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こどもの不安・強迫性障害の解決に取り組む "InStride Health" のシリーズB資金調達!【3/27: 米国デジタルヘルスニュース】

米国において、子どもたちの心の健康・メンタルヘルスは大きな課題となっています。不安症やOCD(強迫性障害*)などの精神疾患は増加傾向にあり、多くの若者が苦しんでいます。しかし、従来の治療法は、医療従事者不足、数か月にも及ぶ予約待ち、そもそも保険でカバーされることが少ない、などの問題を抱えていました。

*OCD/強迫性障害とは:
「手が汚いんじゃないか」「鍵を閉めたかしら」などの考えが繰り返し頭に浮かんできて、手を洗う行為や鍵が閉まっているかを確認する行為がなかなか止められないということはありませんか。止められなくなって日常生活や学業、仕事に影響が出てしまっている場合、強迫性障害の可能性があります。強迫性障害は思春期後半や成人期の初期に発症しやすく、成人40人に1人にみられる意外に身近な障害です。原因はまだ明らかになっていませんが、脳の中の神経伝達物質の調節障害や、脳のある部分の活動性の異常が影響していると言われています。

引用:国立精神・神経医療研究センターウェブサイト

今回する紹介する米国のスタートアップであるInStride Healthは、こうした課題を解決するために、バーチャルケアモデルによる子供向けのメンタルヘルスケアサービスを提供しています。InStride Healthの創設者であるMona Potter博士とKathryn Boger博士は、ハーバード大学でトレーニングを積んだ臨床医であり、小児精神医療の変革というビジョンを掲げて同社を設立しました。同社エビデンスに基づいた治療法で、子どもたちの不安症やOCDに効果的に対処するとともに、多くの方に経済的負担を抑えたサービスを届けるために保険を使ったオンライン診療を実現させようとしています。

今回、3月27日に発表されたシリーズBの資金調達ですが、著名なVCの一つでもあるGenral Catalystが新たに投資家として加わり、また、既存投資家も前回ラウンドから引き続き参加しております。

About "InStride Health"

・国:米国
・創立年:2021年
・資金調達ラウンド:シリーズB
・主な投資家:General Catalyst (このシリーズBから参画、リード投資家)
・総調達金額:$56M
・サービス:小児の不安症やOCD(強迫性障害)治療ためのバーチャルメンタルヘルスケア
・事業モデル:B2BC - Health Plan(健康保険会社)経由

子供のメンタルヘルスを取り巻く米国での課題

1. 高い罹患率: 米国では、18歳までに約3分の1の若者が不安障害やOCDを発症すると推定されています。これは、子供たち自身、家族、そして医療システムにとって大きな課題となります。

2. 専門治療へのアクセス制限: これらの疾患の専門家は不足しており、6ヶ月以上の予約待ちが発生することも少なくありません。さらに、保険適用されるケースは米国では稀です。

3. 経済的な負担: 保険のカバー範囲になることが多くないため、ある医師によると、「親たちは治療費を自費で支払っており、401(k)プラン(米国での確定拠出年金制度)や子供の大学入学のための準備資金を使い切らざるを得ない家族もいます。子供を助けるために、彼らはあらゆる手段を講じていました。しかし、そのような状況を見るのは心を痛めました。」

これらの情報は、米国における青少年のメンタルヘルス治療の問題の深刻さを示しており、専門治療へのアクセス改善や経済的な負担軽減など、解決に向けた取り組みが求められています。

小児の不安症と強迫性障害治療のためのバーチャルケアソリューション

InStride Healthは、子ども、ティーンエイジャー、そして若い成人を対象とした、不安症と強迫性障害のオンラインでの治療プログラムを提供します。サービスは個人だけでなく、家族へのサポートも含まれています。

対象者: 不安症と強迫性障害に悩む子ども、ティーンエイジャー、および若い大人 (7歳から22歳、中等度から重度の症状を対象)とそのご家族

ソリューション: InStride Health は、認知行動療法 (CBT) などエビデンスに基づいた治療モデルを用いた、小児の不安症と強迫性障害に対する専門治療プログラムをオンラインで提供します。

提供するサービス概要(同社ウェブサイトより)

ソリューションの機能・仕組み

  • 3 人のケアチーム (精神科医、セラピスト、コーチ) と患者同士のサポートによる包括的なサポートを提供します。

  • それぞれの子供には、上記の医療ケアチームが割り当てられ、テキストやビデオ・チャット機能付きのモバイルアプリケーションなど、日常的に使用できるツールを使ってリアルタイムでサポートを提供します。

  • 従来の診療所とは異なり、InStride Health は治療を自宅等の病院外で行うことを可能とします。患者が不安や恐怖を感じる実際のリアルな環境でそれを乗り越えるためのスキルを身につけ、練習できるようにサポートします。このリアルタイムで現実世界に即したアプローチは院内での対応よりも、学習を加速させ、早期回復が期待できます。

  • 学校や小児科医とも連携し、こちらからの紹介で同社サービスを始める患者さんもいます。

患者さんとご家族を支えるステークホルダーの方々(同社ウェブサイトより)

強み/価値

  • エビデンスに基づいた治療アプローチ

  • ほとんどの主要保険に対応 (但し、提供している州内のみであり米国全土では現時点ではない)

  • 申し込み手続きの承認後、通常1 ~ 4 週間で治療開始可能(これに対してこれまでの多くの治療は6か月待ちとなることも多い)

同社の現在地・実績

  • 従業員数: 158名

  • 治療実績: 約 1,000 人の患者とその家族

  • 契約保険会社: 16 社

  • 展開地域 : Connecticut, Maine, Massachusetts, New Hampshire, New Jersey, New York, Pennsylvania, or Rhode Island


子供向けのメンタルヘルス領域のサービスはBrighline, Talkspace, Charlie Healthなどをはじめ、各社が学校をはじめとする地域・コミュニティを巻き込みながらこの大きな課題に取り組んでいる印象があります。同社をはじめ、この領域のサービスがより多く広がり、多くのお子さん・ご家族の負担が少しでも減ることを願うばかりです。

おしまい。

※このブログ記事は、個人的な趣味で書いているものであり、あくまでも情報シェアのみを目的としています。

参考記事

参考;前回記事


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