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偏った正義と不条理とも呼べる欲望

名作でありながらも、傑作と称される作品は稀な存在だ。
また映画に限らず、名作と傑作は分別されて紹介されがちである。
更に付け加えると、著名人が賞賛した作品が必ずしも名作とは限らない。
人には好みがあるように王道を好む者もいれば邪道を選ぶ者もいる。
どちらが正しいなどと議論すること自体がナンセンスな訳で、心の奥底に沁みる作品を傑作だと信じていればそれで良いと個人的に思う。

てな具合で、今回は日本国内とハリウッドでリメイクされた『インファナル・アフェア』を紹介したい。

この作品をご存知な方は多いと思われる。
それこそ王道の極みと称しても過言ではなかろう。
然し、冒頭で説明した通り、あらゆる国でリメイクされた作品故に名作でありながらも傑作である稀な存在であると烙印を押したい。

物語は実にシンプルでありながらも、人物像がとても複雑で構成はされながらも、冒頭から最後まで観客を魅了して止まない内容となっている。

この物語の核となっている点は「潜入」だ。
マフィア側と警察側にそれぞれ「ネズミ」を潜入させる事で秘密裏に情報を得る心理戦である。

ラウは優秀な警察官だが、裏の顔はマフィアに精通するスパイだ。
一方のヤンはマフィアに紛れた潜入捜査官だ。
それぞれ立場は違うが、同じ穴の狢として真逆な世界で本性を表す事なく虎視眈々と内部を観察するのだ。

交わる事のない二人だが、普段は音を立てずに秘密裏に情報を左右する二人だが、余韻を残す場所でお互いが出会す。

二人は音響機器に耳を預け、音楽を嗜む趣味が共通していた。
その他は「ネズミ」以外の私生活や課せられた任務に関しては正反対であった。

特にヤンは順風満帆な生活を送るラウとは違い、潜入捜査を繰り返す事で生じるストレスが原因で精神的に追い詰められていた。

ある時、街でヤンがかつて交際していた女性と出会う。
その女性の手には小さな子供の手が握られていた。
その光景を見たヤンはその後の女性は幸せに家庭を持ったのだと他人事ながらも安堵を覚えたのだろう。
そういった事もありヤンは精神を落ち着かせようと音楽に浸るのだろう。

それだけではない。
ヤンは精神科に通院しカウンセリングを受けているが、殆ど体を休め眠るのみ。
ヤンの主治医であるドクター・リーは、ヤンという人物像に興味を抱きながらも、危険な香りがする事を感じてか、率直に堅気ではないと言葉では表さないが察している様子だ。

ラウのボスであるサムは内部に密告者がいると察知する。
それが誰なのか警察内部に潜入するラウに尋ねるが、ネズミは中々尻尾を出さないと説明する。

ヤンのボスであるウォンも同様、警察内部の情報を筒抜けにしているネズミが必ずいると読む。

ヤンはウォンにのみ解読可能なモールス信号を送り、敵の計画を流していた。
ラウは警察内部にいながらサムにパソコン経由で情報を携帯電話に送る。

この様な心理戦もこの映画の見所でもある。
そして最も驚かされる点は最後の場面に尽きる。

この作品の印象的なラストシーンに止まらず、信頼を得たままの裏切りや、常に抱える憎悪と野心に包まれた人間悪を引き摺る者など、人は感情だけでは整理がつかないといった社会を浮き彫りにした内容が忠実に描かれている。

その後、続編は二篇続くが、やはりこの最初の作品が印象深い。

再三説明したが、幾つかリメイク作品がある。
確かに、良い意味で真似をしたくなる内容の作品だが、本家を超える壁は相当高く、リメイク作品はやや物足りないといった印象が残るのは仕方がないのだろう。
そこに名作を超越した美学がたたずむのかもしれない。

で、気にある方も、何度も鑑賞した方にもお勧めの映画である事は間違いないでしょう♪
傑作にゴタクならぬ解説など不必要だろうから☆

わーお!

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