙げたそう。 人生の意味全体のテーマはズバリ「人生の意味」。 火星人がなぜそのようなことをしたか?それは奴が…。しかしその奴も、いや実は人類そのものが何万年もの間あの…と物語はどんどん壮大に面白くなっていき、その中で人間、社会、運命、生き方、幸せなどいろいろ考えさせられる

読書感想:パウル・クレー 造形思考(上)

「やばい…。何言ってるか全然わからない…」 それも感想ですよね。 パウル・クレーの絵画理論書いつまでも「アート」って何かしら?って言ってないで勉強しようシリーズ、今回はこの本です。 パウル・クレーの造形についての考え方を収録した本で、上下巻合わせて 820 ページの大ボリューム! バウハウスでの講義ノートをもとに、説明用に描かれたスケッチや関連する作品などの図説も豊富に収録されています。 これを読めば「アート」のなんたるかを少しは理解できるのでは?感性では無理でも理屈な

読書感想:もっと知りたいカンディンスキー 生涯と作品

さっぱりわからないけど何故か惹かれる抽象絵画。 それが理解できるようになるんじゃないかと手に取ったこの本「もっと知りたいカンディンスキー 生涯と作品」。 果たして私は抽象絵画がわかるようになったのでしょうか?🤨 どんな本か抽象絵画の創始者といわれるワシリー・カンディンスキーの生涯を追いながら、その時々の代表的な作品、他の作家との関わりなどを解説していく本です。 作品が生まれた時代背景や個人的事情、作品同士の繋がりなどの説明もあり、作品をいろいろな視点から見せてくれます。

読書感想:知識ゼロからの近代絵画入門(西洋絵画史でいちばん面白い100年)

いつまでも「アート」って何かしら?って言ってないで少しは勉強しようシリーズ、今回はこの本を読みました。 19世紀から20世紀初頭にかけての西洋絵画の歴史をわかりやすくまとめた本、著者はテレビ「ぶらぶら美術・博物館」などでもおなじみ山田五郎さん。 副題に「西洋絵画史でいちばん面白い100年間」とあるとおり、とてもエキサイティングで面白い本でした。 近代絵画完全に理解した!ロマン主義から印象主義、象徴主義などを経てダダイズム、シュルレアリスムに至るまでの変遷を辿りながら、そ

読書感想:なぜかしっくりときた「日本人にとって美しさとは何か」

「アート」って何かしら?🤔 といつもなんとなく感じてるんですが、ボーッと考えてても埒が明かないので、ちょっと真面目に勉強を始めようと思ってこの本を手に取りました。 高階 秀爾さん著「日本人にとって美しさとは何か」。 どんな本?美術史学者、美術評論家である高階 秀爾さんの講演の記録、美術展図録や新聞・雑誌等に掲載された文章、論文などで構成された本です。 日本と主に西欧それぞれの美に対する感じ方・捉え方の比較をしつつ、日本画、日本人作家による西洋画、詩句、日本の風習などの解説

読書感想:まるで映画を読んでるよう「三体」

昨年から話題だった中国 SF「三体」、続編が出るというので読んでみました。 なるほどこりゃ面白いや! これはSFなのかな?「三体」は 2006年に雑誌の連載小説として発表され、2015年には SF小説界最高峰の賞とされるヒューゴ賞をアジア作品として初めて受賞しました。 著者は劉慈欣(リュウ ジキン)さん。小説は本業のエンジニア業の傍らで書いているそう。それでヒューゴ賞獲っちゃうんだからとんでもない人ですね。😅 この本、まずエンターテインメントとしてとても面白かったです。