KaoRu IsjDha

1980年生まれ、2002年よりチェコ在住。絵描き、その他ワラジ数足。ポートフォリオ …

KaoRu IsjDha

1980年生まれ、2002年よりチェコ在住。絵描き、その他ワラジ数足。ポートフォリオ https://kaoruishida.com

マガジン

  • その名はカフカ V

    長編小説『その名はカフカ』収納箱その⑤です。その④はこちら→https://note.com/dinor1980/m/m3bce3df2f830

  • コーヒー豆氏の話

    コーヒー豆氏の活躍する記事を収めています。

  • 言語に関するあれこれ

    言語や語学学習についてあれこれ書いた記事を集めてあります。

  • 墨で鳥-水墨画練習帳

    水墨画、特に鳥の絵の記事の収納マガジンです。

  • その名はカフカ IV

    長編小説『その名はカフカ』収納箱その④です、その③はこちら→https://note.com/dinor1980/m/m036e5e244740

記事一覧

固定された記事

常設展示のお知らせ

原画展示のお知らせです。 「常設」と言うからにはこれから先、展示先の予定変更がない限り、ずっと展示される、ということです。とは言え販売展示なので、作品が売れたら…

KaoRu IsjDha
1か月前
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十一月に 4

十一月に 3 「私服の警察の人なんて、本当にいるんですねえ。私、ドラマの作り話だと思ってたんですよお、そうやって私服の刑事さんが『警察の者だが』って言ってバッジ見…

KaoRu IsjDha
3時間前
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コーヒー豆、票集めにチョコり出る。

らべあろ企画の常連様たちには「あ、やっぱり」と思われたこと確実、ですが、この度らべあろ企画『四季王の座は誰の手に!』の投票所へコーヒー豆氏と共にご案内いたします…

KaoRu IsjDha
12時間前
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十一月に 3

十一月に 2  夜どんなに遅く寝床に入っても翌朝五時にすっきり目が覚めるようになったのは、二十年前にかつて夫であった男と別居を始めた頃だったかもしれない。もう正確…

KaoRu IsjDha
2日前
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十一月に 2

十一月に 1  いつになく図書館が混んでいるのは急激に外が寒くなったせいだろう、と憂鬱な思いを抱きながら、カテジナは肩が触れ合いそうなほど近くに座っている隣の席の…

KaoRu IsjDha
4日前
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十一月に 1

 今年の秋はいつにも増して順調に冷え込んできたな、と思いながらヴォイチェフ・スラーンスキーは工房の小さな窓から細かな雪が舞うのを眺めていた。まだ積もるほどの寒さ…

KaoRu IsjDha
6日前
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墨で黒考良と紫陽花

ええっと、記事タイトルと見出し絵が、ちぐはぐでないんかい? ……ごもっともです、しかし本記事も「墨で鳥」、メインディッシュは最後にご用意しておりますので、まずは…

KaoRu IsjDha
13日前
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『その名はカフカ』Modulaceに関するあまり長くない追記

 本記事は先日連載を終了しました『その名はカフカ』の第四部Modulace(転調の意)の解説記事です。  今年二月から約二ヶ月間に渡って連載しました全22話を納めたマガジ…

KaoRu IsjDha
2週間前
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その名はカフカ Modulace 22

その名はカフカ Modulace 21 2014年12月ブルノ  ハルトマン病院長とレンカの契約更新のための会議は2006年以来、毎年六月の第一日曜日に、会場は病院内の会議室ではなく…

KaoRu IsjDha
3週間前
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墨でメンフクロウとハイイロチュウヒ

今年二月の一大イベント「ハイタカ、庭で捕食す」以来の墨で鳥。 今回はメンフクロウとハイイロチュウヒです。 ……鳥同盟の長の「お主も単純な奴よのう、雑用係」という声…

KaoRu IsjDha
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季語の美しさにもだえ詠んでみる~春の覇者決勝戦

本記事はらべあろ企画『春の覇者はわたしで決まりよ』決勝戦への参戦記事です。 ……へ?決勝戦って、言いました? 決勝戦って、予選を勝ち抜いた選手が出るヤツ? あ、は…

KaoRu IsjDha
3週間前
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その名はカフカ Modulace 21

その名はカフカ Modulace 20 2014年11月リュブリャーナ  ただ待つ、というのは辛いものだな、という台詞を頭の中で何度か繰り返し、スラーフコはハンドル越しにメーター…

KaoRu IsjDha
3週間前
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その名はカフカ Modulace 20

その名はカフカ Modulace 19 2014年11月パッサウ  暖炉に火は入っていなかったが、運転手の男が言ったように、家中には暖房が行き届いており、応接間の中も一晩中暖かか…

KaoRu IsjDha
4週間前
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その名はカフカ Modulace 19

その名はカフカ Modulace 18 2014年11月ドイツ・オーストリア国境  EU圏内の国境において隣り合う国同士が緊迫した関係で軍が目を光らせているなどという状況はほぼ皆無…

KaoRu IsjDha
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コーヒー豆、焦って素描と化す。

なんと!なんとらべあろ企画、『春の覇者はわたしで決まりよ!』の第一回戦にて第二回戦出場のチケットを手にしてしまいました! 第一回戦はコーヒー豆氏が不在だったので…

KaoRu IsjDha
1か月前
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その名はカフカ Modulace 18

その名はカフカ Modulace 17 2014年11月パッサウ  暖かいところに連れて行ってくれとは言ったけど、まさか本物の暖炉のある部屋に案内されるとはね、と思いながらレンカ…

KaoRu IsjDha
1か月前
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常設展示のお知らせ

原画展示のお知らせです。 「常設」と言うからにはこれから先、展示先の予定変更がない限り、ずっと展示される、ということです。とは言え販売展示なので、作品が売れたら新しいものを額装して追加します。 ……え、なんか、すごくない? ええ、私にとっては大事件ですよ!格好つけて「!」なしで書き始めてしまいましたがっ!ここからは「!」連発で!進めていきたいと!思います!(しつこいな……!) それで、場所はどこなんだい? チェコ共和国の首都プラハです。プラハ1区です。同じ通りの東には米大

十一月に 4

十一月に 3 「私服の警察の人なんて、本当にいるんですねえ。私、ドラマの作り話だと思ってたんですよお、そうやって私服の刑事さんが『警察の者だが』って言ってバッジ見せるの」  興奮気味にまくしたてる若い女に内心うんざりしながらも、シモン・ストラカは無表情のまま、女が話し終わるのを待った。女は肩まで伸ばした赤い髪を揺らしながら、更に 「でも、お一人なんですね。ほら、ドラマとか映画とかって、よくペア組んでるじゃないですか、刑事さんって」 と続けた。  昨日の午前中に届け出があった

コーヒー豆、票集めにチョコり出る。

らべあろ企画の常連様たちには「あ、やっぱり」と思われたこと確実、ですが、この度らべあろ企画『四季王の座は誰の手に!』の投票所へコーヒー豆氏と共にご案内いたします! 今度の企画は何なん?と思われた方も、どうぞ清き五票を投じ、出口でコーヒー豆氏からスロヴァキア産のスイーツを受け取ってから、その下の私と豆氏のグダグダをお読みいただければ、と思います。 尚、投票の締め切りは5月14日(火)日本時間午後8時です。 まだ迷えますが、どうぞ忘れず投票所へ足をお運びください(でないと豆氏の

十一月に 3

十一月に 2  夜どんなに遅く寝床に入っても翌朝五時にすっきり目が覚めるようになったのは、二十年前にかつて夫であった男と別居を始めた頃だったかもしれない。もう正確には思い出せないが、イレナはこの日の朝も五時ちょうどに目覚めると、瞬時に起き上がって、座ったまま大きく伸びをした。  窓の外はまだ真っ暗で、カーテンを開けて確かめてみることはできないが、今日も寒いのだろう、雪が少しばかり積もっているかもしれない。そんなことを思いながら掛け布団をはねのけると、ベッドの側に揃えてあった

十一月に 2

十一月に 1  いつになく図書館が混んでいるのは急激に外が寒くなったせいだろう、と憂鬱な思いを抱きながら、カテジナは肩が触れ合いそうなほど近くに座っている隣の席の少女を見やった。今カテジナが座っている簡素な造りのテーブルは四人掛けだが幅が狭く、通常なら知らない人間とは同席したくないくらいの大きさだ。カテジナが通う高校のすぐ側にあるこの市立図書館は、図書館としてはとても小さい。カテジナはプラハ市内に点在している市立図書館の中では旧市街広場の近くの中央図書館が一番好きだったが、

十一月に 1

 今年の秋はいつにも増して順調に冷え込んできたな、と思いながらヴォイチェフ・スラーンスキーは工房の小さな窓から細かな雪が舞うのを眺めていた。まだ積もるほどの寒さではなく、雪は地に落ちると同時に姿を消した。  十五年前のビロード革命直後にやっと独立して開いた中古ピアノの修理販売店は平屋建てで、建物の前半分が数台のグランドピアノが置いてある接客用の展示室、後ろ半分が展示室と同じくらいの広さの修理工房という造りになっている。四十代も後半にして一人で新たな事業を始める、という事実に躊

墨で黒考良と紫陽花

ええっと、記事タイトルと見出し絵が、ちぐはぐでないんかい? ……ごもっともです、しかし本記事も「墨で鳥」、メインディッシュは最後にご用意しておりますので、まずはザザッと蓮と紫陽花の墨の作品をご覧いただければ、と思います。 いずれも大きさは書道半紙(24 x 33 cm)です。 紫陽花を描いていて、思ったのです、紫陽花って言えば、ねえ、穂音さん著『ミズ・ミステリオーザ』でしょう、と。ミステリオーザ婦人のダーリンのお名前はオルテンシア、イタリア語で紫陽花。 そして、覚えてい

『その名はカフカ』Modulaceに関するあまり長くない追記

 本記事は先日連載を終了しました『その名はカフカ』の第四部Modulace(転調の意)の解説記事です。  今年二月から約二ヶ月間に渡って連載しました全22話を納めたマガジンはこちらです↓  これまでの解説記事よりは長くならないはず……と思いながら書き始めましたので、連載をお読みくださった方にサラッとお付き合いいただければ幸いです。  本記事で「その名はカフカって、何?」と思われた方はこちらからどうぞ↓ 執筆の速度と投稿頻度 今回も第三部Disonance同様、書き始めて

その名はカフカ Modulace 22

その名はカフカ Modulace 21 2014年12月ブルノ  ハルトマン病院長とレンカの契約更新のための会議は2006年以来、毎年六月の第一日曜日に、会場は病院内の会議室ではなく、病院長の自宅で行われていた。妻に先立たれ、子供たちも独立した後は病院の近くに構えていた邸宅が無駄に大きく感じられて、今は街はずれに以前の邸宅の半分ほどの規模で、庭が敷地の七割を占める家に一人で住んでいる。それでも人の出入りが多い家だが、レンカとの会議の際には庭先に配置している警備員以外は誰も

墨でメンフクロウとハイイロチュウヒ

今年二月の一大イベント「ハイタカ、庭で捕食す」以来の墨で鳥。 今回はメンフクロウとハイイロチュウヒです。 ……鳥同盟の長の「お主も単純な奴よのう、雑用係」という声が聞こえてきます。汗 と言うのも、つい最近メンフクロウは長殿の御記事のスキリアクションに、ハイイロチュウヒは御記事扉絵に登場し、いずれも私がコメント欄で騒いだからでございます。 先週から今週にかけて本当に時間がなかったワタクシ、今週の墨絵教室のお手本を準備する段になって「モチーフのテーマが思いつかない」とパニックに

季語の美しさにもだえ詠んでみる~春の覇者決勝戦

本記事はらべあろ企画『春の覇者はわたしで決まりよ』決勝戦への参戦記事です。 ……へ?決勝戦って、言いました? 決勝戦って、予選を勝ち抜いた選手が出るヤツ? あ、はい、分不相応ながら、そんな流れになりまして。 ちょっと待った。アンタ、二回戦に超勘違い句を投句してなかったか? ええ、そりゃあもう、あの十七音自体に「間違い」などはないはずなんですが、それを詠んだ背景がね、なんともこっ恥ずかしいものでして(寝る前に投句して朝起きたらウミネコ編集長から非常に紳士的に救命ボートが出され

その名はカフカ Modulace 21

その名はカフカ Modulace 20 2014年11月リュブリャーナ  ただ待つ、というのは辛いものだな、という台詞を頭の中で何度か繰り返し、スラーフコはハンドル越しにメーターパネルに表示されている時刻を確かめたが、まだマーヤが車を離れて五分くらいしか経っていなかった。  この日のためにマーヤとスラーフコはヴクの同僚の仲介で中古車を手に入れ、リュブリャーナまでやって来た。目的が目的だけに、スラーフコの仕事用の車は使う気にはなれなかったし、レンタカーも足が付きそうだとマー

その名はカフカ Modulace 20

その名はカフカ Modulace 19 2014年11月パッサウ  暖炉に火は入っていなかったが、運転手の男が言ったように、家中には暖房が行き届いており、応接間の中も一晩中暖かかった。暖炉の前のソファで、人が一人座れるくらいの間隔を置いてレンカの隣に座っているヴァレンティンは、イヤホンを耳から外すと 「せっかく面白いところだったのに、どうして切ってしまったんだい?」 と、全く面白いことなどなさそうな表情でレンカに言った。ヴァレンティンに貸していたのは予備の子機のようなもの

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その名はカフカ Modulace 18 2014年11月ドイツ・オーストリア国境  EU圏内の国境において隣り合う国同士が緊迫した関係で軍が目を光らせているなどという状況はほぼ皆無で、真夜中の国境辺りはそこかしこで闇で動く人間がゴソゴソ活動している。だから何を見かけても驚かないし相手にもしないが、その代わり俺のように一人で徘徊している人間の邪魔をする奴もいない。そんなことを考えながら、イリヤは明確な目的地も分からないまま道の両側に背の高い針葉樹がそびえ立つ細い車道を歩いて

コーヒー豆、焦って素描と化す。

なんと!なんとらべあろ企画、『春の覇者はわたしで決まりよ!』の第一回戦にて第二回戦出場のチケットを手にしてしまいました! 第一回戦はコーヒー豆氏が不在だったので単身で参加したのですが、なんとまあ図々しいことに、「第二回戦に出られる」と聞いた瞬間に飛んで帰ってきましたよ、豆氏! いや、しかしだね、今の私には君を丁寧にペン入れして着色している時間はないのだよ。 ということで今回の豆氏イラストは素描で失礼しました。 で、第二回戦のお題の季語はというと 「啄木忌」。……ごめん

その名はカフカ Modulace 18

その名はカフカ Modulace 17 2014年11月パッサウ  暖かいところに連れて行ってくれとは言ったけど、まさか本物の暖炉のある部屋に案内されるとはね、と思いながらレンカは暖炉の中で赤く光る炭を見つめていた。ヴァレンティンはレンカが立っていた川辺から少し離れた路肩の駐車スペースに止めてあった車までレンカを連れて来ると「その運転手が目的地は把握している。後で僕も行くよ」と言って姿を消した。レンカが助手席に乗り込むと、車は十分ほど街中を走った後、大きくはないが上品な造