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追いかけてシドニー③
窓から木漏れ日が差し込み、南半球の鳥たちがとぎれとぎれにさえずる。早く起きすぎた私はひとまずトムの両親に挨拶しようと階下へ降りた。広く整ったキッチンには、細部まで見事な模様が彫られたテーブルと椅子がどっしりと待ち構えている。居間の北側にはバルコニーがあり、入り組んだ海岸線にせき止められて海は朝の光をチラチラと反射する。
「グッモーニン」と居間のふたりに声をかける。トム父もトム母も笑顔で「よく来た
追いかけてシドニー②
足止めくらって南大阪。
1日おくれの飛行機は本日(4月24日)午後4時出発予定。これでシドニーには2泊しかできないことになった。あんなに広い大地にたったふた晩。すべては野外ライブのため。イアン・ギラン。ギャング・オブ・フォー。ホテルでよく眠った朝、感情が麻痺状態から回復し、なんでも楽しんでやろうという気分が芽生えてくる。二色浜から泉佐野で途中下車、商店街の薄汚れた居酒屋で海鮮丼ランチ680円をいた
追いかけてシドニー①
二歳の誕生日プレゼントは、乗り物、恐竜、虫の絵本にした。「かお!」とは私の名を呼んでくれているのだった。三冊の中で彼がもっとも気に入ったのは乗り物の絵本だった。電車や飛行機の絵にめくりがたくさんあって、そこを開くと中の様子が見えるようになっている。はしゃいだ子どもと大人たちは結局深夜まで布団に入らなかった。
深酒の朝、働かない頭で準備し友人家族の家を出て関空に向かった。まるでとなり町にでも出かけ
Åland、岩盤、夜は長く
束の間、砂の国から離れてスウェーデンへ。
整然とした空港で秩序が際立つ。鳴らないアザーン。手すりや椅子、テーブルなどどこに触れても砂や汚れがつかない。濃い顔の男、ヒジャブを巻いた女などはよくよく探さなければ見当たらない。白い肌で金髪の男女が視界の多数を占める。売店の支払いは電子マネーやカードが基本で、現金はこの旅行中ついに一度も見かけなかった。
「エジプトにいるあいだにこっちに遊びにおいでよ」と
瀬戸内ハードコア自転車行③
9月11日(土)
雨上がりの路上、午前7時高松。本日は曇りのようで自転車旅には最適。
ではあるが、そろそろ尻の皮が剥がれそうなほど痛い。全身の筋肉も悲鳴を上げている。
当初は松山市まで足を延ばして風流な温泉街で浴衣美人でも眺めようかと企んでいたが、高松―松山間は150キロもあり、さらに桜三里と呼ばれる峠を越えなければならない。しまなみ海道にも遠くなってしまう。よって今日はあまり無理をせず、高
瀬戸内ハードコア自転車行①
9月9日(木)
急速炊飯で炊いた新潟米に友人からもらったシジミの佃煮を投入、サランラップで念入りに丸める。これからは、嫌でも外食しかできない日々がまたはじまる。瀬戸内海一周、海上以外全行程自転車のストロングスタイルな旅。自炊生活の最後の悪あがきのような巨大な握り飯だった。空気入れ、パンク修理キット、タオル、着替え、日焼け止め、文庫本などをリュックに突っ込み、愛車・フジ子のチェーンに油をさす。君