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現代アートを観るということ

現代アートというと「理解し難いもの」
という印象を持っている人は多いだろう。

深堀隆介展「五十五の金魚盆」より

今となってはスマホひとつで手軽に
撮影できる写真だが、その歴史は
19世紀に入ってからと意外にも浅い。
それまでの文化や歴史的なイベントを
知る術は絵や文字による記録に限られる。

イワン・クラムスコイ作「見知らぬ女」

つまり、写真のない時代の絵と、
現代の絵では描く意味が変わってくる。

写真のない時代の絵画の役割といえば、
凡ゆる事件や出来事、人々の暮らしぶりを
描き写した風俗画や、肖像画を含む人物画、
宗教画などをメインとしていた。

ヨハネス・フェルメール作「牛乳を注ぐ女」

しかし、写真が登場し、それが庶民にまで
普及したことにより絵画のもたらす意味
そのものが変革の時を迎えたのだ。

グスタフ・クリムト作
「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」


「記録」をする必要がなくなった絵画は、
新たな存在意義を求められることとなり、
世の作家たちが模索し始めたのが
「写真では表現できないこと」である。

ジュアン・ミロ 作「絵画(カタツムリ、女、花、星)」

メッセージ性の強い作品、新たな技法や
アイディアに注目が集まるようになっていく。


ピカソやブラックによって生み出された
「キュビズム」という概念は、まさに
「写真では表現できないこと」であり、
世界に絵画表現の在り方を根本から
考え直させる機会を与えたと言える。

ピカソ展(国立西洋美術館)


現代アートは定義付けが曖昧で、
一体どこからどこまでが現代アートの対象
なのかという見解は作家や評論家、
鑑賞者により様々だが、メッセージ性に
注目して鑑賞してみて欲しい。

作家自身の生い立ちやバックグラウンド、
社会に向けての問題提起、新たな概念の発信。
現代アートの中にはそんな
メッセージが多く込められている。

フィンセント・ファン・ゴッホ作「ひまわり」

それが提起された意味を考え、
解決の糸口を見つけることは
鑑賞者側に委ねられている。

美術や芸術を鑑賞することは、
「ものごとを幅広く多角的に捉える」
能力を育むことにつながる。

絵画鑑賞をする人々


SNSの発達や、新型コロナウイルスによる
自粛生活によって、人と人とのつながり、
コミニュケーションの在り方が変わり
相手の気持ちや立場を汲み取ったり
重んじたりすることが難しくなった。

名古屋駅周辺のビル群

言葉の選び方ひとつで人の人生をも
狂わせてしまう可能性のある現代社会。
そんな今だからこそ、自由で正解のない
現代アートに触れ、他者の存在や思考、
多様性について認め、柔軟な思想を
身に付けることが重要ではないだろうか。


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