ヒラサワエイコ

日本語教育コンサルタント|地方の日本語学校、地域日本語教室→大学院進学(上京)→日本語…

ヒラサワエイコ

日本語教育コンサルタント|地方の日本語学校、地域日本語教室→大学院進学(上京)→日本語学校(都内)→ビジネス系専門学校(都内)→日本語学校(山間部)→個人開業|言語教育の可能性を探究中。

マガジン

  • #言語教育を考えるヒント

    「日本語教育」もっと広く捉えて「言語教育」は今後どうあるべきか? 今の日本語教育に対する疑問や言語教育の可能性についてあれこれ考えて書いたことをまとめてみました。

  • #書評

    書評というか、本を読んで考えたこと、感じたことについて書いたものをまとめました。

  • 【連載】越境する日本語教育

    • 13本

    自称フルスタック日本語教師・フリーランスのえいこさんのマガジンです。業界を超えて、日本語教育がつなぐ世界について書いていきます。

  • 実習生のストーリー

    • 26本

    日本で実習生として働いています。日本の生活や経験したこと、学校で勉強していないこと、忘れられないこと、ホラー体験、お金持ちになる方法、日本人に知ってもらいたいことなどを書きます。

  • 山の日本語学校物語

    とある町に開校した「山の日本語学校(仮名)」の物語です。ITエンジニアの専門日本語教育、PBL(Project-Based Learning)を取り入れたカリキュラム、地域との連携などなど、新たな言語教育の実践とその可能性について当時の記録をもとに綴っていきます。

記事一覧

固定された記事

00_はじめに 【山の日本語学校物語】

突然ですが、新たにマガジンを始めることにしました! 今回は「はじめに」として、この連載を始めようと思った理由やその想いについて、あれこれ書きたいと思います。 (…

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「日本語教師」の解像度を上げてみる 〜国家資格が一人歩きしないために

「日本語教育機関認定法」が4月1日に施行されたのに伴って、日本語教育業界では、新しい動きが始まっています。前回記事では、4月1日からの動きをまとめました。 「登録日…

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「日本語教育機関認定法」施行に伴う情報まとめ

4月1日に「日本語教育機関認定法」が施行され、もろもろが本格的に動き始めました。今回は、関連する主な動きを自分の備忘録も兼ねて、簡単にまとめておきたいと思います。…

「書く」ことをどのように扱うのか 〜「日本語教育の参照枠」の検討課題から考える

今日は、「書く」ことについて考えてみたいと思います。 前々回の記事では、今後必要とされるコミュニケーションについて少し触れました。そこでは、日本語教育機関の可能…

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個人のキャリアをどう捉えるのか 〜「送り出し機関」が行う日本語教育の可能性から考える

インドネシアに行ってきました。 インドネシアを訪れたのは、10年ぶりだったのですが、この10年間の発展には目覚ましいものがあります。特に首都のジャカルタは、高層ビル…

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日本語教育機関が「教育機関」へ転換するとは?

今回は、日本語教育機関が、「教育機関」に転換するとはどういうことかを考えてみたいと思います。 日本語教育業界は、今、大きな転換期を迎えています。4月1日にいよいよ…

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オンライン学習の効果 〜自主的な学習をどのように担保するのか

今回は、「オンライン学習の効果」について考えてみたいと思います。 前回は、2024年3月5日に、総務省から公開された報告書をもとに、地域日本語教育の地域格差を解消する…

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日本語教育の地域格差を解消するために必要なこととは?〜総務省の実態調査をもとに考えた

今回は、総務省より出された「地域における日本語教育」の実態調査結果を読んで考えたことをまとめてみたいと思います。 今回の資料は、2024年3月5日に総務省から公開され…

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電子黒板にみる教育観 〜研究授業を見学して考えたこと

現在、私は地域の小学校、中学校からなる「学校運営協議会」いわゆる「コミュニティ・スクール」の委員をしています。その関係で、ちょくちょく学校を訪れる機会があるので…

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書評 『プレイ・マターズ 遊び心の哲学』 〜「遊び」から生まれる「学び」

今回は書評です。 ここ1年くらい、地域の仲間と読書会をしています。課題図書を決め、月1回のペースで集まって、読んだ内容について意見交換をしています。 異なる分野の…

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日本語教育課程の具体的な考え方

「日本語教育機関認定法」4月1日の施行に伴い、日本語教育業界は、何か慌ただしくなっていますが、今回は、どのように日本語教育課程を編成すればいいのかについて考えてみ…

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認定日本語教育機関の可能性〜「日本語教育課程編成のための指針」を読んで考えたこと

2023年年末に、文化庁から「認定日本語教育機関の認定」「登録日本語教員」「登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関」に関する資料が次々と出されました。今年入り、順…

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学びの主体性 ー「学習者を社会的存在として捉える」とは?

今日は、「学びの主体性」について考えてみたいと思います。Facebookって、たまに、過去のびっくりするような投稿を引きずり出してくることありませんか?先日もFacebookが…

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遊びのルールづくりから、ルールメイキングについて考えた

今回は、子ども達と一緒に遊んだ「すごろく」から、ルールメイキングについて考えたことを書いてみたいと思います。 エルマーのぼうけんすごろく年末年始、実家に帰省しま…

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「個」の時代において日本語教育はどこへ向かうのか

今回は、未来に向けて日本語教育はどこを目指せばいいのかについて書いてみたいと思います。 未来について考えるきっかけになったのは、木下斉さんの以下のnoteです。 こ…

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制度に組み込まれたテストにどう抗うか

今回は、「テスト」について書いてみたいと思います。 言語教育に関わっていると、「評価」という問題から、どうしても逃れることができません。英語であれば、TOEICで何…

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固定された記事

00_はじめに 【山の日本語学校物語】

突然ですが、新たにマガジンを始めることにしました! 今回は「はじめに」として、この連載を始めようと思った理由やその想いについて、あれこれ書きたいと思います。 (有料設定になっていますが、最後まで無料でお読みいただけます) これまでの経緯 私は、2017年10月から2020年3月まで、とある日本語学校で教務主任として働いていました。この学校では、日本のIT企業への就職を目指す、ITエンジニアの日本語教育を目的とし、PBL(Project-Based Learning:プロジ

有料
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「日本語教師」の解像度を上げてみる 〜国家資格が一人歩きしないために

「日本語教育機関認定法」が4月1日に施行されたのに伴って、日本語教育業界では、新しい動きが始まっています。前回記事では、4月1日からの動きをまとめました。 「登録日本語教員」という国家資格もいよいよスタートします。(といっても、実際に登録が始まるのは、2024年11月以降の予定です)この国家資格化に合わせて、「日本語教師」の国家資格を取りたいという声も聞かれるようになりました。Facebook等でも、日本語教師養成講座の広告をよく見るようになりました。 「登録日本語教員」

「日本語教育機関認定法」施行に伴う情報まとめ

4月1日に「日本語教育機関認定法」が施行され、もろもろが本格的に動き始めました。今回は、関連する主な動きを自分の備忘録も兼ねて、簡単にまとめておきたいと思います。 日本語教育の位置付けこれまで日本語教育関連の業務を担っていたのは、「文化庁国語課」でしたが、「文部科学省総合教育政策局」の下に、「日本語教育課」が新設されました。 これまで、文化庁国語課の下に位置付けられていたことを考えると、ものすごい格上げです。 これに伴い、日本語教育関連の資料が「文部科学省」に移管されま

「書く」ことをどのように扱うのか 〜「日本語教育の参照枠」の検討課題から考える

今日は、「書く」ことについて考えてみたいと思います。 前々回の記事では、今後必要とされるコミュニケーションについて少し触れました。そこでは、日本語教育機関の可能性として、「仲介(mediation)」という概念に注目するべきだということを書いています。 この「仲介」という概念は、「文化審議会国語分科会日本語教育小委員会」(2024年2月22日)で提供された資料2の中で説明されています。 『「日本語教育の参照枠」の見直しのために検討すべき課題について ーヨーロッパ言語共通

個人のキャリアをどう捉えるのか 〜「送り出し機関」が行う日本語教育の可能性から考える

インドネシアに行ってきました。 インドネシアを訪れたのは、10年ぶりだったのですが、この10年間の発展には目覚ましいものがあります。特に首都のジャカルタは、高層ビルや高速道路、ショッピングモールなどがどんどん新設され、経済的な勢いも感じました。普段、高齢者の多い山の中に住んでいることもあって、まず、若者の多い都市の活気に圧倒されました。 今回の訪尼の目的は、送り出し機関が行っている日本語教育やトレーニングの様子を見せていただくことでしたが、日本語教育のあり方も、ずいぶん進

日本語教育機関が「教育機関」へ転換するとは?

今回は、日本語教育機関が、「教育機関」に転換するとはどういうことかを考えてみたいと思います。 日本語教育業界は、今、大きな転換期を迎えています。4月1日にいよいよ「日本語教育機関認定法」が施行されます。この法律の施行に伴い、これまで、法務省から認可を受けていた「日本語教育機関」が文科省の認可を受けるようになります。5年間という移行期間はありますが、「日本語教育機関」は、文科省から出されている指針に従って「教育課程」を編成し直し、新たに認可を受けることが求められます。 法務

オンライン学習の効果 〜自主的な学習をどのように担保するのか

今回は、「オンライン学習の効果」について考えてみたいと思います。 前回は、2024年3月5日に、総務省から公開された報告書をもとに、地域日本語教育の地域格差を解消するために何が必要か考えたことを書きました。 この報告書では、日本語教育の推進のために必要な措置として、「オンライン学習」を推進することが報告されています。前回は、この点について詳しく触れることができなかったため、今回は、「オンライン学習の効果」について書いてみたいと思います。 日本人の自主学習の実態まず、この

日本語教育の地域格差を解消するために必要なこととは?〜総務省の実態調査をもとに考えた

今回は、総務省より出された「地域における日本語教育」の実態調査結果を読んで考えたことをまとめてみたいと思います。 今回の資料は、2024年3月5日に総務省から公開された以下の報告書です。 外国人の日本語教育に関する実態調査 ―地域における日本語教育を中心として―(結果報告書) 2019年6月に施行された「日本語教育の推進に関する法律」に基づき、2020年6月には「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」が策定されました。日本語教育推進

電子黒板にみる教育観 〜研究授業を見学して考えたこと

現在、私は地域の小学校、中学校からなる「学校運営協議会」いわゆる「コミュニティ・スクール」の委員をしています。その関係で、ちょくちょく学校を訪れる機会があるのですが、今回は、小学校で行われた研究発表会に参加して気がついたことを書いてみたいと思います。 研究テーマの概要今回の研究テーマは、「予測困難な時代を生き抜く力を身に付けた児童の育成」というものでした。教育のプロである先生方が一つのテーマを探求していくプロセスは、さすがだなあと思うことばかりで、多くの学びがありました。

書評 『プレイ・マターズ 遊び心の哲学』 〜「遊び」から生まれる「学び」

今回は書評です。 ここ1年くらい、地域の仲間と読書会をしています。課題図書を決め、月1回のペースで集まって、読んだ内容について意見交換をしています。 異なる分野の人が集まり、それぞれの視点で読んだ内容について話し合うのは、いろんな気づきがあって、刺激的です。また、普段、自分では絶対に選択しない本を読めるのもおもしろく、強制力もあるので、なんとか読み切ることができます。その後の飲み会も楽しい(むしろ、こちらが目的か?) 最近は、3ヶ月くらいかけて『プレイ・マターズ 遊び心

日本語教育課程の具体的な考え方

「日本語教育機関認定法」4月1日の施行に伴い、日本語教育業界は、何か慌ただしくなっていますが、今回は、どのように日本語教育課程を編成すればいいのかについて考えてみたいと思います。 このnoteでは、「山の日本語学校物語」というマガジンを連載しているのですが、時間的な余裕がなく、途中で連載がストップしていました。最近、また復活させようと思い、過去の投稿をもう一度読み返しているのですが、ボリュームが半端ない。ちょっと、書きすぎました(笑) ただ、改めて読んでみると、非常に示唆

認定日本語教育機関の可能性〜「日本語教育課程編成のための指針」を読んで考えたこと

2023年年末に、文化庁から「認定日本語教育機関の認定」「登録日本語教員」「登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関」に関する資料が次々と出されました。今年入り、順次説明会も行われています。資料が多すぎて、しっかり読み込むのは大変な作業ですが、今回は、「認定日本語教育機関」に関する資料を読んで考えたことを書いてみたいと思います。 私が特に関心を持っているのは、日本語教育課程をどのように編成すればいいかです。教育課程によって、認定日本語教育機関には、様々な可能性が生まれると思

学びの主体性 ー「学習者を社会的存在として捉える」とは?

今日は、「学びの主体性」について考えてみたいと思います。Facebookって、たまに、過去のびっくりするような投稿を引きずり出してくることありませんか?先日もFacebookが、6年前の投稿を掘り出してくれましたので、今回はその投稿をもとに考えたいと思います。 今回扱うネタは、2018年1月20日に投稿されたものです。 当時私は、「山の日本語学校(仮名)」という日本語学校を運営していました。この学校の様子は、以下のマガジンにも連載しています。 投稿の背景「山の日本語学校

遊びのルールづくりから、ルールメイキングについて考えた

今回は、子ども達と一緒に遊んだ「すごろく」から、ルールメイキングについて考えたことを書いてみたいと思います。 エルマーのぼうけんすごろく年末年始、実家に帰省しました。実家には、4歳と7歳の姪っ子がいるのですが、帰省したときは、この姪っ子たちと全力で遊ぶことにしています。 今回は、以下のすごろくをお土産に持っていきました。 私は、この『エルマーのぼうけん』シリーズが大好きで、子どものころ、ボロボロになるまで読みました。飼い犬の名前を「エルマー」にしたくらいです。 姪っ子

「個」の時代において日本語教育はどこへ向かうのか

今回は、未来に向けて日本語教育はどこを目指せばいいのかについて書いてみたいと思います。 未来について考えるきっかけになったのは、木下斉さんの以下のnoteです。 このnoteでは、「組織」から「個」の時代へとシフトが起こっており、それを踏まえて私たちが今やるべきことについて書かれています。 私自身、組織で働くことに限界を感じ、2020年に個人開業しています。これまで組織でやってきたことを、事業としてどう成立させるかをひたすら試しているような状態ですので、内容に深く共感し

制度に組み込まれたテストにどう抗うか

今回は、「テスト」について書いてみたいと思います。 言語教育に関わっていると、「評価」という問題から、どうしても逃れることができません。英語であれば、TOEICで何点だとか、日本語であれば、日本語能力試験のN1合格だとかで、その人の言語能力が測られます。 履歴書にテストの結果を書くことによって、自分の能力をアピールすることができます。それだけ自分の可能性を広げることができると思いますし、能力や機会の拡張のため語学力を高め、テストを受けることは否定しません。 厄介なのは、