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原英史著(2021)『総務省解体論』ビジネス社

総務省改革が必要不可欠と感じさせる良書

Amazonで購入したものの、しばらく本棚に眠っていて、やっと読んだ本になります。実のところわたしが地方自治体に転職し、昨年上司として丁度総務省から出向で来た人が、意思決定をほとんどしないということもあって、わたしの案件だけでも承認待ち状態で1月以上寝かされている案件含め複数案件が塩漬け状態だったのと、他にも塩漬け状態の案件多数あり、自治体の幹部も中央省庁出向者には何も言えないという不思議… おまけに事務担当の課長が不正を働くも、それをスルーする始末で、あまりに馬鹿らしくなってこの自治体を辞めました。そんなことがあったので、読んでみようと手に取った次第。

その辺の国と自治体を行き来する総務省官僚のキャリアパス等もp.146に地方自治、そして地方分権が失敗した経緯とともに触れられていた。

中央集権的な運営も色濃く残る省庁の1つであり、統合前の3省庁が未だにバラバラな動きをしている歴史的な軽逸も、本書には詳しく記載されている。

既にテレビ関係も衰退産業化しているが、本来はその既得権として保持されている周波数帯を携帯電話等に割り振れば、今頃安く利便性の高い料金体系でサービスを受けることができるはずなのに、その発展を阻害しているのも、もともとは総務省ということが本書を読んで感じた次第。

個人的にはわたしも電子通信関係の組織に在職していた事があるが、もはや昨今の通信は衛星を使おうと地上のマイクロ波を使おうと、ネット通信を使おうと、その信号はほぼIP通信になっている。にも関わらず通信関係や規程、ルール含めて総務省、経産省、そして昨今はデジタル庁と、これまたバラバラであるし、民間の規程などは経産省のものをベースしていたり、自治体関係は総務省のものをベースにして、さらに昨今のクラウド関係はデジタル庁のものを含め、足並みを前後したものが各々提供される感じで、またも複雑怪奇になってきている… それらを統一するだけでも本当は国の責任と感じるけれど、きっと水面下で不毛な駆け引きが繰り広げられているのは想像に固くない。

郵便局関連やNTT、NHK等と様々に関連するだけに、本書を通じて政治家や省庁の思惑、これらの組織の動きなどが理解でき、本当に国民のためにある省庁なのかと疑問に思うこと多数。電波行政を利用して間接的にマスコミに圧力を加えられる部分もあり、こういう機能は早いところ分離する必要がある。近い将来、やはり日本版FCCをつくって、そちらに電波関係の意思決定を持っていった方が無難かも知れない。

今の日本の停滞も、この省の考え方というか方向性の選択ミスの部分が色濃く反映していると本書を読んで理解した。現実を理解するには一読しておいた方がよい良書であった。

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