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どうか幸せに笑っていてほしい

昨日は
とある絵本に再会した。

今でも鮮明に覚えている。
教科書の問い。



弟のミルクを
盗み飲みしてしまった
著者は
どんな気持ちだったと
思いますか。



おとなになれなかった弟たちに…

太平洋戦争のころ。
父の出征
B29
防空壕
配給…
戦争一色の毎日。

食いしん坊の僕は
生まれたばかりの
可愛いヒロユキの
甘いミルクに
手を出してしまった。

ヒロユキのごはんは
ミルクだけだと
母から教わっていたのに…

やっとのことで
受け入れてもらった
疎開先で
ヒロユキは亡くなった。
栄養失調だった。

「ヒロユキも
大きくなっていたんだね。」

ヒロユキの膝を曲げながら
棺にヒロユキを寝かせるとき
母は初めて泣いた。

僕は
ひもじかったことと
弟の死は
一生忘れません。


絵本の挿絵には
哺乳瓶が添えられた
小さな棺の絵があった。

どうか天国では
お腹いっぱい食べて
笑って幸せに過ごしてね。

そんな
「僕」や母や祖母や妹の
想いが込められているような
描写だった。



ヒロユキが亡くなったのは

母のせいでもない。
祖母や妹のせいでもない。
医者のせいでもない。
そして
「僕」のせいでもないのだ。

だから
どうか自分のことを
責めないでほしい。
と思った。



とくに
「僕」は自身を
食いしん坊だといった。



きっと
戦争が終わっても
ヒロユキのミルクに
手を付けてしまったことへの
罪の意識は
消えなかったんじゃないか
と思う。



幼いころの
喪失体験は
鮮明に残る。

私もそうだ。

祖父が亡くなったとき…

祖父の部屋の布団で
眠っているようだった。

棺の中で
花でいっぱいだった
祖父の顔。

焼かないで!と
泣き叫んだ。

そして
骨になった祖父。

私がわがままを
言ったせいだ!
そう思っていた。



だから
「僕」の喪失体験も
きっと深く心に鮮明に
残り続けたんだろうな。



「僕」は
2014年に亡くなっている。

天国で
家族に会えただろうか。



ヒロユキを
思いっきり抱きしめて
笑っていてほしいと
心から願う。

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