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毎日の砂糖の量が気になっちゃうかもしれない記事

3836文字。気軽に読める内容です :)

今日は砂糖について。

和食って意外とお砂糖をたくさん使いますよね。

全米ナンバー1の薬学部をもつUCSF(University of California San Francisco)が行った砂糖に関する研究を紹介します。
2015年の研究ですが、興味深い面白い研究です。

太る→2型糖尿病のイメージはありませんか?

消費カロリーに対して摂取カロリーが多すぎることが肥満になる原因だと考えていると思います。子供も大人も太っているから、病気になり、「カロリーはカロリー」だから、特定の食べ物が原因ではないと思っている方も多いのではないでしょうか。

2型糖尿病は肥満より早く増えている

2型糖尿病などの健康状態の悪化の原因は、単にカロリーの摂り過ぎという単純なものではないことは明らかです。

私の祖母はいつももぽっこりお腹の祖父を見て、太ってるから幸せ病(糖尿病)になるとよくいってましたが、肥満は世界的に年率1%で増加しているのに対し、糖尿病は世界的に年率4%で増加しています。糖尿病が肥満の一部だとしたら、この急激な増加をどう説明したらいいのでしょうか。

また、糖尿病でなくても肥満の国(アイスランド、モンゴル、ミクロネシアなど)もあれば、肥満でなくても糖尿病の国(インド、パキスタン、中国など)もあるのです。中国では12%の人が糖尿病ですが、肥満率はもっと低いのです。アメリカはで肥満の人が多い国ですが、糖尿病の有病率は9.3%です。

「アメリカの肥満人口の80%は糖尿病、高血圧、脂質異常、心臓病などさまざまな疾患を抱えている」と読むと、そりゃそうだろうなと納得するかもしれませんが、「正常体重の人の40%はメタボリックシンドロームである」と読むとどうでしょう?

※メタボリックシンドロームとは、心臓病や脳卒中、2型糖尿病などのリスクを高める、高血圧、高血糖、お腹まわり過剰な脂肪、コレステロールやトリグリセリド値が異常な状態です。

実は、肥満はこれらの疾患の原因ではなく、むしろメタボリックシンドロームのマーカーであることが分かってきました。

疫学的研究により、砂糖の摂取と心血管疾患などの健康状態との間に相関関係があることが分かっています。では、食事から過剰な砂糖を取り除けば、メタボリックシンドロームが改善されるのでしょうか。

子供に砂糖を与えないようにすると、どうなるのでしょうか。

UCSFの研究で2は、肥満とメタボリックシンドロームの43人のラテン系およびアフリカ系アメリカ人の子供を10日間にわたって調査しました。
まず、普段の家庭の食事をとっているときのインスリンやグルコースのレベル、血中脂肪、乳酸や遊離脂肪酸などの項目を調べ、彼らの代謝能をチェックしました。

その後9日間は、子どもたち一人ひとり異なる食事をとります。
どういうことかというと、研究中の食事は、普段の家庭の食事とカロリー、タンパク質、脂肪の含有量が同じになるようにしたものです。
当然、炭水化物も普段の食事と同じ割合になるように調理したものを準備しましたが、 唯一の違いは、食事中の砂糖をでんぷんという糖に置き換えた点です。つまり、研究中の特別食には砂糖が一切使われていないということです。
サトウキビや高フルクトースコーンシロップなどから作られた砂糖は一切使わず、研究に参加した子供たちは、果物やその他の自然食品から糖分を摂取しました。

アメリカに暮らしているとちょこちょこ目にするミステリーのひとつが、「Japanese restaurant  Teriyaki」です。日本料理と言えばお寿司の次くらいに有名なのが照り焼きなのではないでしょうか。

余談は置いておいて、アメリカで人気な?日本料理の?照り焼きチキンですが、甘辛い照り焼きのたれにはお砂糖がたくさん使われていますよね。

照り焼きチキンはこの研究中に外されたメニューのひとつです。
いちごやブルーベリー味のヨーグルトやドーナツなども外されました。

この研究の面白い点なのですが、これらの料理、食品の代わりに追加されたメニューは、野菜たっぷりのサラダやグルテンフリーの食事ではなくて、"砂糖を加えていない unhealthy processed food" つまり、あまり健康ではない加工食品を子供達に摂らせたということです。ホットドックやベイクドポテトチップス、ベーグルなど健康な食事と聞いたときにはあまり連想しないような食べ物です。

砂糖が入っていないunhealthy processed foodを与えてどうなったのでしょうか。

子供達の研究中の特別食は砂糖が使われていないという点以外普段の食事と変わらないので、カロリーの摂取量という点から子供達の体重に影響は見られませんでした。体重は減らなかったのですが、たった10日間、砂糖がない食事を摂取しているだけで代謝機能が改善されていました。
血圧、中性脂肪、LDL(いわゆる悪玉コレステロール)、インスリン感受性、耐糖能がすべて改善されたのです。

※インスリン感受性:血糖値を調整するインスリンはちゃんと分泌されているのにも関わらず、インスリンの感受性が悪くインスリンの効果が発揮されていない状態
※耐糖能:血糖値を下げるためにグルコースを処理しなくてはいけません。
この処理能力のことです。

カロリー源は大事

人工的に作られた砂糖がカロリーや体重増加とは無関係にメタボリックシンドロームの主な原因であることを証明していると言える研究だと思います。

1日の食事から500〜1000kcalカットすれば、1週間で0.5kgずつ体重を落としていくことができると聞いたことがあるかもしれません。
健康に無理なく痩せたいと思っている人は、1日菓子パン1個だけにして
1日の摂取カロリーを抑えるという無茶な方法をする人はあまりいないと思いますが、この方法で仮に体重を減らすことができても、砂糖のせいでインスリン感受性が低下したり、血圧や中性脂肪などに悪影響があるということです。

砂糖は慢性疾患の唯一の原因ではないかもしれませんが、避けるのが最も簡単なものです。子供たちは、加工食品を食べ続けても、砂糖を取り除くだけで、代謝の健康を改善することができたのです。加工食品ばかりではなく本物の、wholefoodな食品を食べれば、どれだけ健康になれるか想像できますよね。

ちなみに、この方法が大人にも有効かどうか、また、その効果が短期的なものか長期的なものかについては、さらなる研究が必要です。

・・・つい先日スーパーに行ってアイスクリームを買ってしまったことを後悔しました。なにせ、日本では高級アイスクリームのハーゲンダッツがアメリカではパイントで5〜6ドルで買えてしまうのです。。。

とにかく、砂糖は日本料理に欠かせない調味料なので、一切摂らないのは難しいかもしれませんが、10日ならやってみようかなと思えませんか?
最後に、誤解のないように、果物や野菜などに含まれている糖はこの研究でいう”摂ってOK、むしろ積極的に摂りたい糖”です。
Moet

参考文献

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/oby.21371

https://www.diabetes.org/about-us/statistics/about-diabetes

Sepúlveda J, Murray C. The state of global health in 2014. Science. 2014 Sep 12;345(6202):1275-8. doi: 10.1126/science.1257099. PMID: 25214611.

Basu S, Yoffe P, Hills N, Lustig RH. The relationship of sugar to population-level diabetes prevalence: an econometric analysis of repeated cross-sectional data. PLoS One. 2013;8(2):e57873. doi: 10.1371/journal.pone.0057873. Epub 2013 Feb 27. PMID: 23460912; PMCID: PMC3584048.

Bremer AA, Mietus-Snyder M, Lustig RH. Toward a unifying hypothesis of metabolic syndrome. Pediatrics. 2012;129(3):557-570. doi:10.1542/peds.2011-2912

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