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【映画感想】ミッドナイト・スカイ

Netflixのオリジナル作品でジョージ・クルーニー監督の終末モノSF。滅亡し掛けた地球から移住する人類。余命わずかな科学者が地球に残り宇宙探査を終えて帰還しようとする宇宙船に地球の終わりを伝えようとする話。宇宙を舞台に孤独を描くのは『ゼロ・グラビティ』に、家族の絆的なところは『インターステラー』に近いですが、そのどっちともより登場人物との距離が遠い。この距離感が僕は好きでした。(ほんとは劇場で観た方がより良さげな作品ですが、)Netflixにて視聴、『ミッドナイト・スカイ』の感想です。

あまり評判がよろしくないらしいんですが、ちょっとそれが信じられないくらい僕は良かったんですよね(ジョージ・クルーニー、味のある映画撮るなという感じ。)。いくつか感想見たら、ダメだった人のポイントの多くは、僕にとってはどうでも良いところだったんです。例えば、「地球が滅亡し掛けている原因や理由が語られてない。」そこ、「ああ、そう言われりゃそうか。」ってくらい僕にはどうでも良くて。とにかく圧倒的な何かの"終わり"が描かれている。人智ではどうすることも出来ない"圧倒的な終わり"。そこが重要で原因や理由に関してはどうでもいいというか(だって、もう終わるんですから。)。僕が見たいのは"圧倒的な終わり"を目前にした人がどういう行動をするのかってことで。それが、こういう時世だからなのか、そもそもの僕の死生観にあっていたからなのか、今まで観たどの映画よりもしっくり来たんですよね。

終末を描いた映画、例えば、ラース・フォン・トリアーの『メランコリア』は、鬱病の主人公の病状の変化と軌道を外れた惑星が地球に衝突する過程を並列に描いた映画で、惑星が地球に近づけば近づくほど鬱病の症状が改善していくって話でした。先にもあげたクリストファー・ノーランの『インターステラー』は、異常気象によって起こる人類滅亡の危機を宇宙における時間の謎を使って回避するって話でした。"終わり"を積極的に受け入れる話となんとかして回避する話。そりゃ、"終わり"を描くとなったらそのどちらかになると思うんですけど、この『ミッドナイト・スカイ』はそのどちらでもないんです。絶対的だと思ってたものが"終わる"という局面に人は何を考えどう行動するのか。その態度というか思考というか。もの凄く巨大な喪失を描くのに、その時に人は何に注力するのかというとてもミニマムなところに視点があっていて、そのテーマの切り取り方に興奮したんです(地球の終わりというのが絶対的なのが良かったんですよね。そこに抗う余地がないというか。地球滅亡というのが大前提としてあって、自分たちはこの事態に対して何も出来ない存在なんだと認識した人たち。つまり、一度絶望した人たちが次に何を選択するのかというのがとても興味深かったんです。そして、そういう何か"とてつもないものの終わり"ということが単なるSFの要素としてではなく"ぜんぜん起こりうる未来"として見れたのは、正しく今がそういう状況だからで。その中で登場人物たちの行動や態度に共感出来たのは、それが自分がこの状況の中で感じていたことにとても近かったからなんじゃないのかなと思うんです。)。

しかも、個人的には、した行動に対して結果がどうなったかとか、なぜその行動をしたのかというのもどうでも良くて。あの、主人公はジョージ・クルーニーが演じるオーガスティンという科学者で、余命わずかながら、ひとり地球に残って帰還途中の宇宙船に戻れないことを伝えようとするんですが、他の住人が地球を離れた後に、少女がひとり取り残されているというのを知るんです。でも、もうどうすることも出来ないわけです。だからといって放っておくわけにもいかないので食事の世話をしたり一緒にいてあげたりするんですが、そうすることで、それがいつの間にかオーガスティン自身の希望になってるんですね。どうせ、ここにいたら先はないのにその少女を守ろうとするんです。この映画における愛とか希望の描き方ってこれなんです(この感じが非常にしっくり来たんですよね。人類の為に主人公が頑張るわけでも、どうすることも出来ないということを嘆くわけでもなくて、ただ、与えられた選択肢の中で個人にとってベストだと思うことを選んでいく。そのそれぞれの選択ということが希望になるんです。)。つまり、残された選択肢の中から何をどう選ぼうと人は生きてるうちはそこに希望を見出してしまうって描き方なんです。それが、これまでのSF映画に出て来た様なエピソードをなぞることでより浮き彫りになってるんだと思うんです(SF映画によくあるエピソードを繰り返してるだけという意見もありましたが、僕はそう感じました。同じ様なエピソードを経ても物語に直接的な影響はないというか。なぜなら、この映画で重要なのは"終わり"を受け入れるということで、全てが"終わる"というのを前提としてどう生きるかを選ぶ物語なので。)。

で、そういうのを特に説明なしにやるし、宇宙や北極の景色は美しいし、宇宙船や中継基地のデザインもクールだし、地球に置きざりにされた少女のアイリスはかわいいしなので(このアイリスとオーガスティンのエピソードは童話的でもありました。)、ちょっと詩的な表現の映画だと思われるかもしれませんが、詩的という程抽象的じゃないんです。それが個人的にラストカットに表れてると思っていて。ある意味希望のあるラストなんですけど(しつこい様ですが、それでも"終わり"ということからは逃れられないのがこの映画なんですが。)、その未来への始まりを淡々とクールに何事もなかったかの様にやるんです(しかも、固定のワンカットで、映ってるふたりがひとりづつ捌けて行くっていう感じもいいんですよね。)。まるで生きるということを俯瞰で見てる様な。そういう哲学的な映画なんだと思います。

https://www.netflix.com/jp/title/80244645



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