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童話の森

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こども〜ヤングアダルト向けの読み物を置いています。 ファンタジーや幻想小説など。
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記事一覧

ぼくとリコちゃん

ぼくとリコちゃん

 こんにちは
 ぼくは くまの おとこのこ

 リコちゃんのおうちの
 リコちゃんのおふとんにいて
 まいばん いっしょに ねむってる

 リコちゃんは ぼくを
「くんたん」
 って よぶよ

 だから ぼくもね
「リコちゃん」
 って よんでるんだけれど
 なかなかきづいて もらえない

 もしかしたら ぼくのこえ
 きこえていないのかな?

 そうかんがえると すこし さみしいけれど

 ぼく

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花咲く丘のひみつ

 花が咲き乱れる丘は、たくさんの生き物の隠れ家になっていました。そこで、くまくんはうさぎさんとお話しするのが好きでした。

「ここは、どうしてこんなにきれいなんだろうね」
 いいにおいにつつまれながら、くまくんがうさぎさんにたずねました。うさぎさんはくまくんとおんなじことを考えていたので、ううーん、とかんがえこみました。
「……わからないわ」
 しばらくして、うさぎさんはぽつりと言いました。どうし

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金のじょうろ

金のじょうろ

 恥ずかしいから、わたしは顔を伏せた。鞄を両手に抱えて立っているのも必死。視線は感じるのに顔はどうしてもあげられそうにない。
 朝の誰もいない学校の校門でわたしは、彼に告白をした。

 彼は花島シロくんという男の子で、苗字にあるように花が好きだった。名前はひらがなで“しろ”というのだけれど、クラスのみんなからは犬っぽく扱われていて“シロ”というほうがあっている。そしてわたしも例にもれずカタカナ呼び

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野原のちいさな物語り

野原のちいさな物語り

 広大な野原に、十字の形をした墓標が、何千、何百と立ち並んでおりました。墓標といってもそれは立派なものではなく、もともと海辺に流れついた流木であったり、壊れた船の柱であったりしました。しかし年月が経つにつれ、雨風に傷んで弱く、もろくなってゆきました。

 春のことです。
 ひとつの白い木でできた墓標の前に、舞い降りてきたものがありました。それは、花が咲き乱れる野原を夢見ていた綿毛です。白い半透明の

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魔法使いのなみだ(4)

魔法使いのなみだ(4)

 ◆□◆□

 小屋へ戻ると、ユキはすぐさまキッチンのいすに腰をかけた。ミサトも同じようにテーブルを挟んだ反対側の椅子に腰を落ち着ける。まだ胸の奥がどくどくと忙しない。今日は、なんという日だろうとミサトは思った。夕方に目を覚まし、狼の声を聞き、ユキとともに狼を助ける。しかし解けた謎はふたつあった。

 ユキの言っていた薬屋という職業。それから、森を守っていると言ったこと。あれは今のように森の動物た

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魔法使いのなみだ(3)

魔法使いのなみだ(3)

 ◆□◆□

 ユキはどんどん青ざめていく。手元の花をそれでも無造作に引っつかみ、いくつかのバケツから数本の色とりどりの綿を付けた花を抜き取り、鍋を戸棚から引っ張り出した。中に水を入れ、火にかける。黒いみつあみがひゅんひゅん揺れる。水はすぐに沸騰した。そこへ今選び取った花の束を鍋に入れ箸でかき混ぜる。その動作に少しの無駄もなかった。ミサトには彼女がなんの作業をしているのかまったく検討もつかないが、

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魔法使いのなみだ(2)

魔法使いのなみだ(2)

 ◆□◆□

 目の前には陶器のマグカップ。中身は濃い茶色の液体が入っていて、これはココアだといって手渡されたものだったが、ミサトはおそろしくて口をつけることができずにいた。

 今座っているのは小さなキッチンにおかれた小さな木の椅子で、そろいの木のテーブルもまたそれに合った大きさだった。魔法使いという少女は向かいの席に座りじっとこちらを見据えている。ミサトはどうか食われませんようにとだけ祈りなが

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魔法使いのなみだ(1)

魔法使いのなみだ(1)

  ◆□◆□

 魔法使いの棲むという森で、少年ミサトは迷いの子。

 いつも「弱虫」「泣き虫」「びびり」とからかわれるものだからと度胸試しのつもりで森に足を踏み入れたのが間違いで、気づけば帰り道も分からないほどに木が生い茂る場所まで来てしまっている。足元の落ち葉や湿った土はとても歩きにくく、靴は泥で汚れて靴下はひんやりとしてきていた。半袖から伸びた腕は枝葉にぶつかり小さな傷がいくつもできている。

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ふうこよ眠れ

ふうこよ眠れ

 きのう、ずっと学校でお世話をしていた、うさぎのふうこがしんだ。もうだいぶ年だった。長生きして、静かな最後だったけど、悲しいことには変わりはない。その日、わたしは泣きながら帰った。

 次の日、わたしが落ち込みながら小学校へ行くと、大変なことが起きていた。ガヤガヤする教室のあちこちで、色とりどりの花が舞っているのだ。まるで、花畑の花たちが風に乗ってやってきたみたいだった。

「お、おはよう」
 お

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真夜なかの天使

真夜なかの天使

「あたしの羽根が欲しいの?」

 雪沢のまっすぐな瞳がぼくを射抜いた。夜の教室は月明かりだけがぼくらを照らし出していて、まるで舞台の終焉のようだった。雪沢は上半身はだかで、大きくない胸をさらしているのにはずかしがるようすはない。下はプリーツのスカートで細い膝をのぞかせている。肌は白いがところどころ日に焼けたように赤くなっていて少し痛そうだった。それが、透明な青い光に透けて幻想的にも見えていた。もっ

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クリスマスの奇跡

 クリスマスの前の晩。森の中の小屋にひとりで暮らすおじいさんは、となり町に住む孫たちのために何をプレゼントしようか、ずっと考えていました。
 小屋の外はしんしんとまっさらな雪がふりつもっていきます。夜は色を濃くし、月はずっと高くにのぼっていました。

 おじいさんが最後に孫たちに会ったのは一年も前です。明日、この小屋へみんなが遊びに来ることを考えると、何も用意していないことが不安で眠れそうにありま

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ひとりで歌うおんなのこ

ひとりで歌うおんなのこ

朝の静けさに包まれた町の、そこかしこが穴ぼこの石の円形劇場で、女の子は歌っていました。雲が流れてきて、たずねます。
「どうして誰もいないのに歌っているんだい」
「歌いたいからよ」
女の子は笑って言いました。

「ひとりでさみしくないのかい」
「こうして、あなたみたいに声をかけてくれる人がいるもの、さみしくないわ。あなたもひとりなのね?」
女の子がそう聞くと、雲はばかにしたように笑って言いました。

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いたずら猫共

いたずら猫共

 実樹の悩みは、顔にたったひとつある、大きなにきびでした。

十四歳になるころに右の頬にできたにきびは、十五歳を迎えた今日まで、ゆっくりと確実に育っていて、だんだん目立つようになってしまいました。気になって気になってついつい触ってしまうのでばい菌が入っているのかもしれません。

お母さんはよく実樹を見て、「あんた、触るからひどくなるのよ」と言っていました。そしてこうも言いました。「じきに治るわ。若

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ひとくいおに

 とてつもなく高い、とうのようながけのような山がありました。その山はひとつではなく、十以上が集まって立っていました。山の頂上は平らにならされ、いくつかには家がたち、またいくつかには学校がたち、またまたいくつかには果物屋や薬屋や服屋といった生活に必要な物を売る店がたっていました。そこに百人以上の人が住んでいました。
 山と山をつないでいるのは、山のツルやツタで作られたがんじょうなつり橋でした。何本も

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