黒崎

コンサルティングファームに所属。組織・人事領域が専門(人材マネジメント / 人事制度 …

黒崎

コンサルティングファームに所属。組織・人事領域が専門(人材マネジメント / 人事制度 / 人材開発 / 人事デューデリジェンス)。Twitter:https://twitter.com/dfxa8g

最近の記事

ティール組織を夢見る前に知っておきたい組織設計の原理原則 ー『組織デザイン』を読んで

ティール組織とは「ティール組織」というキーワードが組織・人事領域において一時期大流行したことがあった。その流行の起点となった書籍『ティール組織 ―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』によれば、ティール組織は以下のような特徴を持っているとのこと。 つまるところ、上下関係、売上目標、予算といった既存組織・マネジメントの概念を排した自主性に基づく階層なきフラットな組織である。概念そのものについては非常に夢があると思う。巷でよく言われる「ネットワーク型組織」もこの概念に近い

    • 仕事における幸福の追求は、本当に幸福を生むのか ー『幸福学 (ハーバード・ビジネス・レビュー [EIシリーズ]』

      アメリカでは年収75,000ドル以上は経済力と幸福度が必ずしも比例しないという。 では幸福とはなにか、そして幸福感を得るためにはどうすればいいのか、それが気になって読んでみたのがこの本。 前半の章の中心になっている「地位的財産より非地位的財産が重要」という主張は、それ自体は巷で何度も聞かれている話である。こうした主張は心情的には同意できるが、一方で一般論というか「願望」を言っているだけでは、という疑問は晴れなかった。 自分としてももちろんカネより大事なものがある、幸福とは財

      • クリティカルシンキングとはユーモアセンス ークリティカル進化(シンカー)論を読んで

        著者によれば、ユーモアセンスというのはクリティカルシンキングによるノンクリティカルシンキングのウォッチングであり、著者が言う通り、本来的に「クリティカルシンカーはユーモラス」とのこと。 得えてしてクリティカル思考とは決して「斜に構える」と思われるが、実はそうでなく「斜めからも見ようとすること」だと思う。つまり人間性やスタンスなのではなく、より物事の本質をとらえようとする力である。 本書はこの「斜めから見る」とはどういうことなのか、を非常にわかりやすく解説してくれている。や

        • 衰退企業に共通する「ファクト」の軽視 ー『衰退の法則』を読んで

          昨年読んだ本の中ではぶっちぎりで面白い本だった。学術書ではあるが随所に示唆に富んだコラムが差し込まれとても読みやすい。 本書は元産業再生機構のメンバーとして数々の企業の再建に関わってきた著者の優良企業と低迷企業に対する知見を基にした学術研究を基に書かれている。 本書を要約すれば、古くからの日本企業には自走する厄介なサイレントキラーが潜んでおり、それは有事に牙をむき、一度走ると止めることは容易ではない、ということ。その一方で、優良と言われる企業においては、そうした性質を有しな

        ティール組織を夢見る前に知っておきたい組織設計の原理原則 ー『組織デザイン』を読んで

        • 仕事における幸福の追求は、本当に幸福を生むのか ー『幸福学 (ハーバード・ビジネス・レビュー [EIシリーズ]』

        • クリティカルシンキングとはユーモアセンス ークリティカル進化(シンカー)論を読んで

        • 衰退企業に共通する「ファクト」の軽視 ー『衰退の法則』を読んで

          ”スポーツチーム”の如き合理的会社組織 ー『NETFLIXの最強人事戦略』を読んで

          スポーツチームとはNETFLIXの会社組織を形容する言葉であるが、本書を読む限りとてもしっくりくる表現である。 例えばサッカーにおいてどんなに良いチームも翌年には何らかの新陳代謝を行い、逆にそれがないチームは同じメンバーでも衰退していく、それは企業の経営にも同じことではないかと思う。 本書では最近流行りの「(会社への)エンゲージメント」なんかクソくらえと言った感じで、著者は「業績とエンゲージメントは必ずしもイコールではない。エンゲージメントにせいにするな」、「「家族」を解雇

          ”スポーツチーム”の如き合理的会社組織 ー『NETFLIXの最強人事戦略』を読んで

          NewsPicks的なものへの違和感 ー『モチベーション革命』を読んで

          Newspicks関連の書籍は本書『モチベーション革命』および『THE TEAM 5つの法則』の2冊のみ読んだことがある。本書も含めNewspicksの本には多くの読者がいて、そして高評価が多くついている(本書はAmazonでは星4つ以上の評価である)。事実、自分の知人にもNewsPicksのサイト・書籍に対する熱狂的なファンがいる。一方で自分はこの2冊に対する評価が低い。彼らと自分の感想の違いはどこに起因しているのだろうか。 恐らくこの評価の違いの前提になっているのは、”

          NewsPicks的なものへの違和感 ー『モチベーション革命』を読んで

          組織・人事コンサルティングの難しさ ー『THE TEAM 5つの法則』を読んで

          NewsPicks Booksの書籍を読むのは『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』以来2冊目。二冊とも割と似たような内容の印象を持った。『モチベーション革命』は個人の能力開発、本書は組織の能力開発というテーマの違いはあれど、大学生や新入社員あたりの若者に向けて「会社と個人の関係を変えていく必要がある」と訴える意図は同じように思える。全体的に自己啓発的である。 さらに言えば、やたらと文字が大きく読み進めやすい点や、近年の出版にもかかわらずAmazonでの評

          組織・人事コンサルティングの難しさ ー『THE TEAM 5つの法則』を読んで

          人事部門の問題は、本当に人事部門が原因なのか

          ■人事部門改革の重要性が増す今日 近年、人事部門の進化の必要性が至る所で叫ばれている。従来的な各種制度の運用だけをやっていればよかった時代は終わり、より経営やビジネスの問題解決に資する人事部門のあり方が求められている。この状況を背景に巷で「戦略人事」や「人事部門改革」といったワードを見聞きすることもこの10年くらいで増えた。 自分は元々は大手メーカーの人事部門の一員として働き、その後現在はとあるコンサルティングファームにおいて組織・人事改革支援を行う立場にある。その双方の経

          人事部門の問題は、本当に人事部門が原因なのか