編集のがっこう<Vol.15>炎上せずに意見を書く難しさに悩んだnoteチームの結末

LGBTQを支援するブランド「snails_project」について、自分たちが配信可能なさまざまなメディアで記事を書いていくワークショップに移行した編集のがっこう。今回は、残るnoteチームの配信までの道のりを公開。

目次
・「鬼強いチーム」として、意気揚々企画案をプレゼンしたが…

noteってそもそもどういうメディア? から深掘ることに
批判されることが怖い…それが自分の意見を明確にできない理由
・自分の立ち位置を考え、意見を書く難しさを乗り越え完成した原稿

WWDチーム、SNSチームの配信までの道のりはすでに<Vol.13><Vol.14>で公開しているので、そこでチェックをしていただくとして…。残すところnoteチームのみ。ファッションビジネスというWWDの世界観=制約があるなかで原稿を書くWWDチームや、ビジュアルをメインに伝えていくSNSチームより、このブランドの思想や考察をダイレクトに伝えられるnoteのほうが簡単! と思ったnoteチームだった……。

「鬼強いチーム」として、意気揚々企画案をプレゼンしたが…

自身もLGBTQの一人であることをカミングアウトし、このブランドを立ち上げたデザイナー安達功さん。安達さんの思いを直に聞き、その内容をnoteでどう表現するか、noteチームが書き上げてきた「チーム鬼強い3人」という自信満々な企画案 ↓

ブランドコンセプトやLGBTQについての解説を、チームの3人が対話形式(交換日記風)で展開。その際、一人はLGBTQに共感する立場、一人が「LGBTQっていうのがあるのね」、もう一人が「そもそもsnailsコンセプトを理解する授業を欠席して聞いてない」という、三者三様のスタンスを盛り込むという仕立て。

この企画案に対して生徒全員でディスカッション。

<挙がった意見まとめ>
・対話形式にするなら自分たちの三者三様のスタンスをもっと明確にして意見の交換をすべき
・「snails」を語る前にLGBTQの話をしてから進んだほうが伝わりやすい
・WWDチームの記事とnoteチームの違い(住み分け)が不明
・ユーザーターゲットが違うにしてもリンクで内容は飛ばせるので、同じことではなく、noteでしか書けないことを書くべき
・コンセプトを説明しながら、一人1記事を対話形式で進めるのはかなり難しいテクニックが必要なのでは?
・WWDは第三者的目線、noteは自分たちの目線でLGBTQを語るのはどうか
・noteはブログの延長に近い印象なので、ブランドを引っ掛けて書くより、LGBTQのことをテーマに書いたほうがキャッチーだし読みたい
・noteは意見をいうべきところ。最終着地点(意見)が見えない。
・リアルをきっちり伝えるなら、<編集のがっこう>の課題「snails」を通して、今回LGBTQに対してどう思ったのか、聞く前と後では考えが変わったのかどうか、素直に書くのがいいのでは?

と散々な結果に。

noteってそもそもどういうメディア? から深掘ることに

1週間後に上がってきた改善案は ↓

snailsへの理解度と共感度がバラバラの3人というのがリアル。「snailsを正しく理解して発信する」という今回の課題について、すでにWWDキャンプファイヤーの記事で十分正しく発信されているので、noteで発信する定義=自分たちのリアルな感情を書くべき。そこまでは良かったが…。

結論はどこ? この記事で伝えたいものは? が未だに見えてこない。そこをツッコむと、「対話形式でそれぞれのスタンスで進めていくので、結論は書いてみないと答えは出ない」とnoteチーム。

最初にその記事でなにを伝えるのかをゴール設定しないと、原稿をどう書き切るかは至難の技。ゴールが見えないまま書くのは、真っ暗みの中を駆け出し、闇雲に走って疲れて死ぬのと同じ。反対に、なにを伝えたいか、ゴールが決まっていれば、そこへ向かう段取りも組み立てられるので、書くことはそう難しいことではない。

見切り発進なnoteチームに、メイン講師であるWWD JAPAN.com編集長の村上さんも業を煮やし、「noteってどんなメディア?」という前提の質問を投げかける。

noteは自分の意見を言う場所。だから編集者やクリエイターといった人が使っているケースが多い。仕事をしているなかで、自分の媒体や普段携わっているプロジェクトでは直接反映できない「日々感じていること」や「伝えたい思い」をアウトプットしている場。書き手のエモーションが全てであり、そのエモーションを文章で理解してもらうことが大切。

「snails」の話を聞いてどう思ったか、自分のエモーションを意思表明して書くのが、noteチームのミッションなのではないか? それこそが、WWDチームとも、SNSチームとも決定的に違うスタンス。

そこで、三者三様の意見という着眼点はとてもいい。そこを伸ばそう。意見が分かれたことを書き切ろうと意見がまとまった。

批判されることが怖い…それが自分の意見を明確にできない理由

noteは意思表明ウェブコミュニティ(の側面も。*<編集のがっこう>意見)。だから、まずは「snails」に対してどういう立場であるかを3人が明確にすることに。

共感できる立場、共感できなかった立場、どっちでもない立場

この3つの視点で書くことになった。
ところが、「共感できないとは言ってない。snailsの話を聞いてもピンとこなかっただけ」とnote担当者の一人。よくよく聞くと、ここのところ活発に議論されるダイバーシティ(多様性)という世の中の流れに対して、LGBTQの話に共感できなかった自分は「悪」であり、批判されることが怖い。共感できなかったというスタンスではなく、自分の意見を書くのはとても難しいという結論にできないか、と及び腰。

それに対して「思わなかったのなら、なにが響かなかったのかで十分。『自分が響かなかった理由』というタイトルで書けばいい」のでは、という意見。

そもそもnoteとは、意見表明=言いたいことをいう場所であり、壮大なtwitter的存在。みんなに共感されるか、猛烈に嫌われるか、そのどっちかのリアクションが望むべきものであり、一番問題なのは、なんのリアクションもないこと。反対の意見があっていい。自分のエモいところを素直に書いて、読んでいる人に問いかけると言うのが正しいのでは? とWWD村上さん。

ボコボコにされてもさまざまな立場や意見を伝える=それこそ多様性ではないか。そこで賛否両論巻き起こることこそ、このプロジェクトを拡散させるという根本の取り組みの一助になるはず。

ただし、反対意見を述べるにしても、ただ闇雲に反対をするのと、理由があって反対の意見を持っているのとでは受け止める側の意識も違ってくる。自分のスタンスを表明し、なぜそう思ったのか、自分の考えをきっちりまとめて書くことが説得にも繋がるのだ。

自分の立ち位置を考え、意見を書く難しさを乗り越え完成した原稿

そこで3人が納得して書いた最初の原稿と校長の赤字が以下 ↓

スタンスははっきりしているものの、文章が長すぎるうえ、3人とも伝えたい「たったひとつの意思=ゴール」がまるで見えてこない。3人の頭の中を整理する補習が必要と、急遽、個別で補習を行うことに。話しながら整理したのが ↓

<共感する立場>
なぜ共感したか:snailsを通して気づいた自分のマイノリティな部分
ストーリー:自分のマイノリティと理解されない苦しさ→他の人の中にもあるマイノリティ→母の理解・社会の理解
ゴール:誰の中にもマイノリティな部分はあることが理解できると、もっと寛容な社会になる
この流れを編集のがっこうのステージ1の講義<Vol.3>で行った文章構造の型に当てはめて、Me→We→Nowで書き直すことに

<共感できない立場>
なぜ共感できないか:自分がLGBTQではない
ストーリー:プロジェクトには共感しないが、共感してもらう難しさは理解できる→安達さんの勇気に、自分も一歩踏み出す決意
ゴール:一人の同性愛者の勇気が、僕に踏み出す勇気をくれた
共感できなかった部分と共感した部分を書き分け、今回のsnailsが考えるきっかけとなって自分がチャレンジする行動の宣言の場とする

<どちらでもない立場>
なぜどっちでもないのか:LGBTQは特別な存在ではないから違和感がそもそもなかった
ストーリー:LGBTQが特別ではない感覚はどこから? →その感覚を育んでくれたファンキー母ちゃんの存在
ゴール:ちょい先を行く自分の感覚をもっと広めたい
これもステージ1の講義<Vol.3>で行った文章構造の別の型に当てはめて、結論→説明→ツッコミ→まとめで書く

という、ゴールの見つけ方の補習を行い、数度の校正のやりとりを経て完成にこぎつけた。その最終形が ↓



3人の文章は、何度も書き直したとはいえ、想いをぶつけるようなエモーショナルな内容にはそれほどなっていないし、共感しない立場と言いつつも結局は共感ポイントを見つけるというオチだし、ボコボコにされるような意見にも、賛否両論巻き起こるような文章にもなっていない。けれども、LGBTQをサポートするブランド「snails」を通して、自分の立ち位置と意見を必死で考え、書き切った。

生徒たちのそんなおっかなびっくりの気持ちは、WWD JAPAN.com編集長の村上さんが書いてくださった総評にもある通り。

けれど、そもそもLGBTQを支援するブランドができたからと言って、みんなが「ダイバーシティだよね」「賛成だよ」には決してならない。世の中の全員がそう思うなら、この問題はニュースのトピックスとしては取り上げられない。当たり前の世界じゃないからトピックスになるのだ。noteユーザーの人たちは、そこに意思があれば、生徒たちの文章がたとえもっと強い反対の意見であっても、きっと受け入れてくれたと思う。

世の中全員を味方にできる正解の文章なんて存在しない。

だからこそ、時にはボコボコにされる勇気をもってでも「伝えたい」というエモーショナルをもつことが編集者には不可欠だし、時には人と反対の意見でも声を上げる覚悟や意見を言える強さを身につける必要もあるんじゃないかな、という課題がnoteチームを通して浮き彫りになった。

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編集の基礎から、様々なゲストスピーカーによる情報発信のノウハウ、実践編まで、全12回×120分+補習や個別相談含め詰め込んだ<編集のがっこう第1期>は、この回で終わりになります。

<第2期>は、発想力コース / 情報加工力コース / プレゼン力コース / 発信力コースの4つに分かれ、よりパワーアップした講師陣を予定しています。

詳しくは以下に詳細が ↓

ゲストスピーカーや講師の話を聞いてインプットするだけではなく、アウトプットしてすぐに「使える力」にしていく編集のがっこう。次回は、メイン講師に各メディアの編集長や、プロフェッショナルな方々を前回以上に増やし、4コースに分け、よりきめ細やかな講義にしていきます。

またアウトプットでは、雑誌『CLASSY.』の写真を自由に使って、企画力でウェブを乗っ取ろう! プレゼン力を身につけ、会いたい人をトークイベントに呼ぼう……など、楽しい実践編も充実。

編集者にとってはもちろんのこと、クリエイターや別の職業の方々にとっても、今後必要になるスキルを身につけられると思います。

ご興味のある方、お待ちしています!

Photo: Getty Images



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編集のがっこう 校長

「編集のがっこう」校長 兼 Pomalo株式会社コンテンツスペシャリストの澄川恭子のnote。これからのコンテンツ時代に編集力を磨こう!をスローガンに、若い才能を発掘や育成、編集力の生かし方を日々考え続けています。
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