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『36.5度の夜』にようこそ

11月24日 文学フリマ東京にて、私、満島エリオとちゃこさん共同主催によるエッセイ・小説合同誌『36.5度の夜』を頒布します。

書影

参加者は以下の通りです。

著者(五十音順・敬称略)
・いちとせしをり

・お茶

・げんちゃん

・ちゃこ

・つきの

・満島エリオ

イラストレーター
・雨野よわ


*『36.5度の夜』というタイトルは、「かつて熱を持っていたものへの、ものさびしい懐古」、そして「一人きりの夜に読むことで人の温度を感じられる本」という思いを込めてつけました。
著者の皆様には、「今はもう光らない/でも、さわりたかったよ/ないものねだりがしていたい」という三つのテーマから選択していただき、小説、エッセイを書いていただきました。

まだ作業中ですが、いい本ができています。
当日は私とちゃこさんがブースでお待ちしてます。
執筆者もかなりの方が来てくださる予定ですので、執筆者に会いたい!という方もぜひお越しいただけたらと思います。

これがどうか、あなたの「36.5度の夜」となりますよう。

*

告知は以上ですが、自分の話をさせてください。

そもそも文学フリマというのは、全国で開催されている文学作品展示即売会です。
https://bunfree.net/

そして、実は私は過去に3度、文学フリマに出店したことがあります。
初めて出店したのは大学4年の時。もう6年も前のことです。それから2年おきくらいに3度。すべて友達を誘って、同じように合同誌を作りました。

初めて出店した時は、大学4年の秋、就活も終わって単位も取り終わって、卒業までひまだなー、という時期のこと。
あれは、誰からやろうっていいだしたんだっけな。全員文学部系の大学の友達3人と組んで本を作ることになったんです。

一人の子が同人誌を作った経験があって、その子の経験に頼りながら手探りで作りました。
考えてみれば、知り合いに自分の小説を読んでもらうこと自体、あの時が初めてだったのかもしれない。
それまでもSNSとか、別のペンネームとか、ブログとかで文章自体はずっと書いていたけれど、それを友達などに大っぴらに言ったことはほとんどありませんでした。
何もかも初めてだったので、たいへんだったけど楽しかったです。
タイトルをつけるのも、表紙を作るのも、サークル名を決めるのも。
何より、一人で黙々と書いていた文章が誰かの目に触れること、そして本として形になるということが嬉しかった。
本はもちろん全然売れなかったけど、みんなと一緒に何かをすること自体が楽しかった。

参加できるだけでいい、本になるだけで満足。
そう思っちゃったんですね。

今振り返ってみれば、私ともう一人の子は体験入学みたいな気持ちだったと思います。知らなかった文化に触れてみたかっただけだった。そういう、「ちょっとやってみた」という空気があって、だから、タイトルも表紙も「もっとこだわりたい」とか言えなかったし、「これくらいなら及第点でしょ」って、何を決めるにもどっかにそういう気持ちがあった。
今ならわかる。たった一人、過去に本を作った経験のある、あの子だけが本気だった。
あの子だけが本気のものを作ろうとしてたのに、私たちはそこに追いつけなかった。
それが1回目の思い出。

その後2度、今度は自分から友人を誘って、同じように合同誌を作りました。
2回目は3人、3回目は2人。それぞれ違うメンバー。私が仲が良くて声がかけやすい人たち。
日常的に創作をしているわけじゃなくて、でもものづくりにはちょっと関心があって、文学フリマへの参加経験のない人たち。
「ちょっと体験してみたい」人たち。
その二回の時の私は、1回目の「あの子」の立場でした。
本気でやりたかった。こだわりの1冊が作りたかった。でも、自分が一所懸命になればなるほど、他のメンバーとの温度差が浮き彫りになるのがわかった。

みんなが悪かったわけじゃない。
みんな「何か作りたい」という根本的な気持ちを持っていたからこそ誘いに乗ってくれたんです。だから私がもっと熱意を伝えれば、伝わるものがあったはずなんです。
でも私はそれをしなかった。温度差を感じて引かれるのが嫌だったし、たぶんどっかで「伝わるはずがない」と思っていた。自分から誘ったくせに。
やればやるほど空回って、「つきあってもらってる」という感覚をずっと拭えないまま本を作りました。
今私の手元に残っている売れ残りの3冊には全部、そんなざらついた記憶がある。

*

ざらついた記憶を持ったまま、でもまた本を作りたいなとはずっと思っていました。
でも同じ温度感で本を作ってくれる人が見つかる気がしなくて、やりたい気持ちだけがずっとくすぶっていました。

『36.5度の夜』は、私がちゃこさんに持ちかけて立ち上げた企画です。
ちゃこさんの筆力の高さはもちろんですが、知り合った初期にリアルでお会いして仲良くしてもらっていて人となりも知っていて、それで「この人なら大丈夫」って思って、それで声をかけました。
そしたら、私の期待していた以上の熱量で答えてくれて、やりたいことをどんどん提案してくれて。

あ、この人、私が本気でやりたいって言ったらちゃんと応えてくれるんだ。っていうか下手したら私の熱意が負ける。と思いました。

コンセプトとか、タイトルとかテーマとか、ちゃこさんとずーっとLINEでやりとりしながら考えて。
案を出し合って意見を言い合って、私一人で考えつかなかったものにどんどんなっていって。
この人に書いてほしい!と思う人を探して。

そうして集まったのが、今回の参加者です。
今、私の手元にはみなさんの原稿がほとんどそろっています。読めばわかる、全員すごく悩んで、プライドをかけて書いてくれました。
私が「表紙は絶対この人に頼みたい!」と最初から勝手に決めていた雨野よわさんもすごい速度ですごく素敵な表紙を上げてくれました。

ああ、ここにいたのか、と思いました。
同じ熱量でものを作ってくれる人、ここにちゃんといたのかと。

*

昨日の夜、この告知分を書くにあたって改めて、「そもそもなんで合同誌作りたかったんだっけ」って考えてました。
正直言って、自分の書いたものが「本」になること自体にそこまでこだわりはありません。
めちゃめちゃ売りたいとか、文学フリマに参加するってことにも。
いろんなものを取っ払ってみたとき、残るのは「あの時できなかったことをちゃんとやりきりたい」っていうことでした。要するに、私のわがままです。
そんな私の個人的なわがままを叶えるために、めちゃめちゃ豪華なメンバーに、めちゃめちゃ豪華な作品を提供してもらいました。

今、私はすごく強い手ごたえを感じています。
ずっと作りたかった「本気の本」になっていっていると感じています。

まだまだ作業がいっぱい残っているし、これからトラブルで本ができない可能性も全然あるんですけど。笑
でも、無事完成すれば、間違いなくいい本になります。
いい本にしますと、参加者してくれたみなさんと約束しました。

私のわがままと思いつきから始まった企画ですが、これだけの熱意を受け取ったこの本は、もはや私一人のわがままではない。
本にならないかもとかいう弱音とか、売れなくてもいいなんて予防線張るのも止めます。

何度でも言います。
本気で作っています。
いい本になります。
ぜひ読んでほしい。

『36.5度の夜』が、より多くの方のお手元に届くことを願っています。

*

『36.5度の夜』概要

11/24 文学フリマ東京【ト-19】サークル「好きにさせろよ」にて頒布
主催:満島エリオ・ちゃこ
内容:小説・エッセイ
執筆:いちとせしをり/お茶/げんちゃん/ちゃこ/つきの/満島エリオ(五十音順)
イラスト:雨野よわ

ページ数:60P
価格:700円

#文学フリマ #告知 #同人誌 #コラム #エッセイ


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